神殿育ちの嫌われΩは、隣国の伯爵αに蕩ける愛を刻まれる

甘梨鈴

文字の大きさ
106 / 129

第105話 デザート

しおりを挟む








 もちろん、ひと口ごとに食材の質の高さと技術の繊細さが伝わって感動するのだけど、空腹なのもあって「おいしい」が頭の中でいっぱいだった。
 魚料理のあとは肉料理が運ばれる。魚料理もそうだったが、見た目の美しさも芸術品のようだ。
 香ばしく焼き上げられた仔牛のローストは、口の中に入れるとほろほろとほどけていく。
「お肉って、こんなに柔らかくなるんですね」
「味もくどくなくて良い。ここのシェフは、腕がいいようですね」
「さすが、王都一のレストランですね」
 エマは、付け合わせの季節野菜もしっかり食して、幸せな笑みを浮かべた。
 最後に出てきたデザートの盛り合わせには、パッと目を輝かせる。
 チョコレートのムースにアプリコットのゼリー、バニラの香るクリームと金箔が散らされ、お洒落で美しかった。
「わぁっ。すごく綺麗です」
「デザートワインもよく合います」
 口の中でとろける甘さに、エマは満面の笑みを浮かべる。
 こんなにおいしいお菓子は、滅多に食べられない。淑やかにというマナーも忘れて、最後まで夢中で食べてしまった。
 フルコースはさすがに量が多く、お腹いっぱいになって、おかわりまではできなかった。だけど、ルシアンがメニュー表を渡して、ドリンクを頼むよう勧めてくれる。
「飲み物も、たくさんあるんですね」
「エマは甘い飲み物が好きでしょう? フレッシュジュースは気に入ると思いますよ」
 メニュー表には、果実水だけでなく、いろんな果物の名前が載っていた。エマの知らない果物のことも、ルシアンはよく知っていて、この中で一番甘いというマンガルのジュースを注文する。
(ルシアン様って、博識で素敵だよね)
 エマも、もっと見習いたいと思う。
 運ばれてきたジュースは、黄色い色でとろみのある、珍しいジュースだ。
「ルシアン様。このジュース、すごくおいしいです! 南国の果物って、こんなに甘いんですね」
 エマはサファイアベリーのジュースがいちばん好きだけど、マンガルはとろみもあって気に入った。
 味わいながら飲んでいると、ルシアンがにっこりと微笑む。
「エマ。それは、ランジェルの特産物の一つです。あちらは温暖な気候ですから、そのように甘い果物がなるそうですよ」
「ランジェルの特産物ですか!」
「ええ。ランジェルという国は、興味深いものばかりありますね」
 ルシアンが意味ありげにエマを見つめて言った。
「ところで。昨日のお願いは、聞いて頂けたのでしょうか?」
「え……?」
 一瞬、何のことかと思ったが、身につけた下着を思い出す。
(あっ! ランジェルの下着!?)
 エマは顔からボッと火を噴いた。
「あ、あああれは、そのっ……!」
「今日、見せて頂けると思って、楽しみにしていたのですが」
「!?」
 ルシアンが欲を含んだ眼差しで、エマを眺めてくる。
 エマは羞恥で全身が熱くなり、とっさに下を向いた。
「は、はいっ……その、着けてきましたっ」
(だって、ルシアン様のお願いだから!)
 恥ずかしかったけど、着けないなんて選択肢はない。
「でも、ルシアン様の思ってるのとは、違うと思いますっ」
 あの布きれは小さすぎて、エマのモノをきゅっと締めつける。
 今だって、少し動揺しただけでエマの半身は固さを増した。
「んっ……ぁっ」
 胸がドキドキしているせいか、蕾におさめた静香石も、クルンッと回る。
 意識すると勃ってしまいそうで、エマは深呼吸した。
「エマ……私の頼みを聞いてくれたのですね」
「……っ」
 エマは小さく頷いた。
 でも、恥ずかしくて顔を上げられない。
 すると、ルシアンが従者を呼んだ。
 速やかにテーブルの上が片付けられる。ナタリナがエマのデザート皿を下げると、テーブルにはワインと水のカラフェだけが残った。
 最後に、ナタリナがハーブティーのポットとカップを運んでくる。
「お嬢様には、こちらがよろしいかと」
「ああ、そうだな」
「ありがとう。ナタリナ」
 エマは、水よりもハーブティーを好む。
 ナタリナはエマに向かってニコリと微笑み、耳元でソッと囁いた。
「エマ様。私達はこれで下がりますので、気兼ねなくお楽しみください」
「えっ?」
 エマが驚いて顔を上げると、ナタリナの勝ち気な瞳がキラッと光った。
「エマ様の魅力でデイモンド伯を落として、味方につけるのですっ!」
「へっ?」
「本能に身を任せても構いません。責任を取らせればいいのですから」
「な、ナタリナ?」
 何を言っているのか、さっぱり分からない。
 だけど、ルシアンに聞かれたらまずいことだけは分かった。
「もうっ。僕、子どもじゃないんだから」
 エマは小言を嫌がる振りをして、ナタリナを部屋から追い出した。
 でもナタリナは、ギラギラした目でエマを……いや、ルシアンを品定めするように眺めていた。







しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか

まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。 そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。 テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。 そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。 大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。 テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。 ※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

愛する公爵と番になりましたが、大切な人がいるようなので身を引きます

まんまる
BL
メルン伯爵家の次男ナーシュは、10歳の時Ωだと分かる。 するとすぐに18歳のタザキル公爵家の嫡男アランから求婚があり、あっという間に婚約が整う。 初めて会った時からお互い惹かれ合っていると思っていた。 しかしアランにはナーシュが知らない愛する人がいて、それを知ったナーシュはアランに離婚を申し出る。 でもナーシュがアランの愛人だと思っていたのは⋯。 執着系α×天然Ω 年の差夫夫のすれ違い(?)からのハッピーエンドのお話です。 Rシーンは※付けます ※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。 ※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。 Xアカウント(@wawawa_o_o_)

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

運命よりも先に、愛してしまった

AzureHaru
BL
幼馴染で番同士の受けと攻め。2人は運命の番ではなかったが、相思相愛だった。そんな時、攻めに運命の番が現れる。それを知った受けは身籠もっていたが、運命の番同士の子供の方が優秀な者が生まれることも知っており、身を引く事を決め姿を消す。 しかし、攻めと運命の番の相手にはそれぞれに別の愛する人がいる事をしり、 2人は運命の番としてではなく、友人として付き合っていけたらと話し合ってわかれた。 その後、攻めは受けが勘違いしていなくなってしまったことを両親達から聞かされるのであった。

「君は有能すぎて可愛げがない」と婚約破棄されたので、一晩で全ての魔法結界を撤去して隣国へ行きます。あ、維持マニュアルは燃やしました。

しょくぱん
恋愛
「君の完璧主義には反吐が出る」――婚約者の第一王子にそう告げられ、国外追放を命じられた聖女エルゼ。彼女は微笑み、一晩で国中の魔法結界を撤去。さらに「素人でも直せる」と嘘を吐かれた維持マニュアルを全て焼却処分した。守護を失いパニックに陥る母国を背に、彼女は隣国の軍事帝国へ。そこでは、彼女の「可愛くない」技術を渇望する皇帝が待っていた。

いい加減観念して結婚してください

彩根梨愛
BL
平凡なオメガが成り行きで決まった婚約解消予定のアルファに結婚を迫られる話 元々ショートショートでしたが、続編を書きましたので短編になりました。 2025/05/05時点でBL18位ありがとうございます。 作者自身驚いていますが、お楽しみ頂き光栄です。

転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。

星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。 前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。 だが図書室の記録が冤罪を覆す。 そしてレイは知る。 聖女ディーンの本当の名はアキラ。 同じ日本から来た存在だった。 帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。 秘密を共有した二人は、友達になる。 人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。

処理中です...