双子の姉は令嬢で、妹の私は使用人だけれど、特に問題は無い。

黒鯖

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第9話「世界とは」②

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「モブ、これに目を通しておきなさい!」

妙に弾んだ声に鼻息荒くお嬢様がそう命令してきた。
目の前の紙をぴらぴらと揺らして、さっさと受け取れと言わんばかりのお嬢様に、嫌々ながら紙を受け取った。
紙にはギッチリと文字が書かれているようだけれど、残念ながら読むことができない。

「お嬢様、これはなんでしょう?」

じっと紙を見つめて、解読は無理だと諦めて正直に紙の中身についてお嬢様に尋ねた。
これみよがしに、はあ、と思いっきりため息をつかれる。
何のために目を通す必要があるだとか、そもそも何について書かれているとかの説明もしないくせに呆れられて、ちょっと苛立ちを感じてしまった。

「入学試験の時、攻略対象たちに会うのよ!」

仕方ないから説明してあげるわ、といった様子のお嬢様に、別にしたくないならしてくれなくてもいいんだが、と反抗的に思いながらも、とりあえず、話を聞く。
聞くが、確か、攻略対象というのは、ロンくんや叔父さまのことではなかったか。
試験会場に叔父さまもロンくんも来ないと思うが?
そう思い、口を挟めば、またも思いっきりため息を吐かれ、大声を出される。

「違うわよ!他の攻略対象たち!!叔父さまやロンくん以外よ!」

お嬢様の言葉に、何を言っているのかと目を見開く。
叔父さまとロンくんが隠し攻略対象だなんだと言っていた。
それに対して、付き合ってもいないのに二股はどうか、なんて思っていた。
だがしかし、二股どころか、さらに股が広がるらしい。
攻略対象“たち”というから、二人以上はいるはずだ。
紙には名前っぽい文字列が複数見受けられる。
あくまで、名前っぽい、であって、正確に名前として読み取れる文字の塊はない。
とりあえず、名前っぽい並びのものを探していけば、二人どころか五人ぐらいはいそうだ。
惚れやすいにも程があるのでは、と思うも、あまり突っ込むべきではないかととりあえず黙っておく。
貴族令嬢の楽しみなど、噂話か恋愛なのかもしれないし。

「その攻略対象たちとのやり取りの仕方よ!」
「やりとり、ですか?」

やりとり、ということは、こちらが何か仕掛けて向こうも何か返してくれるという前提だ。
しかし、貴族がほとんどの学園の入学試験でいきなり話しかけてくる令嬢、ましてや試験を受けにきて緊張している人たちが、親切に応対してくれるんだろうか。
私だったら、緊張しているところに話しかけられたら、話しかけてこないでほしいと思ってしまいそうだが。
そもそも、爵位が男爵で、気軽に話しかけられる立場じゃない。
しかも、やりとり、ということは、向こうがどう返してくるかも決まっているということなのでは。
文字が読めないので、どのようになっているのかは渡された紙からはわからないけれど。
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