シャハルとハルシヤ

テジリ

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最終章 ヘイサラバサラ

ヘイサラバサラ

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 同じシビル連邦のスミドに暮らしながら、大きく異なる童女達の人生が交差する。
貧困家庭から選ばれる幼妻ようさい制度について、それまでごく普通に小学校に通っていたイレンカが、緑の丘の放牧家達と暮らしを共にすることによって見えて来たものとは――。



 企画会議を通過し、予算や資器材を取り揃え、予防接種も受けたシャハルは、無事スミドの地へ降り立ち、私達家族と再会した。

「久しぶりだね、イレンカ。前回君に会ったのは、奴が肝硬変で死んだ博士課程の時だっけ。大きくなったらセウロラに似て来て良かったね。それにしても不思議だ。毎日のように会ってるイズミを見てても、あんまり成長したとは思わないのに」

「なあシャハル、娘が私に似たら何か問題でもあるのか」

「やだなハルシヤ、自分がセウロラより可愛いとでも思ってるの」

 冗談はさておき、シャハルは私の娘イレンカを連れて、緑の丘へ取材に行った。イレンカの夏休みが終わるまでという約束だが、まあしばらくは戻って来ないだろう。

「撮ってる間は、シャハルとか伯従父いとこおじさんとかって呼んじゃ駄目だからね。ハルシヤの名前出すのも禁止」

 移動中の車内で運転しながら念押しするシャハルに、イレンカはふくれっ面をした。

「そんな事しないもん。サワでしょう、格好いい名前」

 緑の丘に到着後、シャハルはイレンカを連れて、私の父タハエの知人である放牧家の天幕を探し回った。

「やあ、そこのお嬢さん。チヒラさんの天幕を知らないかな」

 シャハルに車の運転席から声を掛けられた、まだ10になったばかり位の身重の娘は、黙って遠い天幕の一つを指し示した。

「ああ、あっちに移ってたのか。どうもありがとう。もうすぐだよイレンカ」

 その日の夜、イレンカは寝袋に入り、まだ起きて撮影していたシャハルに疑問をぶつけた。

「ねえ。昼間見たお姉ちゃん、どうしてお腹が腫れてたの」

「中に子供が入っているからだよ。女の子は男と子供が出来るような事をすると、まだ自分が子供でも妊娠するのさ」

 明くる日イレンカは、針仕事をする為に集まって来た女の子達の元へ紹介された。その中には、昨日の娘もちゃんと居た。

「あたしはチシャ。良いなあイレンカは、チヒラさん家で3番目の奥さんになるんでしょう。あの人、殴ったり怒鳴り散らしたりする所なんて見た事無いし、商売上手だからお金も持ってるし」

「違うって。チヒラさんは私のお祖父ちゃんと友達だから、学校の休みに遊びに来ただけ」

 そう答えながら、イレンカは皆から遠巻きにされている、イレンカよりも1,2歳位年上の娘の事が気になった。

「ねえチシャ。何であの子だけ、あんな遠くに1人で座っているの」

「だって、臭いんだもの。イレンカも、タンタルには近づかない方がいいよ。難産がうつるから」

 去年の冬、タンタルは難産の末、1人の赤ん坊を死産した。その際産道に穴が開き、失禁症になってしまったのだという。

「せっかく男だったのにね。あたしも絶対男が良い。その子にあたしの事を守って貰うの」

 そう言いながら、チシャは自身の下腹部を撫でた。その様子を見て、イレンカは近くでカメラを回すシャハルに話し掛けた。

「サワは男と女、どっちに産まれた方が得だと思うの」

「どっちもどっちさ。でも、僕は男で良かったと思ってるよ。嫌いな奴の子供を産まなくて済むからね」


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