男装ホストは未来を見る

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誕生日会・後編

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夕刻だというのに夏終わりはまだ日が落ちるのが遅く赤色の夕焼けがオレンジ色の空と混合し色鮮やかな空を作り出していた。

「ひのちゃんも寧々ちゃんもついでにまひるも家に来るなんて珍しいね?」

「え、えっと…一度行ってみたいと思ってまして…」

「わ、私もです!」

「俺はケーキを食べ…うっ!?」

「ん?ケーキ?」

「な、何でもないですよ~!まひる先輩は、ケーキみたいな空だと言ったんです!」

「ケーキみたいな空って変なの~ふふっ」

ひのちゃんの解釈に面白くて笑っているといつの間にか自宅兼蓮さん宅に着いていた。

蓮さんも隆二さんも用事で居ないって言ってたから大丈夫だよね…?

ひのちゃん達にはシェアハウスをしている事など言っていないので少し不安が募るが可愛い後輩達の願いを無下に出るわけもなく渋々家に通す事にした。

どうか誰もいませんように…っ!

意を決してドアノブに手をかけ開けた瞬間、大きな音が響き目を開くと目の前に居るはずもない蓮さん・隆二さん・明・豹・ベリーさん・井川さん・理沙・椿さん・菫さんがいた。

「皆どうして…?」

「星那!お誕生日おめでとうっ!!」

「え…いったいどういう事!?」

勢いよく飛びついてきた理沙に戸惑いながら皆の顔を見渡すと何故か皆予想通りというような顔をしていた。

「せな、お前今日誕生日だろ?」

蓮さんに問いかけられ思考を巡らせると自分の誕生日が今日だという事を思い出した。

「へ?…あっ!私、今日誕生日だった!?」

「もうっ!自分の誕生日忘れてどうするのよ!せなちゃん」

「あはは…忙しくてつい…」

ベリーさんにまじまれ苦笑いを浮かべた。

「とにかく中に入りなさいな」

「そうですね、皆も私の家ではないけど入って入って」

「はい!お言葉に甘えて入りさせてもらいます!」

「星那先輩のお部屋も後で見せてくださいね!」

「うっ、それはちょっと…」

キラキラした瞳で返事をするひのちゃんと寧々ちゃんに引き攣り気味に笑みを返し話を変えるようにまひるへと向き直る。

「まひるは、えっと…豹の部屋でも見ていく?」

「おい!俺を巻き込むな」

「あははっ!冗談だって~!」

巻き込まれまいと咄嗟に突っ込む豹にあっという間に皆の仲の空気が和らぎ部屋に入るなり賑やかな誕生日パーティーが始まった。

「せな、これ誕生日プレゼント」

真っ先にプレゼントを差し出してきた隆二さんに少し緊張しながらも水色の大きな包みを受け取る。

「開けてみてもいいですか…?」

「どうぞ、プリンセスのご自由に」

「ふふ…はいっ!」

童話に出てくるような白馬の王子様のように胸に手を当て笑みを向ける隆二さんに笑みが零れながらも包みを開けるとそこには足のマッサージ機があった。

「うわぁ~~!?私が欲しかったやつだ!嬉しい…っ!!」

「ホストの仕事や学業で足が痛いって前に言ってたからね。少しでも楽になればいいなって…それに、レディの願いを叶えるのは当然だからね」

「ふふっ、さすがホストナンバーツーの隆二さんですね」

徹底してどんな時も女性の要望を叶えるホストの鏡と言っても過言ではない隆二さんに尊敬の眼差しで見る反面、本当に欲しかったマッサージ機に嬉しさが顔に出る。

これでホストの仕事も学業も益々頑張れるわ!

「せな、ナンバーワンの俺を忘れてないか?」

すると、隆二さんに対抗してなのか嫉妬するような言葉を掛ける蓮さんにきょとんと首を傾げる。

「ほら、俺からもせなにプレゼントだ」

蓮さんが差し出してきたのは鎖と共に小さな星が散りばめられたピン型のブローチだった。

「か、可愛い…っ!!」

「だろ?ホストの時でも付けられるようにブローチにしてみたんだが、気に入ったか?」

「はい!それはもう!!」

可愛いし男装して付けてても違和感ないし最高!前からずっとスーツに何かアクセサリーでも付けてみたい思ってたんだよね…嬉しいっ!

「なら、良かった…大切にしろよ?」

「はい!ありがとうございます、蓮さん!」

「そこは大好きでも良かったんだがな…」

「はい?何か言いました?」

「ん?いーや、こっちの話」

ん?何言ったんだろ?

あまりに小さな声だったので聞き取れなかった事に少し残念な気もするが今はプレゼントの方が大事だ。

可愛いな~…

「せ~な~…ちゃんっ!!」

「うひゃっ!?」

突然、背後から抱きつかれ身の毛もよだつような声が耳元に響き硬直した。

「私からもプレゼントがあるの…貰ってくれる?」

「い…嫌ですっ!絶対嫌ですっ!!」

ベリーさんの背筋が凍るような囁きに堪らず直ぐに否定すると背後から抱きつかれたせいかそのまま元の獣のような圧倒的力で引きずられた。

「嫌はなしよ♪」

「い~や~だぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

無残にも誕生日だというのに誰も助けてはくれず、むしろベリーさんに賛同して手を振られる始末である。

ナニコレ?誕生日ってもっと幸せなはずだよね?地獄じゃないよね?

頭の中では逃げ場なしの文字が刻まれ思考停止中である。

「…きゃぁぁぁっ!!可愛い~~~!!!」

そんな黄色い声明が響いたのは十五分後の事だった。

「せなちゃん、可愛いわよ~!んもっ!そのままお持ち帰りしたいわ♪」

ベリーさんデザインらしくゴシック調の服はピンク色のミニクマ裾に複数付けられレースやリボン他、頭にはクマ耳と一緒に黒い薔薇が飾られた。

「…それだけは勘弁してください」

もはや、言葉にならないと言わんばかりに目が死んだ魚の目になり真顔で返すとそのまま皆がいるダイニングへと借りてきた猫のように連れていかれた。

「おぉ…可愛い…」

何度目の光景だろうか?ベリーさんデザインの服を着せられた私を見るなり感嘆の声が漏れ何故か硬直している皆の姿は。

「星那、可愛い~~~!!連射!激写!」

一番に硬直から脱出した理沙はどこから出したのか分からない自前らしきカメラを取り出すなり激写し始めた。

「ちょっ!?理沙、止めてよ…!」

「嫌よ!この為にカメラ持って来たのに」

「私も撮りたいですっ!」

「私も激写しなきゃっ!」

理沙を習うようにひのちゃん寧々ちゃんも携帯で撮り始めた状況に慌てて止めに入る。

「だから、何のためにっ!?」

「”売るために♪”」

「なっ……!?」

三人同時に笑顔で答えられ驚き通り越して言葉を無くした。

「星那の写真を待つ星那ファン達にた~くさん売って金にするのよ!」

「学校でそんな事したら駄目じゃんっ!!」

「何言ってるの?これは星那を陰ながら慕う子羊達にただ夢を叶えてあげてるだけよ!」

「そうですよ!私達みたいに積極的に行ける人と違って遠目でしか慕う事しか出来ない人だっているんです!」

「そういう人達に夢を叶えてあげよう!という私達の気持ちを無下にする気ですか!?」

「くっ……」

何だろう?この無駄に説得力あるセリフは…というか、私が怒ってたんだよね?あれ?逆に私が怒られてる?

三人の有無も言わせない言葉にこれ以上反論しても無駄だと悟ったのだった。

もうどうにでもなれ……

理沙達のエサにされた様な写真撮影は三十分続き、私はようやくご飯にありつけたのだった。あ、因みに写真撮影の間に渡された明とまひるのプレゼントは物の見事に丸かぶりしダブルで富士山が描かれた『フジラブ』というTシャツを貰うはめとなった。要するに、似てる者同士買う物も似るわけだ。そして、問題は椿さんと菫さんである。二人はプレゼントと称し椿さんは『一日椿さん専用秘書券』と菫さんは『三泊四日の菫さんとお泊まり券』などという如何にもプレゼントらしからぬ物を差し出され即突き返した。蓮さん達が。

「せなちゃん、あ~ん…」

「自分で食べれますからっ!」

ベリーさんのあ~ん攻撃に私は慣れたように拒否すると目の前に広がる豪華な料理に食いついた。じっくりワインで味付けされた分厚いステーキやパスタサラダに巨大なちらし寿司等など隆二さんと豹が作ってくれた料理は見た目だけでも美味しそうに見えた。勿論本当に美味しかったけどね!

「それにしても、豹も料理出来たんだね!凄く美味しい!」

「まぁ、これくらい大したことない」

「嘘つけ、俺がいなかったら危なかったくせに」

余裕顔の豹にすぐ様突っ込みを入れる隆二さんの言葉に一瞬にして顔が引き攣った。

「危なかったって…?」

一体何が危なかったの!?

恐る恐る豹に質問するが豹は顔色一つ変えず言い返した。

「危なくない、体に嬉しいものだ」

「嘘っ!絶対危ないやつでしょ!」

「にゃにすんだよ…っ!」

白状させる為に片方の頬を引っ張りながら言い合いをしていると今更ながらに蓮さんが口を挟んだ。

「ん?そう言えば、豹はせなに何のプレゼント渡すんだ?」

「あ…そういえばまだ貰ってないや」

蓮さんのナイスな発言に目の前の豹をキラキラした眼差しで見つめ返すといつもの邪険そうな顔が返ってきた。

「…後でやるから」

「後って?危ないものじゃないよね?」

「はぁ…ちゃんとプレゼントしてやるよ」

「ほんと…?」

「ああ…お前が一番欲しい物をあげてやる」

「っ……」

こんなに真面目に返されるなんて思いもせず不意に至近距離で話している事に気付き赤く染まっていく顔を隠すかのように顔を逸らした。

急に真面目に返さなくたっていいのに…ずるいっ!

「…ぜ……絶対だからね?」

「ん…?」

「一番欲しい物あげるって絶対だからねっ!」

「分かってる…絶対だ」

真っ赤になっている顔を知られると分かっていても思わず振り返って念を押したのはきっと豹のプレゼントだけは欲しいと思ったんだと思う。自分で自分がもう分からないけど…

その後、皆でゲームやカラオケをやって盛り上がり誕生日会は幕を閉じた。理沙・まひる・ひのちゃん・寧々ちゃん・井川さんは学校の為早めに帰宅し明は終始帰宅する事を嫌がり泊まる等と言い出すベリーさん・椿さん・菫さんを強制退場させたのだった。そして、残った蓮さん・隆二さん・豹に私は後者の私と豹を除いて酒を飲みまくり皆でゲームに明け暮れたのだった。

「ふぁ……」

今日は色々あったけど本当に楽しかったな…皆私の為に嬉しかったし、豹も…

睡魔で閉じかける瞼の隙間に映る豹の姿に手を伸ばすが気力が持たず力尽きたのだった…

 *

「…寝たか」

伸ばしてきた手にそっと触れ気持ち良さそうに眠る星那の顔を覗いた。

「ふっ…馬鹿な寝顔」

「ん…っ…」

触れていた手を離し星那の頬をつついてみると甘い声を漏らすのと同時にほんのり赤い唇が薄く開いた。

「ほんとに…馬鹿な奴……後悔しても知らないからな?」

後悔するのはきっと自分もだと分かっていても熱く脈打つ鼓動は止めることなど出来なかった。頬に触れていた手を横の床に置くと薄く開いた唇に近づく。

ブーブー…ブーブー…

「っ…」

瞼を閉じかた瞬間、タイミング悪く鳴った着信に眉を顰め体を離し携帯を取り出して開くとそこにはかかってきて欲しくなかった人物の名が表示されていた。

「…何の用だ?」

『分かっているだろう?例の件だ』

「ちっ……」

が最終判断をお下しになった。遂行は今夜…今日中にだそうだ』

「ふ…ふざけるっ!今日中にだと…?最終判断などしなくてもあいつは…」

『お前に拒否権などあるのか?』

「っ……」

『お前はあの御方に逆らえない。そういうだろ?』

「ああ…だが、今の俺にはそんな事もうどうでもいい」

そんな事すらどうでもいいくらいもっと大事なものが俺には出来た…

床で眠る星那の寝顔に目を細めた。

『ほどされたか…』

「何とでもいえばいい」

『はぁ…任務遂行をしなければも壊れるぞ?』

「やっても壊れるんだろ?なら壊させなければいい…俺の手で守る」

『お前は分かっているのか?それとも忘れたのか?あの御方の力を』

「それは…」

『忘れていないのなら大人しく従え。どのみちお前の手じゃ何も守れはしない、すり落ちて壊れるだけだ』

「……ああ」

…その言葉を何度反論しようと心の奥では理解していた。それが事実なのだと…

『あとは頼んだぞ……豹』

音信が途絶え耳から携帯を離すと床で眠る星那の顔が瞳の中で苦しく歪んだ。















































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