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一章 幼少期編
離婚の危機になりました
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結婚している分、離婚が絶対にないかと言われたらきっとあると思う。片方のどちらかが冷めてしまって熱が戻らなければもうそこでジ・エンドだ。
「桃ちゃん…ごめんね」
そう言った母の泣き顔は生涯忘れないだろう。
必要最低限の物しかない空間にテーブルの上に乗せられている離婚届と書かれた一枚の紙は母だけではなく私に不幸という現実を突きつけた。
「ママ…泣かないで?」
頬を伝う涙を小さな指先で拭うと震える両手で抱き寄せられた。
「桃ちゃん…桃ちゃん…ごめんね!ごめんね!」
何度も謝らくて大丈夫だ。私は大丈夫だから…
「泣かないで?ママは笑顔が一番」
「そうね、こういう時こそ笑顔でいなくちゃね!」
涙を拭うといつもの様にスマイルスマイルと言って笑った。
母はそのまま笑っていてくれればいい。母は何も悪くないのだから。そう、悪いのはこんな母を残し裏切った父だ。
テーブルの上に乗せられた離婚届の紙を睨みつけ今頃どこぞの女といるであろう父を憎んだ。
*
午前零時を回る頃、離婚届を置いて出て行ったはずの父が戻って来た。
「今更、何しに来たの?」
「桃を引き取りに来た」
「は!?」
「桃は俺が育てる。経済的にもお前より俺の方が適任だろ?」
「何をふざけた事を…私から娘を奪うつもりなの!?」
「お前だけの娘じゃない。俺にとっても娘だ」
パァンッ!!
その瞬間、母は涙を溜めながら怒りに任せ父の頬に平手打ちを食らわせた。
「馬鹿言わないで!貴方なんかに桃ちゃんは渡さないから!」
その言葉と共に勢いよく二階へと上がってくる母の足音が聞こえ慌ててベッドの中へと潜り込んだ。
「桃ちゃん?起こしてごめんね」
部屋に入るなりベッドの中で蹲る私を抱き上げると一階へと降りる。
「待て!桃本人に選んでもらおう」
「いいわ」
「桃、パパかママかどっ…」
「ママがいい」
「へ?」
呆然と口を開く父に再度言葉を放つ。
「桃はママと居たい」
「え…でも、パパといた方が何でも好きな物買ってあげるよ?好きな食べ物とか玩具とか…」
「いらない」
「も、桃?パパがいいって言ってみな?」
「嫌」
ハッキリとした口調で返す私に父は呆然と固まった。
というか、私に選ばせたのが間違いである。結果は初めから見えているだろうに…
母を残して色々な女と遊びまくっている父に子育ては不可能である。いくら経済的に余裕があるからといって、金銭的しか取り柄のない男に何が出来よう?飾り物の愛より私は母のように本物の愛を与えてくれる人を選ぶわ。
「桃ちゃん、本当にママでいいの?」
「うん!」
当たり前じゃないか、私は母から離れないぞ
「桃ちゃん…っ」
泣きながら抱き締める母を横目に呆然と立ち尽くす父を見るとここに居場所はないと悟ったのか無言で家から出て行った。
ふぅ、これで母を傷付ける者は居なくなったな
まだ転生して間もないが、愛情深い母は既に桃という事を踏まえて好きになっていた。それ故に母を傷つける父は心底許せない気持ちが湧くし、元からイケメン嫌いな分に嫌悪感しか抱かない。
「桃ちゃん、これからはママと二人で頑張っていこうね!」
「うん!大好きよ、ママ…」
涙で腫れた目にキスを落とし笑顔を向けると母は嬉しさのあまり力強く抱き締めた。それはもう、今までで一番の巨乳締めだ。
「桃ちゃん…ごめんね」
そう言った母の泣き顔は生涯忘れないだろう。
必要最低限の物しかない空間にテーブルの上に乗せられている離婚届と書かれた一枚の紙は母だけではなく私に不幸という現実を突きつけた。
「ママ…泣かないで?」
頬を伝う涙を小さな指先で拭うと震える両手で抱き寄せられた。
「桃ちゃん…桃ちゃん…ごめんね!ごめんね!」
何度も謝らくて大丈夫だ。私は大丈夫だから…
「泣かないで?ママは笑顔が一番」
「そうね、こういう時こそ笑顔でいなくちゃね!」
涙を拭うといつもの様にスマイルスマイルと言って笑った。
母はそのまま笑っていてくれればいい。母は何も悪くないのだから。そう、悪いのはこんな母を残し裏切った父だ。
テーブルの上に乗せられた離婚届の紙を睨みつけ今頃どこぞの女といるであろう父を憎んだ。
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「今更、何しに来たの?」
「桃を引き取りに来た」
「は!?」
「桃は俺が育てる。経済的にもお前より俺の方が適任だろ?」
「何をふざけた事を…私から娘を奪うつもりなの!?」
「お前だけの娘じゃない。俺にとっても娘だ」
パァンッ!!
その瞬間、母は涙を溜めながら怒りに任せ父の頬に平手打ちを食らわせた。
「馬鹿言わないで!貴方なんかに桃ちゃんは渡さないから!」
その言葉と共に勢いよく二階へと上がってくる母の足音が聞こえ慌ててベッドの中へと潜り込んだ。
「桃ちゃん?起こしてごめんね」
部屋に入るなりベッドの中で蹲る私を抱き上げると一階へと降りる。
「待て!桃本人に選んでもらおう」
「いいわ」
「桃、パパかママかどっ…」
「ママがいい」
「へ?」
呆然と口を開く父に再度言葉を放つ。
「桃はママと居たい」
「え…でも、パパといた方が何でも好きな物買ってあげるよ?好きな食べ物とか玩具とか…」
「いらない」
「も、桃?パパがいいって言ってみな?」
「嫌」
ハッキリとした口調で返す私に父は呆然と固まった。
というか、私に選ばせたのが間違いである。結果は初めから見えているだろうに…
母を残して色々な女と遊びまくっている父に子育ては不可能である。いくら経済的に余裕があるからといって、金銭的しか取り柄のない男に何が出来よう?飾り物の愛より私は母のように本物の愛を与えてくれる人を選ぶわ。
「桃ちゃん、本当にママでいいの?」
「うん!」
当たり前じゃないか、私は母から離れないぞ
「桃ちゃん…っ」
泣きながら抱き締める母を横目に呆然と立ち尽くす父を見るとここに居場所はないと悟ったのか無言で家から出て行った。
ふぅ、これで母を傷付ける者は居なくなったな
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「桃ちゃん、これからはママと二人で頑張っていこうね!」
「うん!大好きよ、ママ…」
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