はんぶんこ天使

いずみ

文字の大きさ
上 下
41 / 67
第五章 聞いてない!って言いたいのに

- 6 -

しおりを挟む
「……では、各班長はそれぞれの意見をお願いします。えーと、まずは記録班から」
「はい」
 楓ちゃんが言うと、まずは関根さんが立ち上がった。

「記録班では、これまで日誌のかたちで残していた花壇などの記録を、来年からはデータ保存も加えていくことを提案します。写真などのデータもプリントせずに必要な物だけそのまま……」
 その後に、道具班、広報班、会報班と続いて、問題なく議題は終了した。
 無事終わってよかったあ。昨日、走ったかいがあったよ。うんうん。
 私は、ほ、と胸をなでおろす。

 一応前回の委員会では各班長にまとめるように話は出ていたから、昨日渡したプリントもちゃんと内容がまとまっている。でも、悪いことしちゃったことにはかわりないもの。今度は気をつけよう。確認大事。

「次に、学級で使用する花壇について話し合います。先月全校からとったアンケートの結果ですが、このようになりました」
 楓ちゃんに言われて、私は用意していたプリントを配るために立ち上がろうとした。ちゃんと朝、先生に見せてオッケーもらったやつだ。

「あ、私がやるから美優ちゃんはいいよ」
 すると、急に隣に座っていた瑠奈ちゃんが小さな声で言って、私の手からプリントを持ち上げる。
「え、でも……」
「いいっていいって。昨日はまかせちゃったからこれくらい」
「そう……?」

 戸惑いながらも、私はまた席に座った。瑠奈ちゃんは、手にしたプリントをみんなに配り始める。

「アンケートの結果でーす。はい、どうぞ」
 私も手元のプリントを眺める。夕べ遅くまでかかっちゃったけど、間にあって良かった。
 にこにことそれを眺めていると、向こうの方から瑠奈ちゃんたちが話しているのが聞こえた。

「谷本さん、大変だったねー。よくまとめてあるじゃない」
「手伝わなくてごめんねー」
 それは、四組の委員の人だった。
 そっか。前回瑠奈ちゃんがこれをやるって委員会で話がでたから、みんな瑠奈ちゃんがやったと思ってるんだ。

「数が多かったから大変だったよー。でも、委員会に必要なものだもんね。副委員長の仕事だし」

 え? 

 瑠奈ちゃんは四組の人の言葉を否定することなく、次の人へとプリントを渡してる。
 その言い方じゃまるでこれ、瑠奈ちゃんが作ったみたいだよ。
 みんなにお疲れ、と言われて、瑠奈ちゃんは同じような会話を繰り返している。
 でも……これ、やったのは……

 今頃きっと、私の背中にもあの黒いもやがにょきにょきと伸びている気がする。
「最後に、中尾先生、お願いします」
 すべての議題が終わって、中尾先生が立ち上がる。

「年が明けたらすぐ、児童会長選挙が始まるな。それにあわせて委員会の方も引継ぎを……」
 先生の声が遠くで聞こえる。

 きっとみんな、あのアンケートは瑠奈ちゃんがやったことだと思っているだろうな。
 でも、やってないくせに、なんてここで声を上げるのも変だし……
 がんばったのに。颯太だって、遅くまで手伝ってくれたのに。

「次の委員への引継ぎの資料も用意しておけよ。今回のようにぎりぎりで資料の提出をすることのないよう、次回は気をつけるように」
 じろり、と確かに中尾先生は私の方を見て言った。その目が怖くて、思わず肩をすくめる。
しおりを挟む

処理中です...