双子の姉は令嬢で、妹の私は使用人だけれど、特に問題は無い。

黒鯖

文字の大きさ
17 / 31

第7話「貴族とは」④

しおりを挟む
「モブ、面倒くさくなってきたから、あとは貴方がやっといて」

意気込む男爵と家庭教師の後ろをついていくお嬢様に手を引っ張られて、なぜ一緒に連れてこられたのかと怪しんでいればそう言われた。
思わず素で、は?と聞き返してしまった。

「私は、貴方の部屋で寝てるから」

お嬢様はそんなことは気にせず、いなくなろうとするので、慌てて止める。

「待ってください、お嬢様」

腕に縋り付くように引き留めれば、疲れたんだけどと文句を言われる。
疲れる事なんて何もしてないだろうという言葉は、飲み込む。

「お嬢様がいきなりいなくなっては困ります」
「えー?モブが変装魔法解除すればいいでしょ?」
「私は、メイド服を着ているんですよ?!」

どんな早着替えだ。
メイド服に着替える意味もわからない。
いや、そのままメイド服でお嬢様の振りをすれば、普段も私が代理を務めていることが露見していいのだろうか。
しかし、勝手にお嬢様のふりをしていたなんてあらぬ疑いを持たれる可能性もある。
私の言葉に、それもそうかと思ったお嬢様が男爵に声をかけた。
何を言う気だろうか?

「いつも通りにするなら着替えたいんだけど?」
「なるほど、それもそうだな。その方がいいだろう!」

大したことは言ってないお嬢様を、素晴らしい妙案だ、さすがロリヤだと褒める男爵に呆れた。
それじゃあ着替えるから待っててと言って、着いたばかりのお嬢様の部屋に私と一緒に入る。
お嬢様はさっさとドレスを脱いで、私にメイド服を渡せと手をこちらに向けてきた。
私のメイド服を着たお嬢様は、変装魔法のかけられたペンダントも渡すように言ってきたので、その通りにする。
問題が発生するのならお嬢様だろうと言う私の感は外れなかった。
これでは、男爵に気付いてもらえないと言うことに落胆する。
そこで、はっとする。
お嬢様は変装魔法を使っているが、私自身はそのままだ。
いくら双子といえど、男爵だって私かお嬢様かくらい見分けがつくはずだ。
男爵に気付いてもらえるとわかって、胸を撫で下ろす。

「それじゃあ、あとよろしく~」

止める間もなくお嬢様はさっさと部屋を出て行ってしまった。
それと入れ替わりに男爵と家庭教師の先生が入ってきて、私が行儀作法チェックを受けることとなった。

結局、チェックの結果、男爵はうちの子は緊張しいなんだと納得していた。
家庭教師の先生もいつも通り完璧だと褒めてきた。
そんな二人に私は頭を抱える。
家庭教師の先生はまだいい。
なんだかんだで、お嬢様とちゃんと会ったのが今日だから。
けれど、なぜ男爵は自分の娘が入れ替わっていることに気づかないのか。
そこでふと、赤ん坊の頃も見分けがつかないなんてことを言っていたなと思い出す。
まさか未だに見分けられないとは。
男爵が私だと気付かなかったため、結局お嬢様の学業も教養も行儀作法も学んでいないし知らないままということに気付いてもらえなかった。
今回、男爵家ご令嬢の行儀作法がまずいと言うことが貴族に知れ渡っただけだった。
一時的な悪評という犠牲をもとに行っただけに、まずい状況がさらに悪くなっただけだった。
本気でどうしよう……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ちゃんと忠告をしましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。  アゼット様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ? ※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

悪役令嬢として断罪? 残念、全員が私を庇うので処刑されませんでした

ゆっこ
恋愛
 豪奢な大広間の中心で、私はただひとり立たされていた。  玉座の上には婚約者である王太子・レオンハルト殿下。その隣には、涙を浮かべながら震えている聖女――いえ、平民出身の婚約者候補、ミリア嬢。  そして取り巻くように並ぶ廷臣や貴族たちの視線は、一斉に私へと向けられていた。  そう、これは断罪劇。 「アリシア・フォン・ヴァレンシュタイン! お前は聖女ミリアを虐げ、幾度も侮辱し、王宮の秩序を乱した。その罪により、婚約破棄を宣告し、さらには……」  殿下が声を張り上げた。 「――処刑とする!」  広間がざわめいた。  けれど私は、ただ静かに微笑んだ。 (あぁ……やっぱり、来たわね。この展開)

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処理中です...