90 / 108
トラウマ
しおりを挟む
…痛い…苦しい…私は誰?
『星那…貴方は私の愛しい子』
暖かい声…どこか懐かしい声がする…
その声に導かれるようにゆっくりと瞼を開けるとそこには心配そう手を握る大河さんと心配そうな顔で覗き込む蓮さん達がいた。
ガタッ
「せな!?大丈夫か!?気分はどうだ?悪くないか?」
急に畳み掛ける隆二さんの声に小さく苦笑いを浮かべながら頷く。
「…大丈夫です」
「そうか…」
その言葉に安堵の言葉を漏らし椅子に座り直す。
「…せな」
「蓮さん…?」
すると腕を組んだまま俯いていた蓮が顔を上げ半ば怒っているかのような表情で問いかける。
「俺に言わなきゃいけない事はないのか…?」
「言わなきゃいけない事?えっと…心配かけてすみませんでした」
「馬鹿!そんな事じゃない!もっと他にあるだろ?」
「他に言わなきゃいけない事?ん~…ガリガリ君無くなった事とか?」
「はぁ…本当は女だと言う事だ」
「ああ…バレちゃたんですね?蓮さんと隆二さんにはいつか言おうと思ってたんですが…」
「お前なぁ…そんな飄々といいやがって!ずっと騙されていた俺達の身にもなれよ!」
「…俺は知ってたけど」
すると間に割って小さく呟く豹にすかさず蓮が指摘する。
「豹も豹だ!何で知ってて黙ってたんだ!」
「はぁ…」
あからさま面倒くさそうな豹に隣に座っていた隆二は内心自分も知っていた事に申し訳なくなった。
蓮には申し訳ないが星那の事を思うとな…
ずっと隠していた理由は分からないがそれなりの理由があるのだろうと思い口に出さずにいた隆二は再度星那の方に向き直った。
「蓮さん、理由は私から説明しますから落ち着いてっ…!」
「ああ…そうだな、星那本人から聞かないとな」
そう言うと怒りを鎮め星那を見つめる一同に重々しく口を開く。
「その…三年前、父のせいで借金が出来てお金に困っててまとまったお給料が出るバイトを探してたんですけど力仕事のバイトは女の力じゃ出来なくて片っ端から探し回ってたら偶然ホストの『Star』を見つけて…水商売ならキャバクラがあったけど当時は男性に触られるのが無理だったので迷った末に男と偽ってホストに…でもバレたら即クビだから借金もまだあるし、どうしても言えなくて…」
「理由は分かった…そうだな、確かに女をホストとして店に置く訳にはいかないな」
「で、でも!私、体を売るような事はせず色だけでホスト出来ますし!だからその…クビにしないでください!お願いしますっ!」
深々と頭を下げ懇願すると慌てて蓮の声が入った。
「せな、頭を上げろ!別にまだクビにするとは言ってないだろ?」
「へ?」
「はぁ…前にも言ったようにせなは『Star』のナンバースリーだ…そんなせなをいきなりクビにしたらどうなる?」
「えっと…」
「私が美嶋さんをホストとして好きだったら悲しみます…」
言い淀む星那の代わりに答えたのは隣で黙って聞いていた大河だった。
「そういう事だ、せな…俺達は夜の女性を第一に考え仕事をするホストだ。だからこそ、必要とされているせなをいきなり辞めさせるわけにはいかない…だが、出来るだけ俺達もサポートはするがお客様やその他の同僚に気づかれそうになったら即クビだからな?」
「蓮さん…ありがとうございますっ!」
こんな優しい待遇をくれる蓮さんに心底感謝の気持ちでいっぱいになり涙を拭った。
「せな、今回の事で気になる事があるんだが…聞いてもいいか?」
ずっと気がかりだった事を隆二は恐る恐る問いかける。
「はい?何でしょうか?」
「幼少期の時に何か…トラウマになるような事を受けてはいないか?」
「トラウマですか…?ん~…幼少期の記憶ってほとんどないから分からないんですよね」
「そうか…悪いな?妙な質問をして」
「いえ…」
もしかしたら、せな自身幼少期のトラウマを無意識に記憶の中から消してるのかもしれないな…
隆二はトラウマにより倒れたというのに明るい表情の星那に自分なりの推測を立てた。
『星那…貴方は私の愛しい子』
暖かい声…どこか懐かしい声がする…
その声に導かれるようにゆっくりと瞼を開けるとそこには心配そう手を握る大河さんと心配そうな顔で覗き込む蓮さん達がいた。
ガタッ
「せな!?大丈夫か!?気分はどうだ?悪くないか?」
急に畳み掛ける隆二さんの声に小さく苦笑いを浮かべながら頷く。
「…大丈夫です」
「そうか…」
その言葉に安堵の言葉を漏らし椅子に座り直す。
「…せな」
「蓮さん…?」
すると腕を組んだまま俯いていた蓮が顔を上げ半ば怒っているかのような表情で問いかける。
「俺に言わなきゃいけない事はないのか…?」
「言わなきゃいけない事?えっと…心配かけてすみませんでした」
「馬鹿!そんな事じゃない!もっと他にあるだろ?」
「他に言わなきゃいけない事?ん~…ガリガリ君無くなった事とか?」
「はぁ…本当は女だと言う事だ」
「ああ…バレちゃたんですね?蓮さんと隆二さんにはいつか言おうと思ってたんですが…」
「お前なぁ…そんな飄々といいやがって!ずっと騙されていた俺達の身にもなれよ!」
「…俺は知ってたけど」
すると間に割って小さく呟く豹にすかさず蓮が指摘する。
「豹も豹だ!何で知ってて黙ってたんだ!」
「はぁ…」
あからさま面倒くさそうな豹に隣に座っていた隆二は内心自分も知っていた事に申し訳なくなった。
蓮には申し訳ないが星那の事を思うとな…
ずっと隠していた理由は分からないがそれなりの理由があるのだろうと思い口に出さずにいた隆二は再度星那の方に向き直った。
「蓮さん、理由は私から説明しますから落ち着いてっ…!」
「ああ…そうだな、星那本人から聞かないとな」
そう言うと怒りを鎮め星那を見つめる一同に重々しく口を開く。
「その…三年前、父のせいで借金が出来てお金に困っててまとまったお給料が出るバイトを探してたんですけど力仕事のバイトは女の力じゃ出来なくて片っ端から探し回ってたら偶然ホストの『Star』を見つけて…水商売ならキャバクラがあったけど当時は男性に触られるのが無理だったので迷った末に男と偽ってホストに…でもバレたら即クビだから借金もまだあるし、どうしても言えなくて…」
「理由は分かった…そうだな、確かに女をホストとして店に置く訳にはいかないな」
「で、でも!私、体を売るような事はせず色だけでホスト出来ますし!だからその…クビにしないでください!お願いしますっ!」
深々と頭を下げ懇願すると慌てて蓮の声が入った。
「せな、頭を上げろ!別にまだクビにするとは言ってないだろ?」
「へ?」
「はぁ…前にも言ったようにせなは『Star』のナンバースリーだ…そんなせなをいきなりクビにしたらどうなる?」
「えっと…」
「私が美嶋さんをホストとして好きだったら悲しみます…」
言い淀む星那の代わりに答えたのは隣で黙って聞いていた大河だった。
「そういう事だ、せな…俺達は夜の女性を第一に考え仕事をするホストだ。だからこそ、必要とされているせなをいきなり辞めさせるわけにはいかない…だが、出来るだけ俺達もサポートはするがお客様やその他の同僚に気づかれそうになったら即クビだからな?」
「蓮さん…ありがとうございますっ!」
こんな優しい待遇をくれる蓮さんに心底感謝の気持ちでいっぱいになり涙を拭った。
「せな、今回の事で気になる事があるんだが…聞いてもいいか?」
ずっと気がかりだった事を隆二は恐る恐る問いかける。
「はい?何でしょうか?」
「幼少期の時に何か…トラウマになるような事を受けてはいないか?」
「トラウマですか…?ん~…幼少期の記憶ってほとんどないから分からないんですよね」
「そうか…悪いな?妙な質問をして」
「いえ…」
もしかしたら、せな自身幼少期のトラウマを無意識に記憶の中から消してるのかもしれないな…
隆二はトラウマにより倒れたというのに明るい表情の星那に自分なりの推測を立てた。
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!
ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。
※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
兄様達の愛が止まりません!
桜
恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。
そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。
屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。
やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。
無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。
叔父の家には二人の兄がいた。
そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です!
https://estar.jp/novels/26513389
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる