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第二章 ちょっと怖いけどがんばってみる!
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「モデルだって」
「確かにみんな、かわいらしいわよね」
「でも、この子たち、モデルとして写真に残っちゃってるんでしょ? 自分の髪が短くなっているの、どう思っているのかな」
「ああ、髪を切られた子たちはみんな、長かった時の写真を見た時に時間の感覚が狂うようにしてあるの」
「どういうこと?」
「その写真が、もうずっとずっと前のことだ、って錯覚するような暗示をかけてあるのよ。自分の長い髪を見ても、あの頃は長かったなあ、って思うようにね」
「へー、そんなこともできるんだ」
天使の力って、なんか私の思っていたのと違うなあ。かといって、どういう力と思ってたのかって言われても困るけど。
「ねえ、だったら、次に狙われそうな子をもっと絞り込むことができるんじゃない?」
私の言葉に、萌ちゃんは何かを考え込むように、じ、と手元の紙を見た。
「そうね。さっき莉子ちゃんが言っていた本でモデルをやったことのあるこの学校の女子って、他に誰がいるのかしら」
「うーん、よく話は聞くけど、私はあんまり気にしたことないから覚えてないや」
「そう」
萌ちゃんはがっかりしたようにうつむいてしまった。
は! いけない! 萌ちゃんのお手伝いをするって決めたじゃない!
私はあわてて言った。
「あの、学校には『やつきガーデン』って置いてないから、帰ったら一緒に市立図書室にいかない? ママに聞いてみれば借りれるかも」
私のママは、市の図書館で司書をしている。
萌ちゃんは、顔をあげて微笑んだ。
「そうね。できれば見てみたいわ。学校名って載っているのかしら?」
「うん。前見た時は載って……」
話しているうちに、思い出した。
「そういえば、確か六年生に一人、プロのモデルやってる子がいるよ」
「プロの?」
「うん。『やつきガーデン』に載ったかどうかは知らないけど、子供のころからどこかの事務所に所属している本物のモデルさん」
たしか、楓ちゃんがその人と同じクラスだったな。
私は、少し考えてから、立ち上がった。
「美優ちゃん?」
「うちの委員会の委員長が、その子と同じクラスなんだ。私の幼なじみなの。そのモデルさんも『やつきガーデン』に載ったことあるかどうか、教えてもらってくる」
「じゃあ、私も一緒にいくわ」
萌ちゃんが紙をまとめて立ち上がると。
「萌―! ちょっと来て―!」
カウンターから莉子ちゃんが呼んだ。萌ちゃんは、カウンターに顔を向ける。
「ごめんなさい、美優ちゃん。ちょっと待っててくれる?」
言われて、私は壁の時計を見た。もうすぐ昼休みが終わる時間だ。
一瞬迷って、私は言った。
「えと、私一人でいってくる」
「え?」
「ちょっと聞いて来るだけなら、私一人でも大丈夫だよ。萌ちゃんは、莉子ちゃんと先に教室に戻ってて」
「そう? でも、万が一私の力が必要になったら……」
それを聞いて、私のやる気がむくむくと湧いて来る。
なるべく萌ちゃんに力を使わせないようにしなきゃ。
「大丈夫大丈夫! 人もいっぱいいるし、怖いことないよ」
それは半分、自分に言い聞かせる言葉だった。
昼間だし明るいし人もいっぱいいるし! 怖いことない!
「本当に大丈夫?」
「うん! じゃ、後でね!」
私は勢いよく言うと、急いで図書館を出た。
また天使の力を使って、萌ちゃんが倒れてしまったら大変だもん。
がんばって、萌ちゃんのお手伝いをするんだ!
☆
図書室を出た私は、階段をのぼって、六年生の教室を目指した。
最近寒いせいか、お昼休みも教室に残っている生徒が多い。男子はそれでも校庭に出てサッカーをしていたりするけれど、女子はたいてい、みんなで輪になってあみものをしていたりおしゃべりをしていたりする。
「確かにみんな、かわいらしいわよね」
「でも、この子たち、モデルとして写真に残っちゃってるんでしょ? 自分の髪が短くなっているの、どう思っているのかな」
「ああ、髪を切られた子たちはみんな、長かった時の写真を見た時に時間の感覚が狂うようにしてあるの」
「どういうこと?」
「その写真が、もうずっとずっと前のことだ、って錯覚するような暗示をかけてあるのよ。自分の長い髪を見ても、あの頃は長かったなあ、って思うようにね」
「へー、そんなこともできるんだ」
天使の力って、なんか私の思っていたのと違うなあ。かといって、どういう力と思ってたのかって言われても困るけど。
「ねえ、だったら、次に狙われそうな子をもっと絞り込むことができるんじゃない?」
私の言葉に、萌ちゃんは何かを考え込むように、じ、と手元の紙を見た。
「そうね。さっき莉子ちゃんが言っていた本でモデルをやったことのあるこの学校の女子って、他に誰がいるのかしら」
「うーん、よく話は聞くけど、私はあんまり気にしたことないから覚えてないや」
「そう」
萌ちゃんはがっかりしたようにうつむいてしまった。
は! いけない! 萌ちゃんのお手伝いをするって決めたじゃない!
私はあわてて言った。
「あの、学校には『やつきガーデン』って置いてないから、帰ったら一緒に市立図書室にいかない? ママに聞いてみれば借りれるかも」
私のママは、市の図書館で司書をしている。
萌ちゃんは、顔をあげて微笑んだ。
「そうね。できれば見てみたいわ。学校名って載っているのかしら?」
「うん。前見た時は載って……」
話しているうちに、思い出した。
「そういえば、確か六年生に一人、プロのモデルやってる子がいるよ」
「プロの?」
「うん。『やつきガーデン』に載ったかどうかは知らないけど、子供のころからどこかの事務所に所属している本物のモデルさん」
たしか、楓ちゃんがその人と同じクラスだったな。
私は、少し考えてから、立ち上がった。
「美優ちゃん?」
「うちの委員会の委員長が、その子と同じクラスなんだ。私の幼なじみなの。そのモデルさんも『やつきガーデン』に載ったことあるかどうか、教えてもらってくる」
「じゃあ、私も一緒にいくわ」
萌ちゃんが紙をまとめて立ち上がると。
「萌―! ちょっと来て―!」
カウンターから莉子ちゃんが呼んだ。萌ちゃんは、カウンターに顔を向ける。
「ごめんなさい、美優ちゃん。ちょっと待っててくれる?」
言われて、私は壁の時計を見た。もうすぐ昼休みが終わる時間だ。
一瞬迷って、私は言った。
「えと、私一人でいってくる」
「え?」
「ちょっと聞いて来るだけなら、私一人でも大丈夫だよ。萌ちゃんは、莉子ちゃんと先に教室に戻ってて」
「そう? でも、万が一私の力が必要になったら……」
それを聞いて、私のやる気がむくむくと湧いて来る。
なるべく萌ちゃんに力を使わせないようにしなきゃ。
「大丈夫大丈夫! 人もいっぱいいるし、怖いことないよ」
それは半分、自分に言い聞かせる言葉だった。
昼間だし明るいし人もいっぱいいるし! 怖いことない!
「本当に大丈夫?」
「うん! じゃ、後でね!」
私は勢いよく言うと、急いで図書館を出た。
また天使の力を使って、萌ちゃんが倒れてしまったら大変だもん。
がんばって、萌ちゃんのお手伝いをするんだ!
☆
図書室を出た私は、階段をのぼって、六年生の教室を目指した。
最近寒いせいか、お昼休みも教室に残っている生徒が多い。男子はそれでも校庭に出てサッカーをしていたりするけれど、女子はたいてい、みんなで輪になってあみものをしていたりおしゃべりをしていたりする。
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