男装ホストは未来を見る

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別荘

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次の日、病院から退院し蓮さんの意向で退院祝いを称し椿さんの手筈の元で蓮さんの幼少期時代によく行ったという山付近の大きな別荘に二泊三日で泊まる事になった。

「蓮さん、こんな広い別荘に来てたんですか!?凄すぎます…」

木造で出来たログハウスに広すぎるウッドデッキに中には暖炉付きの広いリビングに二階建ての素敵な別荘だった。

「せなの部屋は二階の一番右側の部屋だからな?間違えるなよ?」

「子供じゃないんですから間違えませんよ!」

頬を膨らませながら反抗する星那をからかいつつ車に積んでいた荷物を取り出し家の中へと運ぶ。

「せな、今日は皆で温泉でも入りに行かないか?」

「え!?温泉!?行きたい!入りたい!」

隆二の予想通り温泉に食い付いた星那に微笑む。

「ははっ!その前にまずは昼ご飯だな?」

「昼ご飯かぁ…車の窓から街の景色見えたけど蕎麦とお魚とか和食が美味しそうだったなぁ…」

「じゃ、街の中歩きながら決めるか?」

「はい!街巡り賛成です!豹も行くよね?」

「暑いの嫌」

「豹も行くそうです!」

「おいっ!」

「何よ~?昼ご飯食べたくないの~?」

ほれほれと街のチラシを目の前でヒラヒラさせる星那にイラつきながらも口を閉ざす。

「っ…」

「じゃ、豹も含めて皆で行こうな?」

星那の頭に手をやり笑顔で髪を撫でる。

「はいっ!」

 *

荷物を別荘に置き貴重品のみを手に街に出ると古風な店が並ぶ中で観光客が行き交っていた。

「うわぁ…オシャレなお店や古風なお店が並んでて素敵ですね!」

「ここは山の近くだから趣のある店が多いんだ」

「なるほど…」

蓮の説明に納得しつつキョロキョロと辺りを見渡しながら歩いていく。

「せな、何か買いたいものがあるなら買ってやるから何でも言え」

蓮さんの言葉に辺りを見渡すと肉まんを売っているお店を発見した。

「肉まん食べたいです!」

「は?真夏なのにそんな熱いもの食べてどうすんだよ?」

「蓮さん、何でも買ってあげるって言ったじゃないですかぁ~!」

「お前な、まだ昼ご飯前でよくそんな…」

「まぁまぁ、兄代わりの俺達が可愛い妹の我儘聞いてあげなくてどうする?」

隆二の言葉に言いかけた言葉を呑み込む。

「はぁ…分かった」

「やった!蓮さん、ありがとうございますっ!」

肉まん一個を星那に買ってあげるとさっそく熱々の肉まんを嬉しそうに頬ばっていた。

「おいひぃ…!」

「豹も食べるか?」

「暑い中で熱いの食べるなんて馬鹿みたいなので結構です」

「なっ…美味しいものはいつ何時も美味しんだから仕方ないでしょ!むぅ…」

「ほら馬鹿になった」

「なっ…」

豹に掴みかかろうとする星那をすかさず蓮が額を押し止める。

「こら、喧嘩するな」

「むぅ…だって豹が!」

星那の言葉に素知らぬ顔をする豹に苦笑いを浮かべつつ星那の口元に手を伸ばす。

「ほら、肉まんの皮ついてる…」

「っ…ありが…とう…ございます」

照れながらお礼を言う星那を至近距離で視線が合いふと撫でていた手が止まる。

改めて女の姿の星那を見ると可愛いな…

「れ、蓮さん…?」

戸惑う星那の様子にすかさず隆二の声がかかった。

「おい!星那、蓮こっち来てみろ!可愛い小物が売ってるぞ?」

「え!?見てみたい…!」

星那は固まる蓮の手を外し隆二のいる方へと向かった。

…はっ!何でせなに見とれてるんだ!?俺は!?

不覚とばかりに気を取り直し星那達のいる雑貨屋へと入った。

 *

「うわぁ…可愛い!」

和の小物が並ぶ店内に入ると可愛い和柄のハンカチやがま口財布などがあり星那は小物を見るなり目を輝かせていた。

「あ!これ可愛い…!」

入口付近に置かれた桃色の桜のネックレスが目につき手に取る。

「せな、それが欲しいのか?」

いつの間にか隣に来ていた隆二に問われ迷った末に首を横に振る。

「ううん、高いしやめときます…」

「我慢する事ないぞ?欲しいなら俺が買ってやるから」

「え?でも…」

隆二の甘い言葉に言い淀んでいると隆二が更に甘い言葉を投げかける。

「可愛い妹の我儘を叶えたいと思う兄の願いを聞いてはくれないか?」

「うっ…じゃあ…」

辺りを見渡すと桜の形をした赤い簪が目に入った。

「あれ欲しいです!」

簪売り場に駆け寄り桜の形をした赤い簪を手に取る。

値段も安い方だし何より可愛い…!

「どれどれ…せなに似合いそうだな?」

「そ、そうですか?」

至近距離で顔を覗き込む隆二にドキッとしつつ問いかける。

「じゃあ…試しにお兄さんが付けてあげよう」

隆二は簪を取ると星那の下ろしている長い髪を束ねお団子にし簪をさす。

「そこの手鏡で見てみな?」

隆二の言われた通りに簪と一緒に並んでいる手鏡を取り覗いてみるとまとめられた髪に刺さった桜の簪が揺れその背後には顔を見ながらで微笑む隆二の姿があった。

「言った通り似合うだろ…?」

「っ…うん!」

隆二の言葉に照れながらも頷き、結果桜の簪は隆二によりお買い上げとなった。

「隆二、お前…」

その様子を見ていた蓮が隆二を引き止め苦い顔で問いかける。

「兄として…いや、ただの男として気があるのはお前だけじゃないって事だ」

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