男装ホストは未来を見る

Shell

文字の大きさ
89 / 108

残像

しおりを挟む
次の日、大河さんと待ち合わせしていた近所の交差点に行き合流すると大河さんの車で紅河大学に向かった。

「あの…私以外の見学者っているんですか?」

運転席に座る大河に問いかけると少し暗い顔をしながらも口を開いた。

「実は…研究所の見学する人って早々な変わり者しかいなくて中々見学に来てくれる人はいないの…それに、急な事もあったから今日は美嶋さん一人なのよ」

「そうなんですか…」

何だか一人だと緊張するなぁ…

「気を落とさないでね?美嶋さん一人でもこちらとしては嬉しい事だから色々な研究に楽しんでくれると嬉しいわ」

「全然そんな事は…ただ一人だと緊張しちゃうなって思っただけですから。逆にどんな研究をしているのか気になりますし…」

「良かった…研究は非科学的な物から物理的なものまでしているんだけど、私が今担当しているのは動物の生態の研究で様々な動物のいい所の生態を遺伝子として汲み取っていつかは人間に組み込めないかという研究をしているの…」

「よく分からないけど凄そうです…」

「ふふっ…でも研究ってだけでワクワクするでしょ?」

「それは私もそう思います!実験って新しい発見とか体験をすると病みつきになるんですよね!」

「ふふっ…美嶋さんは柴咲教授と同じ事を言うのね」

「え?」

「柴咲教授もね、美嶋さんみたいに実験は新しい発見と体験をする事で夢中になれるんだよって口癖なのよ」 

「そうなんですか…」

柴咲教授も同じような事をいうなんて…何だか親近感が湧くなぁ…

話に夢中になっているといつの間にか車は紅河大学の前の駐車場に着き車を降り歩道橋を挟んだ目の前の紅河大学に向かった。

ここが紅河大学…

大学というだけあって年季のあるレンガ構造の建物でありそこに通う大学生が行き交っていた。

「美嶋さん!こっちよ!」

「あ、は…い……」

え…?これ何だか見た事あるような…

紅河大学と彫られた石に入口にあるペガサスの銅像に最近見ていた夢がフラッシュバックする。

『…助けてっ!…誰かっ…助けて!』

これはいつも見る暗いどこかの部屋で幼少期の私が壁を叩く夢…

ズキッ…

「いっ…」

「美嶋さん!?ちょっ…大丈夫!?」

校門前で蹲る星那の様子に、大河は慌てて駆け寄り心配する声をあげた。

『…X1目を開けろ』

誰かの声が脳内に響き目を覚ますとそこには無数の機械と分厚いガラス窓越しに白衣を着た人達がこちらを見ていた。

『一時間そのままでいろ…』

『…はい』

その瞬間、脳内から電気のような壮絶を絶する痛みが流れ体をくねらせ両手両足をばたつかせるが固定された体はただ痛みに耐える人形のようなものだった。

『うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!ぎゃあああああああああっ!!』

痛みにより叫び声をあげる幼い幼少期の自分の姿に頭の痛みは更に強くなりその瞬間、意識が飛びその場に倒れた。

バタンッ…

「美嶋さんっ!美嶋さん!!…」

 *

「…せなが倒れたって本当なのかっ!?」

病院から連絡を受けた蓮達三人は急いで病院に向かうと星那の寝ている病室に着き傍で心配そうな顔をする大河を見つけた。

「すみません!私のせいなんです…私が美嶋さんを大学に案内しようとしたら校門前で急に倒れて」

「事情は分かった…とにかく、せなは大丈夫なんだな?」

「はい…お医者さんが言うにはただの熱中症だろうと」

「そうか…良かった」

コンコン…

「美嶋 星那さんの身内の方ですか?」

振り返ると白衣姿のお医者さんらしき人物が入口に立っていた。

「身内というか…まぁ、身内みたいなものですが」

「でしたら、身内の方のみで少しお話が…」

その言葉に不安気な表情のままお医者さんについて行くと誰もいない個室に通され椅子に腰掛ける。

「あの…話って?」

「実は、美嶋さんの症状は熱中症ではなく過去の何らかのトラウマからの発作だと思われます…」

「トラウマからの発作…?」

「美嶋さんのご両親は今どちらに…?」

「それは俺達もよく聞いてないので分からないのですが…父親が借金して三年前からずっと一人だったとは聞いてます」

「そうですか…まだ高校生だと言う事も驚きですが、女性一人で色々と苦労してきたんでしょうね」

「は…?女性?」

「如何しましたか?」

「い、いえ…あのせなの性別って」

「正真正銘、女性ですけど…何か?」

「い、いえ!別になんでもないですっ!」

慌てて取り繕うも星那が女である事実に唯一知らなかった蓮だけが混乱していた。

「それで先生…トラウマっていったい?」

混乱する蓮を他所に先程の話を問いかける。

「恐らくですが、幼少期にご両親か誰かに身体的精神的にも何らかのトラウマになるような悲痛な体験をした事により発作として今回倒れたと思われます…」

「悲痛な体験…」

星那がそんな体験をしたという話は誰一人知らず、ただただ先生の話を呑み込むのだった。














しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

兄様達の愛が止まりません!

恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。 そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。 屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。 やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。 無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。 叔父の家には二人の兄がいた。 そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end** ◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です! https://estar.jp/novels/26513389

処理中です...