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第105話 デザート
しおりを挟むもちろん、ひと口ごとに食材の質の高さと技術の繊細さが伝わって感動するのだけど、空腹なのもあって「おいしい」が頭の中でいっぱいだった。
魚料理のあとは肉料理が運ばれる。魚料理もそうだったが、見た目の美しさも芸術品のようだ。
香ばしく焼き上げられた仔牛のローストは、口の中に入れるとほろほろとほどけていく。
「お肉って、こんなに柔らかくなるんですね」
「味もくどくなくて良い。ここのシェフは、腕がいいようですね」
「さすが、王都一のレストランですね」
エマは、付け合わせの季節野菜もしっかり食して、幸せな笑みを浮かべた。
最後に出てきたデザートの盛り合わせには、パッと目を輝かせる。
チョコレートのムースにアプリコットのゼリー、バニラの香るクリームと金箔が散らされ、お洒落で美しかった。
「わぁっ。すごく綺麗です」
「デザートワインもよく合います」
口の中でとろける甘さに、エマは満面の笑みを浮かべる。
こんなにおいしいお菓子は、滅多に食べられない。淑やかにというマナーも忘れて、最後まで夢中で食べてしまった。
フルコースはさすがに量が多く、お腹いっぱいになって、おかわりまではできなかった。だけど、ルシアンがメニュー表を渡して、ドリンクを頼むよう勧めてくれる。
「飲み物も、たくさんあるんですね」
「エマは甘い飲み物が好きでしょう? フレッシュジュースは気に入ると思いますよ」
メニュー表には、果実水だけでなく、いろんな果物の名前が載っていた。エマの知らない果物のことも、ルシアンはよく知っていて、この中で一番甘いというマンガルのジュースを注文する。
(ルシアン様って、博識で素敵だよね)
エマも、もっと見習いたいと思う。
運ばれてきたジュースは、黄色い色でとろみのある、珍しいジュースだ。
「ルシアン様。このジュース、すごくおいしいです! 南国の果物って、こんなに甘いんですね」
エマはサファイアベリーのジュースがいちばん好きだけど、マンガルはとろみもあって気に入った。
味わいながら飲んでいると、ルシアンがにっこりと微笑む。
「エマ。それは、ランジェルの特産物の一つです。あちらは温暖な気候ですから、そのように甘い果物がなるそうですよ」
「ランジェルの特産物ですか!」
「ええ。ランジェルという国は、興味深いものばかりありますね」
ルシアンが意味ありげにエマを見つめて言った。
「ところで。昨日のお願いは、聞いて頂けたのでしょうか?」
「え……?」
一瞬、何のことかと思ったが、身につけた下着を思い出す。
(あっ! ランジェルの下着!?)
エマは顔からボッと火を噴いた。
「あ、あああれは、そのっ……!」
「今日、見せて頂けると思って、楽しみにしていたのですが」
「!?」
ルシアンが欲を含んだ眼差しで、エマを眺めてくる。
エマは羞恥で全身が熱くなり、とっさに下を向いた。
「は、はいっ……その、着けてきましたっ」
(だって、ルシアン様のお願いだから!)
恥ずかしかったけど、着けないなんて選択肢はない。
「でも、ルシアン様の思ってるのとは、違うと思いますっ」
あの布きれは小さすぎて、エマのモノをきゅっと締めつける。
今だって、少し動揺しただけでエマの半身は固さを増した。
「んっ……ぁっ」
胸がドキドキしているせいか、蕾におさめた静香石も、クルンッと回る。
意識すると勃ってしまいそうで、エマは深呼吸した。
「エマ……私の頼みを聞いてくれたのですね」
「……っ」
エマは小さく頷いた。
でも、恥ずかしくて顔を上げられない。
すると、ルシアンが従者を呼んだ。
速やかにテーブルの上が片付けられる。ナタリナがエマのデザート皿を下げると、テーブルにはワインと水のカラフェだけが残った。
最後に、ナタリナがハーブティーのポットとカップを運んでくる。
「お嬢様には、こちらがよろしいかと」
「ああ、そうだな」
「ありがとう。ナタリナ」
エマは、水よりもハーブティーを好む。
ナタリナはエマに向かってニコリと微笑み、耳元でソッと囁いた。
「エマ様。私達はこれで下がりますので、気兼ねなくお楽しみください」
「えっ?」
エマが驚いて顔を上げると、ナタリナの勝ち気な瞳がキラッと光った。
「エマ様の魅力でデイモンド伯を落として、味方につけるのですっ!」
「へっ?」
「本能に身を任せても構いません。責任を取らせればいいのですから」
「な、ナタリナ?」
何を言っているのか、さっぱり分からない。
だけど、ルシアンに聞かれたらまずいことだけは分かった。
「もうっ。僕、子どもじゃないんだから」
エマは小言を嫌がる振りをして、ナタリナを部屋から追い出した。
でもナタリナは、ギラギラした目でエマを……いや、ルシアンを品定めするように眺めていた。
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