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第五章 聞いてない!って言いたいのに
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「あの、本当に、ごめんね。お願いします」
「まあ、だいたいまとめといたからいいけど……今度はもっと早く持ってきてよ」
それから、同じく五年生の班長、関根さんを廊下で見つけた。プリントを渡して説明すると、やっぱり牧田さんと同じように不機嫌になってしまった。平謝りして、なんとかお願いする。
あとは、六年生だ。はあ。やだな。また怒られるんだろうな。
「すみません、日比野さんいますか?」
六年四組の教室をのぞくと、女子が二人いただけだった。
「日比野? もう帰ったよ」
遅かった……
日比野さんがいないことで、怒られなくていいと、ちょっと、ほっとした。でもすぐに思いなおす。
ううん、だめだ。それじゃ、日比野さんに迷惑をかけちゃう。
少し息を切らしている様子の私に、その女子が首を傾げた。
「何か用だったの?」
「はい。明日の委員会の資料を渡したかったんです」
机の上に置いとこうかな。でも、当日の資料を何の説明もなく机の上に置いとかれたら、いい気分はしないよね。できれば直接渡したいから、仕方ない、明日の朝にでも……
「あ、あそこ、日比野じゃない?」
もう一人の女子が、窓の外を見ながら言った。
「ほら、校庭のとこ」
「ありがとうございました!」
私はあわてて教室を飛び出す。階段を駆け下りて昇降口へ向かうと、校庭のむこうに日比野さんを探した。
「日比野さああああん!」
今まさに校門をでようとした日比野さんに声をかけると、一緒にいた数人の男子も振り向いた。
う、怖い。
「相葉さん?」
驚いたような日比野さんの前で息を整える。
「あのっ……これ……明日の……資料……」
ぜいぜい言いながら持っていたプリントを渡す。それを受け取った日比野さんは、ざっと目を通した。
「ああ、これな。連絡こないから、どうしたのかと思ってた。でも、なんでこれ、相葉さんが持ってくんの? 確か、谷本がやるって言ってなかった?」
「そうなんですけど、彼女、今日は早く帰らなきゃならないみたいで、さっき預かって……」
「委員会って、明日の?」
一緒にいた男子のうちの一人がそのプリントをのぞきこむ。あ!
「勝屋さん! これ、勝屋さんの分です」
よかったあ。二人、ちゃんと渡せたあ。これで渡さなければいけない資料は全部だ。
私から受け取ったプリントを見た勝屋さんは、前の二人と同じように不機嫌な顔になる。
「来年度への要望をまとめとけってやつだよな。今日もらって、明日出さなきゃダメなの?」
言いながら、勝屋さんの背中にぐわっと黒いもやが立ち上がってきた。
うわあ、すごい怒っている。
「は、はい。明日の議題として載っているので……」
うつむいてしまった私を、勝屋さんは、む、とした顔で私を見下ろした。
「これさ、各班長に連絡します、って言うからこっちは待ってたんだよ。なのになんの連絡もないから、てっきりその次になったのかと思ってた。なんでこんなぎりぎりで持ってくんの? 俺ら、これからこの項目まとめなきゃならないんだよ?」
「すみません……」
「相葉さんに言ったってしょうがないだろ、周」
私がうつむいて話を聞いていると、日比野さんが勝屋さんをやんわりと止めた。
「おおかた、ぐずぐずしてた谷本が、そうやって文句言われんのが嫌で相葉さんに押し付けたんだろ。相葉さん、また同じようなことがあったら、はっきり嫌だって断っていいからね」
てっきり日比野さんにも怒られると思ってたから、気づかうような言葉を聞いて私は日比野さんを見上げた。勝屋さんも、驚いたように日比野さんを見返す。
「まあ、だいたいまとめといたからいいけど……今度はもっと早く持ってきてよ」
それから、同じく五年生の班長、関根さんを廊下で見つけた。プリントを渡して説明すると、やっぱり牧田さんと同じように不機嫌になってしまった。平謝りして、なんとかお願いする。
あとは、六年生だ。はあ。やだな。また怒られるんだろうな。
「すみません、日比野さんいますか?」
六年四組の教室をのぞくと、女子が二人いただけだった。
「日比野? もう帰ったよ」
遅かった……
日比野さんがいないことで、怒られなくていいと、ちょっと、ほっとした。でもすぐに思いなおす。
ううん、だめだ。それじゃ、日比野さんに迷惑をかけちゃう。
少し息を切らしている様子の私に、その女子が首を傾げた。
「何か用だったの?」
「はい。明日の委員会の資料を渡したかったんです」
机の上に置いとこうかな。でも、当日の資料を何の説明もなく机の上に置いとかれたら、いい気分はしないよね。できれば直接渡したいから、仕方ない、明日の朝にでも……
「あ、あそこ、日比野じゃない?」
もう一人の女子が、窓の外を見ながら言った。
「ほら、校庭のとこ」
「ありがとうございました!」
私はあわてて教室を飛び出す。階段を駆け下りて昇降口へ向かうと、校庭のむこうに日比野さんを探した。
「日比野さああああん!」
今まさに校門をでようとした日比野さんに声をかけると、一緒にいた数人の男子も振り向いた。
う、怖い。
「相葉さん?」
驚いたような日比野さんの前で息を整える。
「あのっ……これ……明日の……資料……」
ぜいぜい言いながら持っていたプリントを渡す。それを受け取った日比野さんは、ざっと目を通した。
「ああ、これな。連絡こないから、どうしたのかと思ってた。でも、なんでこれ、相葉さんが持ってくんの? 確か、谷本がやるって言ってなかった?」
「そうなんですけど、彼女、今日は早く帰らなきゃならないみたいで、さっき預かって……」
「委員会って、明日の?」
一緒にいた男子のうちの一人がそのプリントをのぞきこむ。あ!
「勝屋さん! これ、勝屋さんの分です」
よかったあ。二人、ちゃんと渡せたあ。これで渡さなければいけない資料は全部だ。
私から受け取ったプリントを見た勝屋さんは、前の二人と同じように不機嫌な顔になる。
「来年度への要望をまとめとけってやつだよな。今日もらって、明日出さなきゃダメなの?」
言いながら、勝屋さんの背中にぐわっと黒いもやが立ち上がってきた。
うわあ、すごい怒っている。
「は、はい。明日の議題として載っているので……」
うつむいてしまった私を、勝屋さんは、む、とした顔で私を見下ろした。
「これさ、各班長に連絡します、って言うからこっちは待ってたんだよ。なのになんの連絡もないから、てっきりその次になったのかと思ってた。なんでこんなぎりぎりで持ってくんの? 俺ら、これからこの項目まとめなきゃならないんだよ?」
「すみません……」
「相葉さんに言ったってしょうがないだろ、周」
私がうつむいて話を聞いていると、日比野さんが勝屋さんをやんわりと止めた。
「おおかた、ぐずぐずしてた谷本が、そうやって文句言われんのが嫌で相葉さんに押し付けたんだろ。相葉さん、また同じようなことがあったら、はっきり嫌だって断っていいからね」
てっきり日比野さんにも怒られると思ってたから、気づかうような言葉を聞いて私は日比野さんを見上げた。勝屋さんも、驚いたように日比野さんを見返す。
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