13 / 23
こんな弱気は身体のせいでしょうか?
しおりを挟む
熱を出した。
やはり倉庫室の冷風を長時間受けたのが良くなかったのだろう。
完全に自業自得だ。
体温計を見つめると三十八度を少し超えていた。
病院に行くほどでもないと思い込む。
何をする気もおこらないのだ。
今日会社を休ませてもらったら、三連休なのが救いだった。
熱い息を持て余しながら会社に電話をしたら飛鳥ちゃんがでた。
「大丈夫ですか?莉子先輩、病院、行きました?」
ごめんね、と謝る私を気遣いながらも快く引き継ぎの指示を受ける飛鳥ちゃんの成長に目を細める。
飛鳥ちゃんは研修の後、本人の希望もあり、私の補佐をしてくれている。
この三年間、多くの新社会人と過ごしてきた。
泉を始め、各部門でその活躍を耳にする事も増えてきた。最近では良縁を得たと家庭を持つ者も出始めた。
素直に嬉しく思う。
でも、最近どうした事か、時が流れているという当たり前の事に寂しさのようなものを感じる。
何故だろう。
きっと、身体がこんなだから弱気になっているだけ。
見送る背中なんて見慣れてるはずなのだ。
それこそが、私の喜びであり、私の収穫なのだから。
でも、何故だろう。
子供のように、離れていく後ろ姿に手を伸ばしたくなる。そんな時、何故か目に浮かび遠ざかる温かい背中はとても、大きくて広いのだ。
布団に縮こまり体を丸める。
さっきよりも熱が上がっているのかも知れない。
寒気にガタガタと震える。
ひっきりなしに込み上げる咳に体力を奪われて、内臓まで酷く苦しい。
眠りたいのに眠る事すらできない。
こんな事なら、何とか歩けるうちに、面倒がらずに病院に行くべきだったのだろう。ここまで悪化するとは思わなかった。悔やんでも今更だ。
こうなってしまえば、ひたすらに我慢するしかない。
痛みや辛さが過ぎてくれるのをジッと待つことしかできないのだ。
こんな状態は何かに似ている。
(寒い、苦しい、辛い、泣きたい…)
それでも、誰にも訴える事などできない。
酷く心細い。
小さな子供だったら、こんな時は母がいてくれたと顔を歪める。でも今は私一人…。
再婚して旦那さんと高校生の義理の子供達の世話に日々奮闘している母にこんないい歳になって迷惑なんてかけられない。
こんな時は親の言葉が身に染みる。
「結婚、考えてみたらどうかしら?お見合いって方法もあるじゃない?ね、莉子ちゃん、ずっと一人って訳にもいかないでしょ?お母さん心配だわ…」
そんかありふれた言葉を上手く流しながら生きてきた。それで大丈夫だと思ってきた。
私には妄想があるから大丈夫だと、寂しくなんてない。上手くやってみせるって。
でも、今、リアルに直面していた。
(あぁ、私、もしかするとこのまま、…死んじゃったりするのかな…)
死んでしまったら…
本当のところ、人はどうなるのだろう?
身体は無くなる。
——じゃあ、心は?
多分、永遠に無が続くのだと思う。
もしくは、まるで夢でも見ているように、まだ知らぬどこかを終わりなく彷徨うのだろうか。
だとしたら、私はどんな夢を見ようか。
私の心一つで決められて、誰にも迷惑をかけない世界なら。そうだ…
——大きな大きな優しい犬を抱きしめて、子供のように無邪気に笑っていよう。
ずっと一緒だと抱きしめていよう。
☆
苦しさに夢と現実を何度も行き来していた。
何度目の夢だろうか、酷く騒がしい音がした。
ドアをたたく乱暴な音…
ドアの前で争うような険しい声…
そして突然、大きな塊に覆い被さられ、揺さぶられる。頰に冷たくて大きな手の感触。
「莉子先輩!?、大丈夫ですか?意識、ありますか??」
お願いですから、答えてください!!
その声を最期に安心したのだろう。
私は意識を完全に手放した。
やはり倉庫室の冷風を長時間受けたのが良くなかったのだろう。
完全に自業自得だ。
体温計を見つめると三十八度を少し超えていた。
病院に行くほどでもないと思い込む。
何をする気もおこらないのだ。
今日会社を休ませてもらったら、三連休なのが救いだった。
熱い息を持て余しながら会社に電話をしたら飛鳥ちゃんがでた。
「大丈夫ですか?莉子先輩、病院、行きました?」
ごめんね、と謝る私を気遣いながらも快く引き継ぎの指示を受ける飛鳥ちゃんの成長に目を細める。
飛鳥ちゃんは研修の後、本人の希望もあり、私の補佐をしてくれている。
この三年間、多くの新社会人と過ごしてきた。
泉を始め、各部門でその活躍を耳にする事も増えてきた。最近では良縁を得たと家庭を持つ者も出始めた。
素直に嬉しく思う。
でも、最近どうした事か、時が流れているという当たり前の事に寂しさのようなものを感じる。
何故だろう。
きっと、身体がこんなだから弱気になっているだけ。
見送る背中なんて見慣れてるはずなのだ。
それこそが、私の喜びであり、私の収穫なのだから。
でも、何故だろう。
子供のように、離れていく後ろ姿に手を伸ばしたくなる。そんな時、何故か目に浮かび遠ざかる温かい背中はとても、大きくて広いのだ。
布団に縮こまり体を丸める。
さっきよりも熱が上がっているのかも知れない。
寒気にガタガタと震える。
ひっきりなしに込み上げる咳に体力を奪われて、内臓まで酷く苦しい。
眠りたいのに眠る事すらできない。
こんな事なら、何とか歩けるうちに、面倒がらずに病院に行くべきだったのだろう。ここまで悪化するとは思わなかった。悔やんでも今更だ。
こうなってしまえば、ひたすらに我慢するしかない。
痛みや辛さが過ぎてくれるのをジッと待つことしかできないのだ。
こんな状態は何かに似ている。
(寒い、苦しい、辛い、泣きたい…)
それでも、誰にも訴える事などできない。
酷く心細い。
小さな子供だったら、こんな時は母がいてくれたと顔を歪める。でも今は私一人…。
再婚して旦那さんと高校生の義理の子供達の世話に日々奮闘している母にこんないい歳になって迷惑なんてかけられない。
こんな時は親の言葉が身に染みる。
「結婚、考えてみたらどうかしら?お見合いって方法もあるじゃない?ね、莉子ちゃん、ずっと一人って訳にもいかないでしょ?お母さん心配だわ…」
そんかありふれた言葉を上手く流しながら生きてきた。それで大丈夫だと思ってきた。
私には妄想があるから大丈夫だと、寂しくなんてない。上手くやってみせるって。
でも、今、リアルに直面していた。
(あぁ、私、もしかするとこのまま、…死んじゃったりするのかな…)
死んでしまったら…
本当のところ、人はどうなるのだろう?
身体は無くなる。
——じゃあ、心は?
多分、永遠に無が続くのだと思う。
もしくは、まるで夢でも見ているように、まだ知らぬどこかを終わりなく彷徨うのだろうか。
だとしたら、私はどんな夢を見ようか。
私の心一つで決められて、誰にも迷惑をかけない世界なら。そうだ…
——大きな大きな優しい犬を抱きしめて、子供のように無邪気に笑っていよう。
ずっと一緒だと抱きしめていよう。
☆
苦しさに夢と現実を何度も行き来していた。
何度目の夢だろうか、酷く騒がしい音がした。
ドアをたたく乱暴な音…
ドアの前で争うような険しい声…
そして突然、大きな塊に覆い被さられ、揺さぶられる。頰に冷たくて大きな手の感触。
「莉子先輩!?、大丈夫ですか?意識、ありますか??」
お願いですから、答えてください!!
その声を最期に安心したのだろう。
私は意識を完全に手放した。
0
あなたにおすすめの小説
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
橘若頭と怖がり姫
真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。
その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。
高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
余命わずかな私は、好きな人に愛を伝えて素っ気なくあしらわれる日々を楽しんでいる
ラム猫
恋愛
王城の図書室で働くルーナは、見た目には全く分からない特殊な病により、余命わずかであった。悲観はせず、彼女はかねてより憧れていた冷徹な第一騎士団長アシェンに毎日愛を告白し、彼の困惑した反応を見ることを最後の人生の楽しみとする。アシェンは一貫してそっけない態度を取り続けるが、ルーナのひたむきな告白は、彼の無関心だった心に少しずつ波紋を広げていった。
※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも同じ作品を投稿しています
※全十七話で完結の予定でしたが、勝手ながら二話ほど追加させていただきます。公開は同時に行うので、完結予定日は変わりません。本編は十五話まで、その後は番外編になります。
愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。
そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。
相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。
トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。
あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。
ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。
そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが…
追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。
今更ですが、閲覧の際はご注意ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる