男装ホストは未来を見る

Shell

文字の大きさ
61 / 108

疑惑の二人

しおりを挟む
その後、男子の試合は豹の圧倒的な強さにより女子ともに五組の準決勝進出が決まり次の試合がある前に休憩時間と称してお昼ご飯タイムとなった。

「井川さんもよかったら一緒に下で豹やまひるも入れて食べない?」

「え?でも…お邪魔にならないかしら?」

「全然!むしろ大歓迎!ね?理沙」

「うんうん!一緒に食べよう?」

「そういうなら…お言葉に甘えて」

嬉しそうに微笑む井川に内心ある疑問が浮かんでいた。

メイドカフェではあんなに明るいのに何で学校ではいつも周り気にしたり少し遠慮がちなんだろ…?

今の井川とメイドカフェでのまりりんの違いに不思議に思いつつも下にいるまひる達に合流するため隆二さんに作って貰ったお弁当や水筒を手に一階へ降りると何故かまひると豹の周りに男子達が待ってました!と言わんばかりに集まっていた。

ナニコレ…

あからさまに顔が引き攣っていると理沙が我慢しきれず前に乗り出した。

「あんた達邪魔!私達はまひると宮端くんに用があるの!部外者はどいてよ!」

理沙の言葉に集まっていた一人である太田くんが詰め寄った。

「あん?部外者は平戸もだろ!俺達だって星那さんに用があるからいるんだっつーの!平戸なんかに用はねぇんだよ!」

「なんだとコラァ…!」

「ちょっ…落ち着いて二人とも!」

何とか間に入ろうとした所、それまで後ろで黙って聞いていた井川さんが太田くんに近寄った。

「龍也!少しは美嶋さんの気持ちも考えたらどうなのよ!こんな大勢に囲まれてご飯すら食べられないじゃない!」

「ま、万理!?何でお前が星那さんと一緒にいるんだよ!?」

「私の事は今はいいのよ!それより今は…」

「ちょっ…井川さんと太田くんっていったいどんな関係なの?」

慌てて中に入りおずおずと二人に問いかけると二人とも苦虫を噛み潰したような顔で口を開いた。

「…中学が一緒なだけの関係ですわ」

「えっと…それは幼馴染って事?」

するとその言葉にすかさず太田くんの突っ込みが入る。

「ちげーよ!ただの腐れ縁だ!」

それは幼馴染と変わらないんじゃ…?

「星那~!いいから早く食べようよ~!」

いつの間にか集まっていた男子達を蹴散らしまひると豹の隣に座っていた理沙が見え両隣にいる二人に声をかける。

「井川さん、早く食べよっか?太田くんもよかったら一緒に食べませんか?」

「えっ…いいんですか?よっしゃぁぁぁ!!」

バシッ

ガッツポーズで喜ぶ太田くんにすかさず井川さんの鉄拳が振り下ろされた。

「いてっ…!何すんだよ!」

「あんたの期待してるような事が絶対に起こらないから釘を刺しただけよ!」

「なっ…何だと万理のくせに…!」

パンッ!

慌てて二人の間で手を叩き止める。

「はい!喧嘩やるならご飯の後ね!早く食べよ?」

いがみ合う二人の腕を掴み座らせると袋に入れていたお弁当と水筒を取り出し床に並べる。

「星那、今日はお弁当か?」

焼きそばパンを頬ばりながら問いかけるまひるに笑顔で答える。

「ふふっ…一緒に暮してるバイトの先輩が作ってくれたの!」

今日はクラスマッチだって言ったら隆二さんが朝作ってくれたんだよね…

「いいな~!早く中身見てぇ…」

まひるの言葉に包んでいた花柄の風呂敷を取り去り蓋を開けると中にはパンダの顔が描かれたおにぎりに卵焼きやササミのグリルなど野菜たっぷりのヘルシーなキャラ弁だった。

「うわぁ…」

「すげぇ…パンダのキャラ弁とか凝ってるなぁ」

まひるが横から感嘆の声をあげているとすぐ隣で理沙の声があがった。

「うわっ!?宮端くんのもキャラ弁だぁ!!黒猫可愛い!」

その声に豹の顔を見ると引き攣り気味にお弁当の中身を見る姿がみえた。

そういえば豹のも隆二さんが作ったんだっけ?中身はっと…

中を覗き込むと星那のと異なり黒猫をかたどったおにぎりに同じような卵焼きに照り焼きチキンなど肉をたっぷり使った黒猫キャラ弁だった。

確かに豹にはそぐわない可愛さかも…

つい口元が緩み小さく笑うとそれに気づいた豹の視線が突き刺さる。

「うっ…」

目だけで何も言うなと鋭く訴えられすぐ様口を閉じる。

「…また購買のパンで済ませて栄養が偏るわよ!」

「うるせぇ!俺は購買のパンが好きだから食ってんだ!万理にとやかく言われる筋合いはねぇ!」

「なっ…私は心配して…」

「ちょっ…二人ともそのへんにして!」

慌てて間に入り言い合いを止め二人に向き直る。

「ずっと気になってたんだけど…二人って何で喧嘩ばっかりしてるの?」

「喧嘩っつーか…万理がいちいち俺のやることなすこと口挟むからその度にカッとなって…」

「私はただ龍也の事を心配して…」

そう言う井川さんの顔は少し照れくさそうでその様子にある疑問が浮かんだ。

もしかして…

「井川さんって太田くんの事好きなの?」

「なっ…”絶対違う!!”」

二人揃って否定する言葉に内心先程の理沙のようにニヤニヤ顔が浮かんだ。

「星那、これってもしかして…」

横から服の袖を掴み小さな声で耳打ちする理沙に頷く。

「もしかしなくてもそうだね…ふふっ」

理沙と二人で隠れてニヤニヤ顔をし二人の様子を影で楽しむ事にした。





しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜

紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。 連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...