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第7話「貴族とは」③
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ついにいよいよお披露目を兼ねたお茶会の日。
私の目論見通り、来客にする挨拶や話し方に唖然とする男爵たちが目の前にいる。
あまりにも問題がある行動だったためか、お嬢様に甘々の男爵ですら、注意するようにきつく声をかけた。
「ロリヤ。どうしたんだ?いつもはちゃんとできているだろうっ!」
「ちゃんとやっているじゃない」
けれど、当のお嬢様は男爵の言葉にちゃんとしていると反論する。
お嬢様がいつもはちゃんとできていると男爵の情報は、どこからの情報なのだろうか。
集まっているお客様の前でごたつき始めたため、お嬢様の挨拶で静まり返っていた周りがざわつく。
「今のが、挨拶だとも言う気つもりか?」
お嬢様が注目を集めてした挨拶は、今日はよろしく~、と、楽しんでって、だ。
お友達だったならば、まだ許されるかもしれない。
いや、貴族令嬢のお友達付き合いだとダメだと思うけれど、それは置いておいて。
お茶会、どちらかというとお披露目パーティーにあたるこの場で、その挨拶では許されない。
お嬢様の挨拶に固まっていたお客様たちも立ち直って、注意する男爵になおざりな返事をするお嬢様へと冷ややかな目を向け始めていた。
その居心地の悪い視線に男爵は冷や汗をかいているが、お嬢様はどこ吹く風だった。
尋常じゃない量の汗をかく男爵は、はくはくと息をしているかと思えば叫び出した。
「家庭教師が悪いんだ!」
内容は、家庭教師に責任を押し付けるものだった。
「私はちゃんと教えております」
責任転嫁された家庭教師が叫ぶこともなく、よく通る声の調子ですぐさま異議を唱える。
「ならば、何故、できていないのだ!」
「普段はちゃんとできております。行儀作法はどこに出しても恥ずかしくないレベルです」
貴族たるものいかなる時も冷静であるようにと教えている通り、家庭教師は男爵からの言いがかりにも平静に言葉を返す。
男爵の方は余裕がなくせっぱ詰まっているのか、何故できていないを繰り返すばかりだ。
正直なところ、こんなことになると思っていなかったので、これはこれで大丈夫なのかと心配になってくる。
腐っても男爵家の主人。
問題が起これば、そつなく対処できると思っていたのだ。
まさか、こんなことになるとは。
どうしようと思っていれば、大きなため息を吐き出した家庭教師が呆れた視線を男爵に向けながら言い放った。
「普段はできているのに、大勢の前でできないということは、緊張なさっているのではないですか?」
「緊張?」
初めて知った単語を口に出す幼児のような反応で、男爵がぽつりと呟く。
「えぇ、私室ではいつも完璧にこなしておられます」
「な、ならば、私室では普段どおりにできるはずだ!」
お嬢様が自分の部屋に行ったところでできはしないと思うも、それがわかるのは私だけだ。
けれど、ここで口を挟めるわけもなく、男爵と家庭教師がお嬢様の部屋に行こうと話を進めている。
お客様はどうするのかと思っていれば、どうぞお楽しみくださいと言って、男爵はお嬢様の部屋へ向かい始めた。どこであろうと、男爵にお嬢様の状態を理解してもらえるのなら問題ないだろうと思っていれば、問題が発生する。
私の目論見通り、来客にする挨拶や話し方に唖然とする男爵たちが目の前にいる。
あまりにも問題がある行動だったためか、お嬢様に甘々の男爵ですら、注意するようにきつく声をかけた。
「ロリヤ。どうしたんだ?いつもはちゃんとできているだろうっ!」
「ちゃんとやっているじゃない」
けれど、当のお嬢様は男爵の言葉にちゃんとしていると反論する。
お嬢様がいつもはちゃんとできていると男爵の情報は、どこからの情報なのだろうか。
集まっているお客様の前でごたつき始めたため、お嬢様の挨拶で静まり返っていた周りがざわつく。
「今のが、挨拶だとも言う気つもりか?」
お嬢様が注目を集めてした挨拶は、今日はよろしく~、と、楽しんでって、だ。
お友達だったならば、まだ許されるかもしれない。
いや、貴族令嬢のお友達付き合いだとダメだと思うけれど、それは置いておいて。
お茶会、どちらかというとお披露目パーティーにあたるこの場で、その挨拶では許されない。
お嬢様の挨拶に固まっていたお客様たちも立ち直って、注意する男爵になおざりな返事をするお嬢様へと冷ややかな目を向け始めていた。
その居心地の悪い視線に男爵は冷や汗をかいているが、お嬢様はどこ吹く風だった。
尋常じゃない量の汗をかく男爵は、はくはくと息をしているかと思えば叫び出した。
「家庭教師が悪いんだ!」
内容は、家庭教師に責任を押し付けるものだった。
「私はちゃんと教えております」
責任転嫁された家庭教師が叫ぶこともなく、よく通る声の調子ですぐさま異議を唱える。
「ならば、何故、できていないのだ!」
「普段はちゃんとできております。行儀作法はどこに出しても恥ずかしくないレベルです」
貴族たるものいかなる時も冷静であるようにと教えている通り、家庭教師は男爵からの言いがかりにも平静に言葉を返す。
男爵の方は余裕がなくせっぱ詰まっているのか、何故できていないを繰り返すばかりだ。
正直なところ、こんなことになると思っていなかったので、これはこれで大丈夫なのかと心配になってくる。
腐っても男爵家の主人。
問題が起これば、そつなく対処できると思っていたのだ。
まさか、こんなことになるとは。
どうしようと思っていれば、大きなため息を吐き出した家庭教師が呆れた視線を男爵に向けながら言い放った。
「普段はできているのに、大勢の前でできないということは、緊張なさっているのではないですか?」
「緊張?」
初めて知った単語を口に出す幼児のような反応で、男爵がぽつりと呟く。
「えぇ、私室ではいつも完璧にこなしておられます」
「な、ならば、私室では普段どおりにできるはずだ!」
お嬢様が自分の部屋に行ったところでできはしないと思うも、それがわかるのは私だけだ。
けれど、ここで口を挟めるわけもなく、男爵と家庭教師がお嬢様の部屋に行こうと話を進めている。
お客様はどうするのかと思っていれば、どうぞお楽しみくださいと言って、男爵はお嬢様の部屋へ向かい始めた。どこであろうと、男爵にお嬢様の状態を理解してもらえるのなら問題ないだろうと思っていれば、問題が発生する。
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