男装ホストは未来を見る

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残像

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次の日、大河さんと待ち合わせしていた近所の交差点に行き合流すると大河さんの車で紅河大学に向かった。

「あの…私以外の見学者っているんですか?」

運転席に座る大河に問いかけると少し暗い顔をしながらも口を開いた。

「実は…研究所の見学する人って早々な変わり者しかいなくて中々見学に来てくれる人はいないの…それに、急な事もあったから今日は美嶋さん一人なのよ」

「そうなんですか…」

何だか一人だと緊張するなぁ…

「気を落とさないでね?美嶋さん一人でもこちらとしては嬉しい事だから色々な研究に楽しんでくれると嬉しいわ」

「全然そんな事は…ただ一人だと緊張しちゃうなって思っただけですから。逆にどんな研究をしているのか気になりますし…」

「良かった…研究は非科学的な物から物理的なものまでしているんだけど、私が今担当しているのは動物の生態の研究で様々な動物のいい所の生態を遺伝子として汲み取っていつかは人間に組み込めないかという研究をしているの…」

「よく分からないけど凄そうです…」

「ふふっ…でも研究ってだけでワクワクするでしょ?」

「それは私もそう思います!実験って新しい発見とか体験をすると病みつきになるんですよね!」

「ふふっ…美嶋さんは柴咲教授と同じ事を言うのね」

「え?」

「柴咲教授もね、美嶋さんみたいに実験は新しい発見と体験をする事で夢中になれるんだよって口癖なのよ」 

「そうなんですか…」

柴咲教授も同じような事をいうなんて…何だか親近感が湧くなぁ…

話に夢中になっているといつの間にか車は紅河大学の前の駐車場に着き車を降り歩道橋を挟んだ目の前の紅河大学に向かった。

ここが紅河大学…

大学というだけあって年季のあるレンガ構造の建物でありそこに通う大学生が行き交っていた。

「美嶋さん!こっちよ!」

「あ、は…い……」

え…?これ何だか見た事あるような…

紅河大学と彫られた石に入口にあるペガサスの銅像に最近見ていた夢がフラッシュバックする。

『…助けてっ!…誰かっ…助けて!』

これはいつも見る暗いどこかの部屋で幼少期の私が壁を叩く夢…

ズキッ…

「いっ…」

「美嶋さん!?ちょっ…大丈夫!?」

校門前で蹲る星那の様子に、大河は慌てて駆け寄り心配する声をあげた。

『…X1目を開けろ』

誰かの声が脳内に響き目を覚ますとそこには無数の機械と分厚いガラス窓越しに白衣を着た人達がこちらを見ていた。

『一時間そのままでいろ…』

『…はい』

その瞬間、脳内から電気のような壮絶を絶する痛みが流れ体をくねらせ両手両足をばたつかせるが固定された体はただ痛みに耐える人形のようなものだった。

『うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!ぎゃあああああああああっ!!』

痛みにより叫び声をあげる幼い幼少期の自分の姿に頭の痛みは更に強くなりその瞬間、意識が飛びその場に倒れた。

バタンッ…

「美嶋さんっ!美嶋さん!!…」

 *

「…せなが倒れたって本当なのかっ!?」

病院から連絡を受けた蓮達三人は急いで病院に向かうと星那の寝ている病室に着き傍で心配そうな顔をする大河を見つけた。

「すみません!私のせいなんです…私が美嶋さんを大学に案内しようとしたら校門前で急に倒れて」

「事情は分かった…とにかく、せなは大丈夫なんだな?」

「はい…お医者さんが言うにはただの熱中症だろうと」

「そうか…良かった」

コンコン…

「美嶋 星那さんの身内の方ですか?」

振り返ると白衣姿のお医者さんらしき人物が入口に立っていた。

「身内というか…まぁ、身内みたいなものですが」

「でしたら、身内の方のみで少しお話が…」

その言葉に不安気な表情のままお医者さんについて行くと誰もいない個室に通され椅子に腰掛ける。

「あの…話って?」

「実は、美嶋さんの症状は熱中症ではなく過去の何らかのトラウマからの発作だと思われます…」

「トラウマからの発作…?」

「美嶋さんのご両親は今どちらに…?」

「それは俺達もよく聞いてないので分からないのですが…父親が借金して三年前からずっと一人だったとは聞いてます」

「そうですか…まだ高校生だと言う事も驚きですが、女性一人で色々と苦労してきたんでしょうね」

「は…?女性?」

「如何しましたか?」

「い、いえ…あのせなの性別って」

「正真正銘、女性ですけど…何か?」

「い、いえ!別になんでもないですっ!」

慌てて取り繕うも星那が女である事実に唯一知らなかった蓮だけが混乱していた。

「それで先生…トラウマっていったい?」

混乱する蓮を他所に先程の話を問いかける。

「恐らくですが、幼少期にご両親か誰かに身体的精神的にも何らかのトラウマになるような悲痛な体験をした事により発作として今回倒れたと思われます…」

「悲痛な体験…」

星那がそんな体験をしたという話は誰一人知らず、ただただ先生の話を呑み込むのだった。














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