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二章 《林間合宿編》

迷子?遭難?落ちた先は悪夢でした

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…カァカァ

「もう夕方かぁ…」

…とからすの鳴き声を聞きながらふと呟くが今そんな事を思っている場合ではなかった。

「そうだよな…そんな事を思っている場合じゃないっ!」

只今、私は非常にピンチだ。命に関わるくらい超非常にピンチなのだ。

ココナの大事な物を見つけ拾おうとしたせいで私は落ちてしまった。何処に?いったい山の中でしかも道端で何処に?と普通の人なら思うだろう。うん、私もこれが他人事なら疑問にしか思わない。だが、これは現実で今目の前にあるのは”大成功!”とアホな言葉が書かれた土の被った看板だった。

「何が”大成功!”だこんにゃろっ!!!」

バキッ!!!

はい、案の定すぐ見事に叩き割った。

今の現状を前にしてこれを見せられたら誰でもするだろう。否、しない方がおかしい。

真上に見えるのは真っ赤に染まる空と木の葉だらけの土、周りには暗い空間に土。そう、例にある”落とし穴”というわけだ。

山の中に落とし穴?馬鹿じゃないの?と思う反面、普通の人ならしないだろう。普通の人ならな!

「これ絶対攻略対象者の誰かだよね…」

普通の常識人ではこんなアホな真似はしないだろう

「お姉様~!」

「ココナ!?あ、写真!」

ココナの呼ぶ声が聞こえ言い返そうと口を開きかけた拍子に地面に落ちたままのココナの”大事な物”に目が止まった。

「ま、大事な物っていう確証はないけど」

確認の為、地面に落ちた写真を拾う。

「え……こ、これって…」

写真の中身を見た瞬間、込み上げてきたものはただならぬ怒りだった。

「こんにゃ…っ」

怒りのまま破いて捨てようとした感情をとっさに抑え込み手を止める。

「危ない、危ない。ここで捨ててたら後でもっと面倒な事になる所だった」

そう、もしここで怒りに任せて捨てようものならココナの事だから後で面倒な事になるのは目に見えていた。なので、私は不服にも一先ずポケットに入れたのだった。

「よし、今度こそ叫び声あげてここから早く脱出しなきゃ!ココナー!!私はここだよ~~~!!!‥…ってあれ?」

既にココナの声は聞こえず聞こえるのは小動物の鳴き声だけだった。

「まさかこのまま遭難事故なんて…」

最悪な事態が頭に過り一瞬にして真っ青になる。

「……見つけた」

「っ…!?」

顔を伏せた瞬間、誰かの声が上から聞こえ驚きと同時に顔を上げるとそこには跳ねまくりの緑色の髪にふわっと広がる柔らかな笑みを浮かべる棗 杏子の姿があった。

「探したよ、もものん」

「な、なんだ…」

杏子の姿を前にして期待外れで気が抜けたのか、もしくは遭難事故回避の安心からの気が抜けたのかは定かじゃないがとにかくその瞬間腰が抜けた。

「うわっ!?もものん!?大丈夫?どうしたの?今すぐそっちに行くから待ってて‥っ!」

「え…」

今なんて言った?から?いやいやいや、そんな事されたらここから脱出なんてむ…

「待って!こない…」

すぐ様彼を止めようとしたが事は既に遅かった。今すぐそっちに行くからと行った彼はあっという間に落とし穴に飛び降り言葉通り来てしまった。

「大丈夫!?もものん!怪我してない?」

「怪我してるのは先生の頭です」

「え!?先生はどこも怪我しないで来たんだけど」

ペタペタと自身の体を触りながら首を傾げる彼を目の前に「怪我してるのは頭の中身だ。降りて来た時点でもう終わってる。」と言う言葉を飲み込んだ。

ダメだ、これ以上関わりたくない

これ以上何か言ったとしてもキリがないと悟り無言で彼から距離をとりその場に座り込む。

「もものん?」

「半径1メートル以上近づかないで。変態馬鹿教師」

「えぇ!?先生何か悪い事した!?そんな変態に馬鹿まで付けなくても変態だけでいいじゃん!」

いや、問題そこかよ

「何で変態はいいの?」

「そりゃあ、男は皆変態ですから!」

「ふっ…それ胸張って言う事じゃない」

あまりにも胸を張ってドヤ顔で言う杏子の姿に思わず少し笑ってしまった。

「あー!やっともものんが笑ってくれた!良かったぁ!!」

「っ…うるさい」

バシッ!!!

「痛っ!?」

至近距離で吐き気がしそうな満面な笑みでそう言う杏子の頬を思いっきり平手打ちをし半径1メートル以内から出させる。

「そのくらい元気あるなら先生は安心したけど…この仕打ちは横暴だ!先生差別だよ!」

「助けも呼ばず何かを使って助ける事もなく落とし穴に入ってきた人に言われたくない」

「それはもものんが怪我してたら大変だと思って」

「それで何もせず降りて来るなんてこの変態馬鹿教師!せめて誰か呼ぶくらい…あ!」

「もものん?」

「携帯!携帯で誰か助けを呼べば助かるかもしれない!」

慌ててポケットから携帯を取り出しお互いに画面を開くが…

「ま、まじか…」

二人の携帯画面に表示されたのは絶望的な”圏外”の二文字だった。

お、終わった…

この瞬間、脱出という文字は私の頭の中から消去された。

~三時間後~

「はっ‥はっくしゅん!寒っ!」

あれから日は完全に落ち真っ暗な空にポツリポツリと星が照らされ満月の月が暗い空間を照らしていた。だが、空気は寒い冷気が漂っている為私達にとっては極寒に近かった。

「ズゥー…‥もものん、暖め合いっことか‥」

「却下」

「だよね~」

命を優先するならこの状況で暖め合うのは効果的だが杏子のという言葉が危機感しか湧かなかった。

「はぁ…」

吐く息が白い

寒さにより白くなる吐く息に更に寒さを覚えた。

このまま二人揃って遭難事故で死ぬのかなぁ…いや、この変態馬鹿教師と心中だけは嫌だ

最悪な未来予想に首を横に降っているとそれまで隣で黙っていた杏子が口を開く。

「ねぇ、もものん…こんな状況で見える星ってさ綺麗だと思わない?」

「星?」

こんな状況で何故星?という疑問を浮かべながらも空を見上げる彼の姿に言われるがまま同じく空を見上げてみると都会では見る事のない満天の星空がそこにはあった。

「…綺麗」

ふと漏らした言葉に場にはそぐわない明るい声が飛んできた。

「でしょ!星ってさガスやガスのもえカスから出来てるのがほとんどだけど、こうやって乾燥して寒い空間の中では一段と輝いて見えるんだ。こんな最悪な状況の先生達にとっては希望の星も見えない?先生は少なくともそう見えるよ」

楽しそうにそう話す杏子の姿に少年時代の姿が重なるのと同時に天文学科の先生らしさも感じた。

「あと例えばの話で‥誰もが好きになる綺麗なお月様が本物だと普通なら信じて誰もがその美しさを欲しがる。でも、周りに小さく輝く小さな星が本当は本物だと知ってしまったら普通ならどうするのかな?もものんならどっちを選ぶ?」

「そりゃあ、小さな星よりお月様の方が美しいのは一目瞭然。私なら迷わずお月様を選びます」

「うん、普通ならそうするよね。でもね~先生はそんな選び方はしないかなぁ‥先生は、誰もが欲しがるお月様も周りで小さく輝く小さな星もどっちも自分のものにするかな」

「そんな欲張りな選び方聞いた事ないです」

「はははっ!うん、先生もそう思うよ!」

自分で言って世話ないじゃん‥ってん?待てよ‥‥

「その例え話って…」

「あ!いたいた!二人共やっと見つけた!」

「もう探したんだからね!」

「どんな状況になったらこんな場所に落ちるんですか?まったく‥」

杏子の話に疑問が浮かび問いかけようとした瞬間、上から聞き覚えのある声が聞こえ声の先を見ると檸檬・小豆・蜜柑・ココナの姿があった。

「お姉様‥っ!」

「‥ココナ」

涙や鼻水でぐちゃぐちゃな顔のココナなの手を申し訳なさそうな顔でとり無事脱出するとその大きな瞳から涙が溢れ出す。

「お姉様!お姉様!お姉様‥っ!心配したんですよ!ココナのせいでお姉様にもしもの事があったらって…うわぁぁぁぁん!!!」

精一杯抱き着き泣きわめくココナの体を優しく抱き締めごめんねと同時にありがとうの気持ちで頭を撫でる。

「心配かけてごめんね。心配してくれてありがとう」

「お姉様…もう一生離しませんわ!絶対絶対ずーっとそばに居ますから!」

「それはさすがに拒否するかな」

だけど、その気持ちだけは受け取っておくね

杏子への疑問を頭の隅に置きながらも私はココナを泣き止むまで抱き締め続けた。

「先生、大丈夫?」

「うん、何ともないよ!」

「良かった。早く捕まって!」

「うん、今すぐ…ん?」

小豆の言う通りに手を掴もうとした際にふと地面に落ちている紙に目が止まった。

「これは…」

何気ない気持ちで拾った紙を見るなりその頬に悪魔的笑みが浮かぶ。

「ふふっ‥いい事思いついたかも」


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