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第五章 聞いてない!って言いたいのに
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「はあい、わかりました。ね、美優ちゃん」
そんな私のとなりで、瑠奈ちゃんが笑いながら言った。私は、こくり、と頷くことしかできなかった。
どうしよう。泣きそう。
「これで委員会を終わります。でもその前に」
楓ちゃんが、ノートを閉じながら言った。
「みなさんのお手元にある全校からのアンケート集計ですが、これは昨日、副委員長の相葉さんが一人でまとめてくれたものです」
私は、勢いよく顔をあげて楓ちゃんを見た。委員のみんなも、驚いた顔になっている。
同じように驚いた顔になった瑠奈ちゃんをまっすぐに見ながら、楓ちゃんが続けた。
「前回の委員会で、副委員長の二人に、各班長への資料の配布とこのアンケートの集計をお願いしましたね。その時、谷本さんが一人でやりますと言ってくださったので、お願いしました。ですがどちらも、昨日まで全く手が付けられていなかったようです。それを、相葉さんががんばって今日の委員会に間に合わせてくれました。どういうことですか、谷本さん」
教室の中がざわざわとうるさくなる。うつむいている瑠奈ちゃんには、表情がない。その背中に黒いもやが大きくふくらんできた。
答えない瑠奈ちゃんから、楓ちゃんが私に視線をうつした。
「相葉さん、私も児童総会の準備にかまけてて確認をおこたっていてすみませんでした。一晩でこれをまとめるのは、大変だったでしょう。ありがとうね」
にっこりと楓ちゃんが笑う。
楓ちゃん、知っていたんだ。
ふと思い当たって、六年の席を見ると、日比野さんが目を合わせてうなずいてくれた。勝屋さんも、に、と笑う。
『委員長に言っておくから』
そう、昨日言っていたっけ。
「谷本さん」
「……はい」
私にかけた声よりも、少し強い口調になって、楓ちゃんは言った。
「確かに副委員長はあなたと相葉さんですから、二人に責任はあります。もちろん、一人でやってみて大変だと思ったら、そう言って手伝ってもらえばいいと思います。けれど、直前になって丸投げするのは、相手にとって大変な負担になります。今後は、もう少し自分の言葉に責任を持って行動してください」
何か言うかと思ったけど、瑠奈ちゃんはそのまま荷物をまとめるとあっという間に教室を出て行ってしまった。
瑠奈ちゃんが出て行くのを見て、委員のみんなも席を立ち始めた。なんとなく気まずい空気の中で私も席を立つと、楓ちゃんが私に近づいてきた。
「楓ちゃん、あの……」
ありがとうと言っていいのかごめんなさいと言っていいのかわかりかねて私が口ごもると、楓ちゃんが真面目な顔で言った。
「美優ちゃん、何があったか聞かせて?」
「楓ちゃんはさっきの話、日比野さんから聞いたの?」
「うん。けど、美優ちゃんからもちゃんと聞きたい」
私がうなずくと楓ちゃんはさっきまで瑠奈ちゃんのいた席に座ったので、私も座りなおして昨日の出来事を話し始めた。
「……だから、私も確認しておかなきゃいけなかったの。今度は、気をつけるね」
話し終えた頃には、教室には私と楓ちゃんの二人だけになっていた。
そんな私のとなりで、瑠奈ちゃんが笑いながら言った。私は、こくり、と頷くことしかできなかった。
どうしよう。泣きそう。
「これで委員会を終わります。でもその前に」
楓ちゃんが、ノートを閉じながら言った。
「みなさんのお手元にある全校からのアンケート集計ですが、これは昨日、副委員長の相葉さんが一人でまとめてくれたものです」
私は、勢いよく顔をあげて楓ちゃんを見た。委員のみんなも、驚いた顔になっている。
同じように驚いた顔になった瑠奈ちゃんをまっすぐに見ながら、楓ちゃんが続けた。
「前回の委員会で、副委員長の二人に、各班長への資料の配布とこのアンケートの集計をお願いしましたね。その時、谷本さんが一人でやりますと言ってくださったので、お願いしました。ですがどちらも、昨日まで全く手が付けられていなかったようです。それを、相葉さんががんばって今日の委員会に間に合わせてくれました。どういうことですか、谷本さん」
教室の中がざわざわとうるさくなる。うつむいている瑠奈ちゃんには、表情がない。その背中に黒いもやが大きくふくらんできた。
答えない瑠奈ちゃんから、楓ちゃんが私に視線をうつした。
「相葉さん、私も児童総会の準備にかまけてて確認をおこたっていてすみませんでした。一晩でこれをまとめるのは、大変だったでしょう。ありがとうね」
にっこりと楓ちゃんが笑う。
楓ちゃん、知っていたんだ。
ふと思い当たって、六年の席を見ると、日比野さんが目を合わせてうなずいてくれた。勝屋さんも、に、と笑う。
『委員長に言っておくから』
そう、昨日言っていたっけ。
「谷本さん」
「……はい」
私にかけた声よりも、少し強い口調になって、楓ちゃんは言った。
「確かに副委員長はあなたと相葉さんですから、二人に責任はあります。もちろん、一人でやってみて大変だと思ったら、そう言って手伝ってもらえばいいと思います。けれど、直前になって丸投げするのは、相手にとって大変な負担になります。今後は、もう少し自分の言葉に責任を持って行動してください」
何か言うかと思ったけど、瑠奈ちゃんはそのまま荷物をまとめるとあっという間に教室を出て行ってしまった。
瑠奈ちゃんが出て行くのを見て、委員のみんなも席を立ち始めた。なんとなく気まずい空気の中で私も席を立つと、楓ちゃんが私に近づいてきた。
「楓ちゃん、あの……」
ありがとうと言っていいのかごめんなさいと言っていいのかわかりかねて私が口ごもると、楓ちゃんが真面目な顔で言った。
「美優ちゃん、何があったか聞かせて?」
「楓ちゃんはさっきの話、日比野さんから聞いたの?」
「うん。けど、美優ちゃんからもちゃんと聞きたい」
私がうなずくと楓ちゃんはさっきまで瑠奈ちゃんのいた席に座ったので、私も座りなおして昨日の出来事を話し始めた。
「……だから、私も確認しておかなきゃいけなかったの。今度は、気をつけるね」
話し終えた頃には、教室には私と楓ちゃんの二人だけになっていた。
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