はんぶんこ天使

いずみ

文字の大きさ
45 / 67
第五章 聞いてない!って言いたいのに

- 10 -

しおりを挟む
 その日の昼休み、私は花だんの確認のために裏庭へと急いでいた。

 中庭の花だんは園芸委員が担当しているけれど、裏庭の方は、希望しているクラスがそれぞれ区切られた土地を使っている。
 もう花も野菜もないけれど、引継ぎの時には来年の配置を決定しておかなければいけないので、そのための見取り図を作るのだ。

 これも副委員長の仕事だ。だから瑠奈ちゃんにも声をかけたんだけど……
 何も話してくれなかった。
 私の顔を見たとたん、大きなもやを背中に作って……そのまま、無視されてしまった。

 仕方ないとはいえ、やっぱり、悲しいな。また、元のように話せるようになるかな。
 うつむきそうになって、私はぐいっと顔をあげる。
 いけない。今は考えるのやめよう。お仕事に集中集中。

「今日中に見取り図を作って、放課後になったら楓ちゃんに見てもらって……」
 気分を変えるためにわざと大きな声で確認事項を口にしながら裏庭に出ると、誰かがはしっこのほうに座っているのに気づいた。

 わ、びっくりした! 聞かれちゃったかな。恥ずかし……
「あ」
 そこにいたのは、安永さんだった。

 うっかり私が上げてしまった声に、安永さんが振り向いた。その瞬間、安永さんの背中についていた黒いもやが、ぐわ、と大きくなる。
 反射的に、目をそらしてしまった。
 ひええええ、やっぱり私、何かしたのかなあ……

 今更引き返すのも気まずいので、私は自分の仕事をさっさと終わらせることにする。安永さんも、黙ったままだ。
 ノートを開くとえんぴつを走らせて、花だんの状況をはじから区画の様子を書き留めていく。
 えーと、ここからここまでが一年一組、ここまでが二組で……

「ねえ」
 しばらくしてから、安永さんが話しかけてきた。
「な、なに?」
 私は緊張して振り向く。声が裏返ってしまった。

「相葉さんて、慎君のこと好き?」
「へ?」
 急に出てきた名前に、私は首をかしげる。
 慎君? なんで急に。

「そりゃ、好きだよ。慎君、優しいしいい人だよね。そういえば前に私がけがをしたとき、ほら、安永さんもいたよね。えさやり当番代わってくれた…」
「違うわよ」
 なんだか座った目をした安永さんが、いらいらと私の話をさえぎった。その感情に動かされているのか、背中の黒いもやもゆらゆらと左右に揺れる。
 まるでそれは、もやが笑っているみたいで、なんだか怖い。

「特別に好きか、って聞いているの。つきあいたいと思う?」
「つき……ええっ?! だって私たち、まだ小学生だよ?!」
 つきあうとか好きとかって、もっと大人になってからの話でしょ? 
 私は、ぶんぶんと首を振った。振って……気づいた。

「もしかして安永さん、慎君のこと、そういう風に好きなの?」
 口を閉じた安永さんは、ぷい、と横を向いてしまった。ほんのりとその頬が赤くなっている。
 うわあ、かわいい!

 そうか、それでいつも私が慎君といる時ににらまれていたんだ。安永さん、やきもち妬いていたのね。全然そんなの心配することないのに。

「私は全然そんな風に思ってないよ! それどころか、安永さんと慎君なら絶対お似合いだと思ってた!」
 二人が一緒にいるところを想像しただけで、胸があったかいようなくすぐったいような感じでどきどきする。誰かを好きになるってすてきなことだもんね。
 こんな気持ちが安永さんに伝わったら、きっと安永さんのあの黒いもやも小さく……

「なにがお似合いよ!」
 すると、急に安永さんが、ば、と立ち上がった。その瞬間、黒いもやも一回り大きくなる。もうその頭を超すくらいに。

「何も知らないくせに、勝手なこと言わないで! そうやって私のことばかにしてるの? ふざけないでよ!」
「ば、ばかにしてなんか……」
「してるわよ! 相葉さんだって、本当は慎君のこと好きなんでしょ!? どうせ私はふられたわよ! とっくに聞いてるんでしょ、慎君から。だから、いい気味だと思って、人の事ばかにしてるんでしょ!!」
「え? あの、何が……とにかく、安永さん、おちついて……」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

左左左右右左左  ~いらないモノ、売ります~

菱沼あゆ
児童書・童話
 菜乃たちの通う中学校にはあるウワサがあった。 『しとしとと雨が降る十三日の金曜日。  旧校舎の地下にヒミツの購買部があらわれる』  大富豪で負けた菜乃は、ひとりで旧校舎の地下に下りるはめになるが――。

少年騎士

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。

【奨励賞】おとぎの店の白雪姫

ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】 母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。 ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし! そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。 小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり! 他のサイトにも掲載しています。 表紙イラストは今市阿寒様です。 絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

未来スコープ  ―キスした相手がわからないって、どういうこと!?―

米田悠由
児童書・童話
「あのね、すごいもの見つけちゃったの!」 平凡な女子高生・月島彩奈が偶然手にした謎の道具「未来スコープ」。 それは、未来を“見る”だけでなく、“課題を通して導く”装置だった。 恋の予感、見知らぬ男子とのキス、そして次々に提示される不可解な課題── 彩奈は、未来スコープを通して、自分の運命に深く関わる人物と出会っていく。 未来スコープが映し出すのは、甘いだけではない未来。 誰かを想う気持ち、誰かに選ばれない痛み、そしてそれでも誰かを支えたいという願い。 夢と現実が交錯する中で、彩奈は「自分の気持ちを信じること」の意味を知っていく。 この物語は、恋と選択、そしてすれ違う想いの中で、自分の軸を見つけていく少女たちの記録です。 感情の揺らぎと、未来への確信が交錯するSFラブストーリー、シリーズ第2作。 読後、きっと「誰かを想うとはどういうことか」を考えたくなる一冊です。

まぼろしのミッドナイトスクール

木野もくば
児童書・童話
深夜0時ちょうどに突然あらわれる不思議な学校。そこには、不思議な先生と生徒たちがいました。飼い猫との最後に後悔がある青年……。深い森の中で道に迷う少女……。人間に恋をした水の神さま……。それぞれの道に迷い、そして誰かと誰かの想いがつながったとき、暗闇の空に光る星くずの方から学校のチャイムが鳴り響いてくるのでした。

独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。

猫菜こん
児童書・童話
 小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。  中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!  そう意気込んでいたのに……。 「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」  私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。  巻き込まれ体質の不憫な中学生  ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主  咲城和凜(さきしろかりん)  ×  圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良  和凜以外に容赦がない  天狼絆那(てんろうきずな)  些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。  彼曰く、私に一目惚れしたらしく……? 「おい、俺の和凜に何しやがる。」 「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」 「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」  王道で溺愛、甘すぎる恋物語。  最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。

処理中です...