男装ホストは未来を見る

Shell

文字の大きさ
57 / 108

暗闇の中で…

しおりを挟む
「はぁ…はぁ…」

既に日が落ちつつある状況の中、森林深くにまで来ると辺りを見渡した。

「ひのちゃ~ん!どこ~!いたら返事して~!…はぁ…はぁ」

聞こえるのは草木から聞こえるの獣の声や虫の声ぐらいで肝心のひのちゃんの声は聞こえなかった。

「雨強くなってきたなぁ…」

別に自衛隊の人達を信用していないわけではないが、個人的にひのちゃんの心配でつい勢いで一人でここまで来たけど実際道なんて分かんないしどうしたら…

途方に暮れながらもひのちゃんを探しながら暗くなる森林を歩いていると小さな古ぼけた山小屋らしきものが見えた。

「山小屋…?」

近寄ってみると薄ら扉が空いており迷った末に中に入って見る事にした。

「お邪魔します…誰かいませんか?」

周りをみると窓も電気も一切なくただ暗く何も無い小屋みたいだった。

ベチャッ…

「ひっ…な、何!?」

足に何か液体のようなものの感触がしすかさず後ずさり恐る恐る確かめる。

「血…?」

赤い液体のようなものが足の裏についているのが見え先程いた位置の床を見ると暗くてあまりみえないが血のような液体が零れているのが見えた。

「これっていったい…」

バンッ!

「な、何!?」

後ろで大きな音がし振り返ると空いていたはずの扉が閉まっていた。

「やだ!開けて!!」

扉を開けようとしても何かで止められているようで開かなくて慌ててひたすら扉を叩く。

ドンドンドンドンドンドン!!

「何で開かないの!?そこに誰かいるなら開けて!助けて!!」

暗い…開かない…誰もいない…一人ぼっち…

 *

十年前…

ドンッ!

『…一生そこにいろ!もう俺にお前の顔など見せるな化け物!』

バタンッ!

『やだ…嫌だよ!開けて!開けてよ!』

ドンドンドンドンドンドンドン!

『…ここに誰も近づけるな!分かったな?』

『はい、仰せの通りに…』

ドンドンドンドンドン!!

『開けて!誰か…誰か助けて!!』

誰もこない…誰も助けてくれない…お母様…

 *

『今日からもう来なくていい』

『はぁ!?何ですか急に?』

『お前はクビだ』

『なっ…!?』

ジャリジャリ…

『ちっ…これっぽっちでどう生きていくんだっつーの!』

ピンッ!

十円玉を指で弾き上に上げる。

『あっ!やべっ!』

手の甲にやるつもりが地に落ちコロコロと扉の隙間に入っていった。

『んー!取れねぇな…』

辺りを見渡し誰もいない事を確認すると扉を止めていた鉄板を外し重い扉を開ける。

キー…

『えっと…俺の十円玉はっと…ん?』

暗い床を凝らして見るとそこには八歳か七歳くらいの痩せこけた女の子が倒れていた。

『お、おい!しっかりしろ嬢ちゃん!!』

三日間ぐらい何も口にしてない様子の意識のない女の子の体を慌てて抱き寄せ揺らす。

『…んっ…』

小さく漏れた女の子の声にほっと安堵する。

『まだ死んでねぇみてーだな…よかったぁ…』

女の子の手には必死に扉を叩いたせいか血が出るほど真っ赤に染まり、手足には何かしらの暴力を受けたような痣が無数にあった。

『誰がこんな真似を…』

このままにしておくのは危険だと悟り女の子を抱え扉を閉め直し再度周りに誰もいない事を確認し見つからないようその場を後にした…

 *

現在…

ピチャ…

「あいつ何処までいったんだ…?」

雨が強くなる中森林深くまで星那を追いかけて来ていた豹は辺りを見渡しながら必死星那の姿を探す。

「ん?…山小屋?」

不審に思い近づくと木板により扉が閉まっており怪しさしかないと感じながらも、もしもの可能性のため挟まっている木板を外し扉をゆっくり開ける。

キー…

目を凝らし暗い中を見ると倒れている星那の姿を発見した。

「おい!しっかりしろ!」

慌てて近寄り体を起こし揺さぶると意識はあるようで吐息と共に薄らと瞼が開く。

「…よかった」

「あれほど一人で行動するなといったろ!バカっ!」

「ごめん…」

「はぁ…とにかく帰るぞ」

「ま、待って…!ひのちゃんは…?」

「無事見つかって今は皆と一緒だ」

「よかった…うっ…さ、寒い」

真っ赤に染まっている頬に手を当てると高熱らしき体温を感じすぐにリュックを下ろし中から少し大きめのTシャツを取り出す。

「星那、今からする事を後で怒るなよ…?」

「何…?」

力なく見上げる星那のカッパを脱がせ、雨によって濡れていた服に手をかける。

「ちょっ…何するの!?」

「このままだと風邪ひくだろ?…今はこれしか手がない」

「うっ…絶対見ないでよ?見たら後で殺す」

「見ても興味ねぇから安心しろ」

そう言うと高熱で動かない星那を他所に濡れている服を脱がせ中の下着に手をかけようとした瞬間、横から力なく腕を掴まれた。

「こ、これは自分でする…!」

「馬鹿!体動かねぇくせに無理すんな」

「うぅ…」
 
ダルくて思うように動かない体に諦めじみた声で唸りゆっくりと両手で顔を覆う。

「ひゃっ…」

豹の冷たい指先が肌に触れ声をあげるも迷うことなく取り去られた下着に恥ずかしさで熱が益々上がる。

「これに腕通せ」

豹に言われるがままにTシャツに腕を通し着るとその上から豹が着ていたカッパが被せられその状態のまま横抱きに抱えられた。

「フードしっかり被っとけ」

「うん…」

フードを深く被せられ豹の顔が見えなくなりと豹は抱えたまま立ち上がり山小屋を出ようとした瞬間、扉下にて何やら紫色のプラスチックのリングが落ちている事に気づき拾う。

「これはまさか…」

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜

紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。 連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...