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出会いの場所は図書館で…
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真夏の猛暑の炎天下の下を歩くのは絶望的に嫌だと言う心理とエアコンもつけられない状況で扇風機のみで部屋に籠るかという選択に少しは炎天下の下を歩く羽目になるがその先で待つタダ当然のエアコン付き静かな図書館を思うと後者ではなく前者を選ぶ事にした。
だからといって有意義な時間を過ごせるかといったら間違いで、図書館に行くと隆二さんに言ったら既に宿題を終わらせた豹を見習って図書館で宿題を終わらせるようにと言われエアコンの中でだらけるのではなく真面目に宿題に励んでいた。
「はぁ…ここ二時間休み無しでもう集中力切れ」
テーブルの上に広げられたノートにうつ伏せになりながら小さく唸る。
「…よし!本巡りしよ!」
息抜きと称して宿題を一時中断しリュックに押し入れ立ち上がると面白そうな本を探すため図書館内を歩く。
ん~…面白そうな本…面白そうな本…
「…あ!これ新刊の『クロネコ秘書』だ!」
少し高い位置にある本に手を伸ばすと背後から誰かの手が伸び取ろうとした本を取られる。
「あ…」
「…これどうぞ」
男性の声に振り返ると本を手にしたグレーのスーツ姿の眼鏡をかけた黒い短髪の男性がいた。
「あ、えっと…いいんですか?」
「手を伸ばしてたのを助けようとしただけなので…」
そう言われ本を受け取ると男性は眼鏡を押し上げ再度口を開く。
「そのシリーズ好きなんですか?」
「はい!クロネコの秘書の仕事がかっこよくてストーリーが精密で気に入ってて…こういった物語ものって妙にワクワクするんですよね」
「分かります!私もクロネコシリーズ全てご愛読してまして兄弟の活躍秘話が気に入ってるんです!仕事上、様々なかしこまった本も読まないといけないのですが…物語ものが一番読んでいて楽しいです」
「ですよね!その他にも…あ、すみません!話し込んでしまって…」
「いえ、私から声をかけたので謝る必要はないですよ…それよりもっとお話を願いたいのですが…只今、お暇でしょうか?」
「あ、えっと…」
宿題まだ残ってるけど少しくらいならいいか…
「暇です!」
「良かった…えっとここでは何ですから場所移しましょうか?」
「あ、はい!」
何だろう?この人の笑顔って誰かに似ているような…
不意に笑う男性に知り合いの誰かと重なり不思議に思いつつも誘導されるがままに少し離れた窓際のテーブル席にて腰を下ろす。
「えっとまず自己紹介ですよね…私は 高坂椿といいます。仕事は、あるデザイナーの秘書をしています」
「あ、えっと…私は美嶋 星那といいます。高校三年生です」
「学生さんでしたか…すみません、少し大人っぽくみえたので」
「あははっ…よく言われます」
申し訳なさそうに謝る高坂さんに苦笑いしつつ先程言っていた秘書という言葉が気になった。
「高坂さんこそ、デザイナーの秘書さんって凄いですね!休みとか中々取れないんじゃないですか?」
「まぁ…社長というか父が凄い人なのでそれなりに忙しいのですが、三日後に父主催の式典があってその前に休みをと今日だけ休みが取れたので大好きな本を読みに図書館にと…」
「なるほど…式典も気になるんですが高坂さんのお父さんっていったいどういう人なんですか?」
「全国の美術館をいくつも所有するオーナーであり、自身もデザイナーとして世界で活躍する 高坂道天という人です」
「高坂 道天…?聞いた事あるようなないような…?」
「一応有名な人なので名前ぐらいは聞き覚えはあると思います」
「う~ん…でもそんな凄い人がお父さんなんて凄いですね!」
「まぁ…偉大な父を持つと子供への重圧は凄いですけどね」
少し苦しそうに言う高坂の顔を見ながらそれ程の重圧の中この人は生きてるのだと感じた。
「あ、えっと…そんな凄いお父さんの式典ってどういう事をするんですか?」
「後継者の表明式です」
「後継者?それって…」
「私です…本当は兄がやるはずの役目なのですが、その兄が自ら辞退して姿を消したので代わりに私が後を継ぐことになったんです」
「そうなんですか…ん?ご兄弟がいらっしゃるんですか?」
「三個上の兄が一人と一個上の姉が一人います」
「へ~…お姉さんまでいるんですかぁ…」
「姉は後継者にはなれないので父がいくつも所有する美術館の管理として館長をしています」
「お姉さんも凄いなんて…何だか私とは身分違いな気がしてきました」
「ははっ…そんなに畏まらなくても大丈夫ですよ?私もこうやって公共の図書館に来る普通の人なので」
「そうですね…高坂さんは高坂ですもんね!」
笑顔でそういうと一瞬驚いた顔をした高坂は釣られるように小さく笑顔を零した。
「ふふっ…美嶋さんは変わってますね」
「そうですか?私も暑いからって図書館に宿題をしに来る普通の高校生ですよ」
「あ、だからですか…頬に鉛筆の跡があるのは」
「へ?鉛筆の跡?」
あ!そういえばうつ伏せになった時、下にノートひいてたんだっけ?
慌てて頬を摩っていると高坂さんの左手が頬に伸び親指で拭う。
「少し動かないで…」
「っ…」
至近距離で覗き込みながら拭う高坂さんの顔は眼鏡越しでも分かるほどのイケメンであり息をするのも忘れるくらい見惚れてしまった。
「…よし、取れた」
そう言うと頬に触れていた手や至近距離にいた体を離すと小さく笑った。
あ、やっぱりこの顔知ってる…
いつも見慣れたような高坂の笑顔に呆然と見つめていると、高坂の口から不意に図星をつくような事を口にした。
「ところで、宿題は終わったんですか?」
「え?宿題?…あ!まだ終わってなかったんだった!やばいっ!早く終わらせなきゃ…!」
慌ててリュックから無理矢理押し込めた宿題を取り出しテーブルに広げる。
「よかったらですが…手伝いましょうか?宿題ですのでアドバイスぐらいしかできませんが…」
ドンッ!
「是非!お願いしますっ!」
振り向きざまにテーブルに肘を打ち付けるも高坂の神のような言葉に瞳を輝かせながら拝むように手を握った。
「ははっ…任せてください」
神だ!神が舞い降りたァァァ!!
これで早く宿題が終わると思うと嬉しさでいっぱいになりながらも、この後予想とは違った高坂のスパルタ指導のせいで地獄を見るのだった。
だからといって有意義な時間を過ごせるかといったら間違いで、図書館に行くと隆二さんに言ったら既に宿題を終わらせた豹を見習って図書館で宿題を終わらせるようにと言われエアコンの中でだらけるのではなく真面目に宿題に励んでいた。
「はぁ…ここ二時間休み無しでもう集中力切れ」
テーブルの上に広げられたノートにうつ伏せになりながら小さく唸る。
「…よし!本巡りしよ!」
息抜きと称して宿題を一時中断しリュックに押し入れ立ち上がると面白そうな本を探すため図書館内を歩く。
ん~…面白そうな本…面白そうな本…
「…あ!これ新刊の『クロネコ秘書』だ!」
少し高い位置にある本に手を伸ばすと背後から誰かの手が伸び取ろうとした本を取られる。
「あ…」
「…これどうぞ」
男性の声に振り返ると本を手にしたグレーのスーツ姿の眼鏡をかけた黒い短髪の男性がいた。
「あ、えっと…いいんですか?」
「手を伸ばしてたのを助けようとしただけなので…」
そう言われ本を受け取ると男性は眼鏡を押し上げ再度口を開く。
「そのシリーズ好きなんですか?」
「はい!クロネコの秘書の仕事がかっこよくてストーリーが精密で気に入ってて…こういった物語ものって妙にワクワクするんですよね」
「分かります!私もクロネコシリーズ全てご愛読してまして兄弟の活躍秘話が気に入ってるんです!仕事上、様々なかしこまった本も読まないといけないのですが…物語ものが一番読んでいて楽しいです」
「ですよね!その他にも…あ、すみません!話し込んでしまって…」
「いえ、私から声をかけたので謝る必要はないですよ…それよりもっとお話を願いたいのですが…只今、お暇でしょうか?」
「あ、えっと…」
宿題まだ残ってるけど少しくらいならいいか…
「暇です!」
「良かった…えっとここでは何ですから場所移しましょうか?」
「あ、はい!」
何だろう?この人の笑顔って誰かに似ているような…
不意に笑う男性に知り合いの誰かと重なり不思議に思いつつも誘導されるがままに少し離れた窓際のテーブル席にて腰を下ろす。
「えっとまず自己紹介ですよね…私は 高坂椿といいます。仕事は、あるデザイナーの秘書をしています」
「あ、えっと…私は美嶋 星那といいます。高校三年生です」
「学生さんでしたか…すみません、少し大人っぽくみえたので」
「あははっ…よく言われます」
申し訳なさそうに謝る高坂さんに苦笑いしつつ先程言っていた秘書という言葉が気になった。
「高坂さんこそ、デザイナーの秘書さんって凄いですね!休みとか中々取れないんじゃないですか?」
「まぁ…社長というか父が凄い人なのでそれなりに忙しいのですが、三日後に父主催の式典があってその前に休みをと今日だけ休みが取れたので大好きな本を読みに図書館にと…」
「なるほど…式典も気になるんですが高坂さんのお父さんっていったいどういう人なんですか?」
「全国の美術館をいくつも所有するオーナーであり、自身もデザイナーとして世界で活躍する 高坂道天という人です」
「高坂 道天…?聞いた事あるようなないような…?」
「一応有名な人なので名前ぐらいは聞き覚えはあると思います」
「う~ん…でもそんな凄い人がお父さんなんて凄いですね!」
「まぁ…偉大な父を持つと子供への重圧は凄いですけどね」
少し苦しそうに言う高坂の顔を見ながらそれ程の重圧の中この人は生きてるのだと感じた。
「あ、えっと…そんな凄いお父さんの式典ってどういう事をするんですか?」
「後継者の表明式です」
「後継者?それって…」
「私です…本当は兄がやるはずの役目なのですが、その兄が自ら辞退して姿を消したので代わりに私が後を継ぐことになったんです」
「そうなんですか…ん?ご兄弟がいらっしゃるんですか?」
「三個上の兄が一人と一個上の姉が一人います」
「へ~…お姉さんまでいるんですかぁ…」
「姉は後継者にはなれないので父がいくつも所有する美術館の管理として館長をしています」
「お姉さんも凄いなんて…何だか私とは身分違いな気がしてきました」
「ははっ…そんなに畏まらなくても大丈夫ですよ?私もこうやって公共の図書館に来る普通の人なので」
「そうですね…高坂さんは高坂ですもんね!」
笑顔でそういうと一瞬驚いた顔をした高坂は釣られるように小さく笑顔を零した。
「ふふっ…美嶋さんは変わってますね」
「そうですか?私も暑いからって図書館に宿題をしに来る普通の高校生ですよ」
「あ、だからですか…頬に鉛筆の跡があるのは」
「へ?鉛筆の跡?」
あ!そういえばうつ伏せになった時、下にノートひいてたんだっけ?
慌てて頬を摩っていると高坂さんの左手が頬に伸び親指で拭う。
「少し動かないで…」
「っ…」
至近距離で覗き込みながら拭う高坂さんの顔は眼鏡越しでも分かるほどのイケメンであり息をするのも忘れるくらい見惚れてしまった。
「…よし、取れた」
そう言うと頬に触れていた手や至近距離にいた体を離すと小さく笑った。
あ、やっぱりこの顔知ってる…
いつも見慣れたような高坂の笑顔に呆然と見つめていると、高坂の口から不意に図星をつくような事を口にした。
「ところで、宿題は終わったんですか?」
「え?宿題?…あ!まだ終わってなかったんだった!やばいっ!早く終わらせなきゃ…!」
慌ててリュックから無理矢理押し込めた宿題を取り出しテーブルに広げる。
「よかったらですが…手伝いましょうか?宿題ですのでアドバイスぐらいしかできませんが…」
ドンッ!
「是非!お願いしますっ!」
振り向きざまにテーブルに肘を打ち付けるも高坂の神のような言葉に瞳を輝かせながら拝むように手を握った。
「ははっ…任せてください」
神だ!神が舞い降りたァァァ!!
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