勇者と魔術師 外伝『先祖還り』

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『先祖還り』2

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 赤ん坊はすくすくと育ち、元気に走り回る子供から少年期を終えるころ、母親が病に倒れた。
 神術師の癒しの術も、魔術師の回復魔法も病の進行を妨げることはかなわなかった。
 枕元に座る息子を幸せそうに見つめ、母親はゆっくりと眠りについた。

 少年は青年へと育ち、街へ何か恩返しがしたいと考え、冒険者となり深淵の魔物を狩る道を選んだ。
 青年は街から街へと移り行き、たったひとりで各地の深淵の魔物を倒していく。
 欺瞞の眷属の精神汚染の術も、淫欲の眷属の淫汁も、青年には効かなかった。
 各地を平定して回っていたある日、彼はとある深淵の王に出会う。

 領地を持たない孤高の眷属。
 軍隊を持たず、それゆえに個の能力が非常に高い眷属。
 だが、そのほとんどは組織化された冒険者たちに狩られ、数を減らしていた。
 残るはただ一体、目の前に立ちはだかる深淵の王のみ。

 互いに、すぐに気がついた。
 殺し合う立場にあれど、体内に流れる闇が同じものであることを。
 ふたりが愛し、大切にしていた女性はもういない。
 おそらく一瞬だけ、二人の間に感傷に浸る時間が流れた。

 深淵の王を倒した者は、勇者と呼ばれる。
 青年は冒険者を引退した後、結婚し、子を儲け、孫に囲まれ穏やかに息を引き取った。
 勇者の子孫たちは冒険者となり各地に散らばって、子孫を残す者もいれば、戦って命を落とす者もいた。
 そうして勇者の血はだんだん薄くなり、誰が勇者の子孫だったかもわからなくなり、彼の名前も功績も時間の波間に消えていった。

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