男装ホストは未来を見る

Shell

文字の大きさ
50 / 108

最後に言いたい事

しおりを挟む
正夢を見てすぐ店に行く支度をし豹と共に店に向かった。

カランッ…

店内に入ると接客席のソファに仰向けになって寝ている隆二さんの姿があった。

「隆二さん!起きてください!」

「んっ…せな?何でこんな所にいるんだ?」

「俺の事はいいんです!とにかく一緒に来てくださいっ!」

「えっ!?お、おいっ…」

言語道断とばかりに隆二の腕を引っ張り半ば無理矢理に連れ出し外で待機してくれていたタクシーに無理矢理押し込む。

「運転手さん!空港まで最速でお願いします!」

「お、おい!せなにそれに豹までいったい何なんだ?」

「今から隆二さんには真希さんに会ってしっかり話してもらいます!拒否は許しません!」

「なっ…!?俺は絶対会わないって言っただろ!」

「隆二さんは真希さんの本当の気持ち聞いたことあるんですか?今も昔もどんな事を思ってたのか聞いた事あるんですか?」

「そんなの分かりきってる…あいつは俺の事を愛してはいないかっただから…」

「勝手に人の気持ち決めつけんなっ!阿呆っ!!」

パシッ!

「っ…」

勢いあまって隆二の頬に平手打ちを食らわせるとその状況に周りの運転手さんや豹までもが静まり返った。

「人の本当の気持ちなんてな、本人に直接聞いてみないと分かんねぇだよ!勝手に決めつけて誤解してすれ違ってバッカじゃねーの!今言わなきゃ真希さんアメリカに行っちゃうんですよ?もう会えないかもしれないんですよ?少しでも後悔があるんなら…言いたい事があるんなら今言わなくてどうするんですか!男なら泣きながら頼む女性の願いぐらい聞かなきゃ男として…いや、ホストとして失格です!!」

「っ……」

星那の言葉を黙って聞いていた豹が付け加えるように口を開いた。

「せなはまだガキで経験も大人の隆二さん達からしたら浅いですけど誰よりもホストの本質を分かっており女性の事をよく分かってると思います。だから今星那がいった事は隆二さんだけではなくホストとして女性の真希さんの気持ちを分かっているからこその発言だと思います。だけど、一番真希さんのことを理解しているのは隆二さんじゃないんですか?」


「そうだな…お前らの言う通りだ。俺は真希の気持ちを聞こうとしなかった。勝手に思い込み真希の事を理解してるつもりが自分のために自ら真希を遠ざけ避けていたのかもしれない…もう一度チャンスがあるのなら会えなくなる前にちゃんと真希と話して本当の気持ちを知りたい…!」

「そう来なくっちゃ!運転手さん、あとどれくらいで着きますか?」

「あと十五分ぐらいだね」

時計を見ると十三時ちょうどを回っていた。

何とか間に合いそう…早く!もっと早く…!

 *

「はぁ…はぁ…真希さんはどこ!?」

「もう改札口かもしれない…!行くぞ!」

「うん!」

空港に着き走って真希さんを探すがどこにもおらず既に改札口にいるかもしれないと思い改札口に走った。

「真希さん…真希さん…いた!!」

改札口付近にて列に並ぶ真希さんの姿を見つけ慌てて向かう。

「真希っ…!!」

隆二さんは真希さんに向かって叫ぶとそれに気づいた真希さんが驚いた顔で振り向き列から離れ近づいた。

「隆二…?」

「ずっと遠ざけて悪かった…会って話したい事があって来たんだ」

「私もずっと隆二に話したい事があったの…!」

ようやく会えた二人を横目に私は改札口にいるキャビンアテンダントさんに駆け寄った。

「あの!この十三時三十分のアメリカ行きの飛行機をもう一度確かめて貰えませんかっ!?」

「急に何ですか?このアメリカ行きの飛行機は整備士さんの人達がしっかりと確かめた上で飛びます。不備はありません」

「それでも大勢の命がかかってるんです!一般市民の言葉でも少しでも危ない可能性があるのなら見るべきじゃないんですか!?」 

どうしても見てもらわなければ真希さんを乗せた飛行機は墜落して乗客全員死亡するかもしれない…もしそうなれば今止めなかった私自身を後悔する事になる!

「ですから私どもがしっかりと点検したおりで…」

「君、ちょっといいかな…?」

するとその様子を見ていたらしいパイロット男性が横から入ってきた。

「何でしょうか…?」

「その話に根拠はあるのかい?君はどうみても一般市民だ…そんな君の言葉一つで我々が整備士を含めキャビンアテンダントやお客様に迷惑をかけるかもしれないのに簡単には動けないんだ。確実な根拠があるのなら話は別だが…?」

「根拠はないです!それでも正夢で見たんです!この十三時三十分のアメリカ行きの飛行機の片方の翼が停止して機内にいる乗客全員が恐怖の顔を浮かべ最後には海の上に飛行機の破片が飛び散り海が赤い液体で染まる夢を…そんな夢をみて何もせず起こってしまった後に止めなかった事を後悔したくないんです!もしもが起こってからじゃ遅いんです!そんな1パーセントの危険を回避してこその整備士でしょ!?乗客を安全に飛ばす事は空港で働く人々の役目じゃないんですか!?」

必死に泣きながら叫ぶ星那にパイロット男性はただ真っ直ぐに見つめ意を決してかのように持っている無線で何かを話し始めた。

「…十三時三十分のアメリカ行きだけでいい、もう一度不備がないか点検してくれ」

「川澄機長…!?」

「私が全部の責任を請け負う。この少年の言う通り乗客全員を安全に飛ばすために私たちはいる…1パーセントでも危険があるのならそれを回避してこその私達の役目だろ?」

「あ、ありがとうございますっ!」

深々と頭を下げ話を聞いてくれたパイロット男性にお礼を言った。

その後、星那の言う通り十三時三十分のアメリカ行きの飛行機にはエンジンに不備がありこのまま行けば上空にて片方の翼が停止し墜落して誰も助からない状況に陥っていた事実に知らせた星那の事は伏せ整備士を動かした川澄機長の対応がニュースになっていた。

 *

「何か言ったのか…?」

真希さんと隆二さんの様子を伺う為、豹の側に戻るとパイロット男性とキャビンアテンダントさんに何か言っていた様子を遠目で見ていた豹が問いかける。

「別に少し飛んでもらうのを遅らせてもらっただけ…それより二人はどうなったの?」

「今ちょうど隆二さんが真希さんに愛していた事や遠ざけた理由を言い終わったとこだ…」

「…そうだったのね、私達お互いに誤解してすれ違ってただけだったんだ」

「真希は俺の事本気で愛してはいないと思ってたからこそ俺だけの気持ちで真希を振り回すわけにわいかなかった…」

「それは違うわ…!私も隆二の事愛していた!でも私も隆二と同じように隆二は本当に愛してはいないと思っていたし、隆二との恋を貫いてしまえば親が隆二に何するか分からなくてお見合いから逃げる事も結婚から逃げる事も出来なかったの…でも何も言わずに隆二の前から姿を消した事は私の身勝手だったわ…本当にごめんなさいっ!」

泣きながら謝る真希さんの姿に隆二さんは何とも言えないような辛そうな顔をすると涙を流す真希さんの頬に優しく触れた。

「謝らないでくれ…謝らなければならないのは俺の方だ。俺は真希の事を愛していたのに…誰よりも理解してるつもりだったのに…真希の本心を聞こうとしなかった。挙句の果てには自ら真希を遠ざけ勝手に思い込んで真希を悲しませてしまった…本当にごめんな?」

その言葉に真希さんは首を横に振ると頬を伝う涙を拭った。

「お互いに誤解しあってすれ違ったせいでこうなってしまったの…これも運命よ。それに今隆二が幸せなら私は悔いはないわ」

「俺も真希が幸せなら悔いはない…今幸せか?」

「幸せよ…すっごく幸せ…!」

その言葉通りに本当に幸せそうな笑みを浮かべる真希さんに隆二さんは笑顔を向けた。

「よかった…いつかまた、会うことが出来たらその時は結婚のお祝いに真希が好きだった白い薔薇の花束を贈る」

「ううん、それは私にじゃないわ…隆二の大切な人に贈ってあげて?」

そう言うと真希さんは後ろで遠目で見ていた星那に視線を向ける。

ん?私…?

キョトンとする星那にクスリと笑うと隆二さんに向き直り耳元に何やら呟いた。

「…今度は離しては駄目よ?」

謎の言葉に隆二はキョトンとした顔をするとその顔を見た真希さんはクスリと小さく笑い笑顔で旅立っていった。












    
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜

紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。 連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...