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第五章 聞いてない!って言いたいのに
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「そうね。美優ちゃんも確認不足だったわね。もちろん、私も」
「そんな! 楓ちゃんは悪くないよ!」
「ううん。だって私、委員長だもの。人に頼んだ仕事がどうなっているかちゃんと見ておく責任がある。それで美優ちゃんに負担をかけちゃったんだもの、本当にごめんね」
「楓ちゃんだって、総会の資料作りで忙しかったんでしょ?」
「そんなの委員長の役割分担だもの。言い訳にもならないわ」
きっぱり言った楓ちゃんはかっこよくて、思わず見とれてしまった。すると楓ちゃんは、困ったように笑う。
「でも美優ちゃん。美優ちゃんにも、一つ悪かったところがあるわね」
「え、何?」
「あのね、違うなら違う、嫌なら嫌って、はっきりということ。たまたま今回は日比野が教えてくれたから私も知ることができたけど、そうじゃなければ何も知らないまま、いつかまた同じことを繰り返したかもしれない」
違うなら違う。
私は、班長に対しても先生に対しても、そう言いたかったのに、言葉を飲み込んでしまった。
それは、とても苦しかった。
「いつも穏やかなのは美優ちゃんのいいところだけれど、それも度をこすと卑屈に見えてしまうわよ? 谷本さんが美優ちゃんに仕事を押し付けたのは、美優ちゃんならおとなしく言うことを聞くと思ったからだと思うわ」
楓ちゃんの言うことはきつかったけれど、その通りだったので私はこくりとうなずいた。
「美優ちゃんだって少しは、なんで私が、とか思ったでしょ?」
「……少しより、もうちょっと思ったかも」
「ね。だったら、ちゃんと言わなきゃだめ。それは、きちんと口に出さなきゃいけないことなの」
楓ちゃんは、にっこりと笑った。
「うん……」
違うって言いたかった。颯太が遅くまで手伝ってくれたって言いたかった。
友達となら簡単に話せるのに、みんなの前で話すことができなかった。言えなかった言葉は、胸にたまってとても苦しかった。
こんな気持ちになるのは、もう嫌だよ。
「それに、自分だけががまんすればいい、なんて思って言葉を飲み込んじゃうと、他の人にも迷惑をかけたりすることもあるしね」
「え?!」
「日比野、心配してたよ、美優ちゃんのこと。おとなしいから、谷本さんの言いなりなんじゃないかって」
「そんなことないよ。瑠奈ちゃんとは友達だし……」
「でも今回、谷本さんは美優ちゃんを利用したでしょう?」
私はためらったけど、うなずいた。多分、その通りだ。
「そんなのは友達って言わない。間違えちゃだめよ。頼りにされることとうまく使われることは違うから」
あ。よく見たら、楓ちゃんの背中で、あの黒いもやがゆれている。
「本当はね、谷本さんのことも、あんなふうにみんなの前でつるし上げることはしたくなかったの。でも谷本さん、他の委員たちともちょっとトラブルおこしてて、何人かから文句がでてたのよ。だから一度、本人にもまわりにもわかる形で決着をつけておきたかったの。美優ちゃんを利用したみたいになっちゃってごめんね。でも、ああいうのって、あまり気持ちのいいものじゃないわよね」
「うん……そうだよね。誤解が解けたのはよかったけど、瑠奈ちゃん、かわいそうだった」
私が言ったら、楓ちゃんが、少しだけ笑った。
「そんな! 楓ちゃんは悪くないよ!」
「ううん。だって私、委員長だもの。人に頼んだ仕事がどうなっているかちゃんと見ておく責任がある。それで美優ちゃんに負担をかけちゃったんだもの、本当にごめんね」
「楓ちゃんだって、総会の資料作りで忙しかったんでしょ?」
「そんなの委員長の役割分担だもの。言い訳にもならないわ」
きっぱり言った楓ちゃんはかっこよくて、思わず見とれてしまった。すると楓ちゃんは、困ったように笑う。
「でも美優ちゃん。美優ちゃんにも、一つ悪かったところがあるわね」
「え、何?」
「あのね、違うなら違う、嫌なら嫌って、はっきりということ。たまたま今回は日比野が教えてくれたから私も知ることができたけど、そうじゃなければ何も知らないまま、いつかまた同じことを繰り返したかもしれない」
違うなら違う。
私は、班長に対しても先生に対しても、そう言いたかったのに、言葉を飲み込んでしまった。
それは、とても苦しかった。
「いつも穏やかなのは美優ちゃんのいいところだけれど、それも度をこすと卑屈に見えてしまうわよ? 谷本さんが美優ちゃんに仕事を押し付けたのは、美優ちゃんならおとなしく言うことを聞くと思ったからだと思うわ」
楓ちゃんの言うことはきつかったけれど、その通りだったので私はこくりとうなずいた。
「美優ちゃんだって少しは、なんで私が、とか思ったでしょ?」
「……少しより、もうちょっと思ったかも」
「ね。だったら、ちゃんと言わなきゃだめ。それは、きちんと口に出さなきゃいけないことなの」
楓ちゃんは、にっこりと笑った。
「うん……」
違うって言いたかった。颯太が遅くまで手伝ってくれたって言いたかった。
友達となら簡単に話せるのに、みんなの前で話すことができなかった。言えなかった言葉は、胸にたまってとても苦しかった。
こんな気持ちになるのは、もう嫌だよ。
「それに、自分だけががまんすればいい、なんて思って言葉を飲み込んじゃうと、他の人にも迷惑をかけたりすることもあるしね」
「え?!」
「日比野、心配してたよ、美優ちゃんのこと。おとなしいから、谷本さんの言いなりなんじゃないかって」
「そんなことないよ。瑠奈ちゃんとは友達だし……」
「でも今回、谷本さんは美優ちゃんを利用したでしょう?」
私はためらったけど、うなずいた。多分、その通りだ。
「そんなのは友達って言わない。間違えちゃだめよ。頼りにされることとうまく使われることは違うから」
あ。よく見たら、楓ちゃんの背中で、あの黒いもやがゆれている。
「本当はね、谷本さんのことも、あんなふうにみんなの前でつるし上げることはしたくなかったの。でも谷本さん、他の委員たちともちょっとトラブルおこしてて、何人かから文句がでてたのよ。だから一度、本人にもまわりにもわかる形で決着をつけておきたかったの。美優ちゃんを利用したみたいになっちゃってごめんね。でも、ああいうのって、あまり気持ちのいいものじゃないわよね」
「うん……そうだよね。誤解が解けたのはよかったけど、瑠奈ちゃん、かわいそうだった」
私が言ったら、楓ちゃんが、少しだけ笑った。
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