追放された元勇者パーティーの最強魔術師、魔族の少女を拾って無双する

はる

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第1章 出会い

討伐前

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「あたしはアセロラ。Aランクで役職は治癒師をやってるわ。よろしく」

 いや、別に訊いてないし。まぁ、これから一時的にとはいえパーティーを組むわけだし、名前くらいは知っておいた方がいいだろう。仮に死んだときに「この人知りません」だったら、悲しいことになるからな。
 当然、俺は死なない。そのために、俺は神級魔法を発明したといっても過言ではないからな。だって、誰も死にたくないだろ? 痛いのも嫌。俺は昔、それを学んだ。まぁ、物理攻撃は防げても、精神攻撃は防げないんだがな。勇者パーティーにいた頃がいい例だ。
 もしかしてアイツら、俺が精神攻撃を防げないことを知って、俺の前でイチャイチャしていたのか? くそっ! してやられた! (なお、本人たちにそのような考えはなかった)
 一応、勇者パーティーを名乗るだけはあるな。俺にダメージを与えるとは……天晴れなり。

「俺はアベルだ。あんたと同じAランクで魔術師をしている」

「私はロザリアよ。ランクはEだけど、いずれはSランクになってやるんだから!」

 恐らくだが、その頃になったらお前、魔族領に帰ってると思うぞ? 人間領に永住するつもりか? どっちでもいいけど。

「ふーん、Sランク、ね。口では簡単に言えるけど……この戦いで、どんな結果になるかしらね?」

「ふふ、見てなさい。私が華麗にレッドドラゴンを倒すところ! そして! 華麗にSランク冒険者になる瞬間をね!」

 調子に乗んな。流石にSランクの壁はそんなに低くない。レッドドラゴンを倒せたとしても、せいぜいBランクが限界だ。
 Sランクの魔物を倒したとしても、ロザリアだけで倒したわけではない。ロザリア以外に俺を含めて四人のAランク冒険者がいるのだ。俺たちがいる限り、一気にAランクに上げるということはできない。
 さらに、Sランクは俺が言った通り、神級魔法も使えないといけないのだ。ロザリアは神級魔法を使うことはできないはずだ。もし、魔族しか知らない魔法を使えば、神級魔法と認定される可能性もあるが、下手をすれば、魔族だとバレてしまう可能性も出るから、この案は無しだ。

「そういえばさ。あなたって、さっき、あのゴリラに治癒魔法をかけていたよね? 魔術師じゃなかったの?」

 アセロラが不思議そうに俺に訊ねてくる。
 ん? 何を言っているんだ? この女?

「何を言ってるんだ? 魔術師が魔法を使えるのは当たり前だろ?」

「いや、そういうことじゃなくてさ。あたしが見た感じ、あなたって純粋なアタッカーだと思うの。でも、あんな高度な治癒魔法を使ったから。普通はどっちかに特化するものだから、あれだけ使えるとなると……ね?」

 なるほど。つまり、俺の回復魔法のレベルが高すぎて、魔術師ではなく治癒師に見えたというわけか。
 うん、言いたいことはわかる。アセロラが言う通り、普通は何かに特化させるのが魔術師だからな。だが、別に俺は特化しているつもりはない。一人で任務をこなしていたら、勝手に身についただけだ。
 
「俺は昔、ソロだったからな。怪我をしても、誰も治してくれない。だったら自分でするしかない。そしたら、いつの間にか、回復魔法も使えるようになったってわけだ」

「ふーん、ソロでやってたから……ね。……確かにアベルって言ったよね? もしかして……」

 アセロラが俺の名前を思い出して、ハッとした表情を見せる。
 まぁ、俺はこれでも有名な勇者パーティーの一員だったからな。アセロラも顔は知らなくても、魔術師という職業が被っている以上、俺が勇者パーティーのアベ……

「”孤独ボッチのアベル”!?」

「そっちじゃねえよ!」

 アセロラは、え、違うの? みたいな顔をする。全っ然違うわッ! 誰が孤独ボッチだッ! どこまで有名なの、このあだ名!?
 俺はため息をつきながらも、もう一度、アセロラに問いかけた。もちろん、俺が何者かということをだ。
 アセロラはあごに手を当て、考えるような仕草をする。しばらくして、あっ、と言って手を叩く。ふん、やっとわかったか。十秒もかかったぞ。

「いや、それ以外、知らないわよ?」

 ふざけんな。

「だって、”孤独ボッチのアベル”って有名よ? ――どんな任務も一人でこなす。謎の冒険者。だが、誰も声をかけない。話しかけにくいから――そんな感じで有名なんだけど?」

「はああああぁぁぁぁ――ッ!?」

 俺は思わず、自分のあだ名の由来を聞いて叫ぶ。
 だって仕方ないだろ! コミュ障の俺が自分から話しかけるだなんて芸当、できるわけないだろ! できたら苦労しねえわ!
 それに話しかけにくいって……まぁ、あの頃はイライラしていたことが多かったから、雰囲気は最悪だったかもだが…………あれ? 自業自得じゃね?

「アベル」

 ロザリアがポンと俺の肩に手を乗せる。そして――

「大丈夫だよ。アベルは一人じゃないから」

 親指を立てて、ニコッと笑った。

 いや、まぁ……励ましてくれるのは嬉しいんだがな……





 哀れむような目はやめてくんない? 悲しいから。あと、アセロラも同じような視線を向けないでくれる?
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