男装ホストは未来を見る

メイド研修

日曜の昼下がり、駅付近の少し年期あるビル三階にて『Berryz』というメイドカフェがある。
そこは『Berryz』一号店の店舗でありよくオーナーであるベリーが店員をやっているという噂もあるのだ。
今日は先日コスプレと称し女装のままメイド姿をさせられた際に日曜日限定のメイドとして働く事になり今日は初日という事もあり研修生という事になっている。

カランッ

店内に入ると普通のメイドカフェと違いゴスロリ調になっており至る所にモノクロ模様の薔薇や紫や赤といったダークな小物が置かれていた。

「あら？せなちゃんいらっしゃい～！」

中には紫の薔薇を彩ったフリル満載のメイド服に白髪ツインテールをしたベリーの姿があった。

「今日よろしくお願いします…」

深々と頭を下げ言うとそんなのお構い無しにいちものように抱きつかれ若干早く帰りたいとかなり思った。

「あ～もう！そんな他人行儀な言葉はやめて～！せなちゃんは恋人でもありマスコットなんだから！」

恋人はまだ分かるがマスコットってなんだ？もはや人でも生き物でもないじゃないか…

ベリーの言葉に顔が引き攣りつつ今は全員店員さんが更衣室で着替えているというので休憩所に通され着替えを済ませる事になった。

「皆にはせなちゃんは男だって隠してるからホストの事もバレないように秘密ね？」
 
「あ、はい…そう言う事ならバレないように気をつけます」

「じゃあ着替えをお手伝い…」

バタンッ

ベリーの着替えを手伝いしようとする行為をすかさずドアを閉め止めるとドア裏で不満を漏らす声が聞こえた。

「もうっ！せっかくお着替えお手伝いしようと思ってたのに！」

「結構ですっ！」

絶対ろくな目に合わないし、何より女だってバレたらおしまいだ！

「ぶぅ～！着替え終わったら皆に紹介するからね♪」

「は～い！」

ベリーさんが離れていく足音がし、一息つくと渡されたメイド服を見る。

「これを着るのか…」

白と赤のいちご模様にフリルと編み模様の黒の厚底シューズに赤いリボンをツインテールの髪留めにし身につけるとベリーさんから言われた通りのゴシック調のメイクをし店員さんがいるという更衣室に向かった。

コンコン

「は～い！せなちゃん入って！」

ベリーさんの声が聞こえドアを開けると十人ほどのメイド服を着た店員さんの姿があった。

「ベリーさん、新人さんの人？」

「そうよん♪日曜日限定で働いてもらうせなちゃんよ！皆仲良くしてあげてちょうだいね♪」

「せなです。メイド経験は初めてで色々分からないことが多いので色々教えて頂けたら幸いです。よろしくお願いします…」

深々と頭を下げると再度お構い無しにベリーさんに抱きつかれ頬ずりされる姿を見て周りの店員さん方の目がハートに変わった。

「可愛い～！！」

「ベリーさんこんな可愛い人材どこで見つけて来たんですか～？」

「ふふふっ… 秘密よ♪」

「私も頬ずりしたいです～！」

いつの間にか揉みくちゃ状態に陥りされるがままになる事数分後、ようやく体を解放され脱力すると開店時間を知らせるベルが鳴った。

ピリリリンッ…ピリリリンッ…

「あら？もうこんな時間ね…皆今日もご主人様を幸せにするよん～♪」

「はい！」

ベリーの一声に次々と更衣室を出ていく中で一人のメイドさんが立ち止まった。

「せなちゃんには、まりりんが教育係としてつくから分からないことがあったら聞いてね？」

まりりんと言われたメイドの店員さんは紫のショートヘアに紫を基調とした薔薇のメイド服を着ていた。

「はい！まりりんさん、色々よろしくお願いします」

「任せて！それよりも…どっかで私と会った事ないかしら？」

「へ？」

その言葉にまりりんさんを凝視するとある事実に気がついた。

まりりんって…同じクラスの委員長の井川いかわ万里まりさん！？

やばいっ…！バレたら一環の終わり…！！