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第9話「卒業式の約束」
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風が、春の気配を揺らしていた。
その朝、桐原尚吾は制服の第一ボタンを留めながら、鏡の中に映る自分をじっと見つめていた。高校生活最後の日。式の始まりはもうすぐだというのに、不思議と緊張はなかった。ただ、心の底に澱のように沈んだ感情があった。形にならない想い、言葉にできないままの日々が、胸の奥でまとまらない旋律のように響いていた。
「まだそこにいたの?」
廊下から母・陽子の声がした。尚吾は声をかけ返す前に、もう一度制服の襟を正し、静かに深呼吸する。
「うん、今行くよ」
居間に降りると、テーブルには陽子が用意した朝食が並んでいた。だし巻き卵に焼き魚、味噌汁。それはいつもと変わらない光景のはずなのに、今朝はどこか違って見えた。
「食べないと、式の途中で倒れるわよ」
そう言いながらも、陽子の声にはいつもの厳しさがなかった。母の眼差しは、すでに“送り出す側”のものへと変わっている。尚吾は頷きながら箸をとった。だし巻き卵の甘さが、喉の奥でやけに重かった。
食後、玄関に立つと、陽子が尚吾の背中を撫でるように見送った。
「行ってらっしゃい。ちゃんと、顔を上げて歩くのよ」
その一言に、尚吾は頷くしかなかった。
桜の宮高校の校門には、すでに何人もの生徒たちが集まり始めていた。制服に着慣れたはずの友人たちも、今朝ばかりはどこか大人びて見える。カメラを手にした保護者たち、ちらほらと涙ぐむ母親の姿――卒業式という儀式が、ゆっくりと空間を染め上げていく。
「尚吾!」
背後から聞き覚えのある声がして、尚吾は振り返る。瑠璃だった。桜色のリボンが風に揺れている。彼女の瞳は、どこか照れくさそうに光っていた。長く一緒にいたのに、この日だけは少し距離があるように思えるのが不思議だった。
「おはよう。間に合った?」
「うん。駅から走ってきた」
微笑む瑠璃の額には汗がにじんでいた。尚吾はハンカチを取り出そうとしたが、結局その手はポケットで止まったまま、何も言えなかった。
二人並んで歩くのは、何度目だっただろう。けれど今日の道は、これまでとは違っていた。校舎に向かう足取りの一つ一つが、時間の終わりと始まりを告げているように思えた。
式典が始まると、体育館の中には静かな緊張感が漂った。壇上で名前を呼ばれた生徒たちが順に証書を受け取っていく。尚吾の番が来ると、彼は自然と背筋を伸ばしていた。名前を呼ばれた瞬間、これまでの三年間が一瞬で胸を駆け抜けていった。入学式、文化祭、放課後の部活、そして――桜の木の下で笑っていた瑠璃の顔。
証書を受け取り、戻るとき、客席に座る瑠璃と一瞬だけ視線が合った。瑠璃は小さく頷いていた。涙をこらえているようにも見えた。
式が終わると、校舎のあちこちで記念写真を撮る生徒たちの笑い声が響いた。教師に囲まれて涙ぐむ者、友人とハイタッチを交わす者、そしてカップルで別れを惜しむ姿――校庭は、まるで人生の一瞬を詰め込んだような万華鏡だった。
「尚吾」
声がして、振り返ると、瑠璃がいつもの場所――あの桜の木の下に立っていた。風が吹くたびに枝が揺れ、ほんの少しだけ蕾が膨らみはじめているのがわかる。
「ここに来ると思った」
「瑠璃も、だろ?」
ふたりは顔を見合わせて笑った。その笑顔の奥には、これまで語られなかった不安と寂しさがそっと隠れているのが、尚吾には分かった。
「ねえ、来年も――」
「うん、三月十一日。毎年ここで、会おう」
言葉は重ならなかったのに、不思議と同じ意味を抱えていた。
尚吾は一歩前に出て、桜の幹にそっと手を置いた。木肌の感触が、妙に温かかった。
「約束だよ。どんなに忙しくても、どこにいても、ここに来る」
「うん。私も、絶対に忘れない」
ふたりのあいだに、目には見えない一本の糸が張られたような気がした。未来という言葉に実感を持てないまま、それでも信じたいと願う、十代の誓いだった。
そして、それがどれほどの意味を持つ約束になるかを、尚吾はまだ知らなかった。
午後の光が、玄関の硝子戸を淡く照らしていた。
制服姿のまま家に戻った尚吾は、靴を脱ぐ手を止めて、その場に立ち尽くしていた。校庭の桜の下で交わした約束が、まだ掌の中にあるような感触を残していた。言葉にしただけなのに、あんなにも強く心が動くのは、どうしてだろう。
「おかえり」
声に振り返ると、キッチンから母・陽子が顔を覗かせていた。エプロン姿のまま、菜箸を片手に持っている。
「うん、ただいま」
靴を揃えて上がり込むと、陽子はふと尚吾の顔をじっと見つめた。
「……泣かなかったのね」
「え、別に……泣くような場面でもなかったし」
思わずごまかすように笑った尚吾に、陽子はふっと微笑みを返す。そしてゆっくりと近づいてきて、尚吾の背中にそっと手を添えた。ほんの一瞬の仕草だったが、その温もりは不思議と胸に沁みた。
「泣くことが恥ずかしいとは思わないけどね。大事な日だったんでしょう?」
尚吾は口を結び、少しだけ頷いた。
「……約束、したんだ」
「うん?」
「来年の春、また会おうって。毎年、桜の木の下で、って」
言葉にした瞬間、急に胸の奥が締めつけられるような感覚に襲われた。あれは確かに未来への約束なのに、なぜか遠く離れていくような不安がついてくる。それでも、尚吾はその不安に名前をつけることができなかった。
「そう」
陽子はただそれだけ言って、もう一度、背中を撫でた。
「じゃあ、その桜、ちゃんと覚えておかないとね。大人になっても、迷わないように」
尚吾は「うん」と返事をし、黙って台所を離れた。部屋に戻る途中、窓から差し込む午後の日差しに、一瞬だけ桜の枝が揺れる幻を見た気がした。
一方その頃、千草家の玄関では、瑠璃が革靴を脱いで、音を立てぬよう廊下を進んでいた。
「ただいま……」
控えめな声に、リビングから顔を出したのは、スーツ姿のままの父・敬一だった。眼鏡を額に上げたまま、新聞を読みかけていたらしく、やや眠たげな目で娘を見た。
「おう、おかえり。卒業、おめでとう」
「……ありがとう」
瑠璃は鞄を下ろし、父の前に立った。少しだけ背筋を伸ばすような姿勢になるのは、昔からの癖だ。敬一は、ふと娘の顔を見て、ひとつだけ眉を上げた。
「泣いたのか?」
「え?」
「ああ、いや、目がちょっと赤いように見えたから」
瑠璃は首を横に振って、かすかに笑った。
「泣いてないよ。でも……ちょっと、言葉にできない感じ」
「ふむ。そういうときが、一番大事なんだよ」
敬一の言葉に、瑠璃は一瞬、驚いたような顔をした。
「言葉にできないってことは、まだ答えが見つかってないってことだからな。急いで答えを出すなよ。おまえは昔から、考えすぎると変なとこで頑固になる」
「……そんな言い方」
小さく抗議しながらも、瑠璃の頬が赤くなる。敬一はそれに気づいたふうもなく、腕を組み直した。
「で、あいつとは話したのか?……桐原くん」
瑠璃は少しだけ視線を伏せ、頷いた。
「うん。桜の木の下で、約束したの。毎年、三月十一日に、また会おうって」
その言葉に、敬一は口元を緩め、ぽんと新聞を畳んだ。
「……それなら、ちゃんと送ってきたんだな」
「え?」
「今日のことさ。お前を送り届けたって意味だよ。子ども扱いするつもりはないけどな、こういう日くらいは、男の子にちゃんと背負ってもらうべきだと思ってた」
照れくさそうに目を逸らす父の横顔を見て、瑠璃は思わず笑った。きっとこの父なりに、ふたりの関係を見守ってくれていたのだろう。
「うん、送ってくれたよ。ちゃんと」
それは、今日一日の出来事だけでなく、三年間の思い出すべてを言い表すような言葉だった。
*
夜、尚吾は机に向かい、卒業証書を見つめていた。紙の中に、三年間が静かに折りたたまれている。学年、氏名、校長の署名――それらがあまりにも形式的であることに、少しだけ不満を覚える。
「未来のことなんて、書かれてないんだな」
誰にともなく呟いて、尚吾はそっと証書を閉じた。そしてふと、引き出しの奥から出てきたメモ帳に気づく。そこにひとこと、文字を綴った。
> 三月十一日、桜の木の下。来年も。
その一文が、いつか何かを導くものになるとは、まだ知る由もないまま。
その朝、桐原尚吾は制服の第一ボタンを留めながら、鏡の中に映る自分をじっと見つめていた。高校生活最後の日。式の始まりはもうすぐだというのに、不思議と緊張はなかった。ただ、心の底に澱のように沈んだ感情があった。形にならない想い、言葉にできないままの日々が、胸の奥でまとまらない旋律のように響いていた。
「まだそこにいたの?」
廊下から母・陽子の声がした。尚吾は声をかけ返す前に、もう一度制服の襟を正し、静かに深呼吸する。
「うん、今行くよ」
居間に降りると、テーブルには陽子が用意した朝食が並んでいた。だし巻き卵に焼き魚、味噌汁。それはいつもと変わらない光景のはずなのに、今朝はどこか違って見えた。
「食べないと、式の途中で倒れるわよ」
そう言いながらも、陽子の声にはいつもの厳しさがなかった。母の眼差しは、すでに“送り出す側”のものへと変わっている。尚吾は頷きながら箸をとった。だし巻き卵の甘さが、喉の奥でやけに重かった。
食後、玄関に立つと、陽子が尚吾の背中を撫でるように見送った。
「行ってらっしゃい。ちゃんと、顔を上げて歩くのよ」
その一言に、尚吾は頷くしかなかった。
桜の宮高校の校門には、すでに何人もの生徒たちが集まり始めていた。制服に着慣れたはずの友人たちも、今朝ばかりはどこか大人びて見える。カメラを手にした保護者たち、ちらほらと涙ぐむ母親の姿――卒業式という儀式が、ゆっくりと空間を染め上げていく。
「尚吾!」
背後から聞き覚えのある声がして、尚吾は振り返る。瑠璃だった。桜色のリボンが風に揺れている。彼女の瞳は、どこか照れくさそうに光っていた。長く一緒にいたのに、この日だけは少し距離があるように思えるのが不思議だった。
「おはよう。間に合った?」
「うん。駅から走ってきた」
微笑む瑠璃の額には汗がにじんでいた。尚吾はハンカチを取り出そうとしたが、結局その手はポケットで止まったまま、何も言えなかった。
二人並んで歩くのは、何度目だっただろう。けれど今日の道は、これまでとは違っていた。校舎に向かう足取りの一つ一つが、時間の終わりと始まりを告げているように思えた。
式典が始まると、体育館の中には静かな緊張感が漂った。壇上で名前を呼ばれた生徒たちが順に証書を受け取っていく。尚吾の番が来ると、彼は自然と背筋を伸ばしていた。名前を呼ばれた瞬間、これまでの三年間が一瞬で胸を駆け抜けていった。入学式、文化祭、放課後の部活、そして――桜の木の下で笑っていた瑠璃の顔。
証書を受け取り、戻るとき、客席に座る瑠璃と一瞬だけ視線が合った。瑠璃は小さく頷いていた。涙をこらえているようにも見えた。
式が終わると、校舎のあちこちで記念写真を撮る生徒たちの笑い声が響いた。教師に囲まれて涙ぐむ者、友人とハイタッチを交わす者、そしてカップルで別れを惜しむ姿――校庭は、まるで人生の一瞬を詰め込んだような万華鏡だった。
「尚吾」
声がして、振り返ると、瑠璃がいつもの場所――あの桜の木の下に立っていた。風が吹くたびに枝が揺れ、ほんの少しだけ蕾が膨らみはじめているのがわかる。
「ここに来ると思った」
「瑠璃も、だろ?」
ふたりは顔を見合わせて笑った。その笑顔の奥には、これまで語られなかった不安と寂しさがそっと隠れているのが、尚吾には分かった。
「ねえ、来年も――」
「うん、三月十一日。毎年ここで、会おう」
言葉は重ならなかったのに、不思議と同じ意味を抱えていた。
尚吾は一歩前に出て、桜の幹にそっと手を置いた。木肌の感触が、妙に温かかった。
「約束だよ。どんなに忙しくても、どこにいても、ここに来る」
「うん。私も、絶対に忘れない」
ふたりのあいだに、目には見えない一本の糸が張られたような気がした。未来という言葉に実感を持てないまま、それでも信じたいと願う、十代の誓いだった。
そして、それがどれほどの意味を持つ約束になるかを、尚吾はまだ知らなかった。
午後の光が、玄関の硝子戸を淡く照らしていた。
制服姿のまま家に戻った尚吾は、靴を脱ぐ手を止めて、その場に立ち尽くしていた。校庭の桜の下で交わした約束が、まだ掌の中にあるような感触を残していた。言葉にしただけなのに、あんなにも強く心が動くのは、どうしてだろう。
「おかえり」
声に振り返ると、キッチンから母・陽子が顔を覗かせていた。エプロン姿のまま、菜箸を片手に持っている。
「うん、ただいま」
靴を揃えて上がり込むと、陽子はふと尚吾の顔をじっと見つめた。
「……泣かなかったのね」
「え、別に……泣くような場面でもなかったし」
思わずごまかすように笑った尚吾に、陽子はふっと微笑みを返す。そしてゆっくりと近づいてきて、尚吾の背中にそっと手を添えた。ほんの一瞬の仕草だったが、その温もりは不思議と胸に沁みた。
「泣くことが恥ずかしいとは思わないけどね。大事な日だったんでしょう?」
尚吾は口を結び、少しだけ頷いた。
「……約束、したんだ」
「うん?」
「来年の春、また会おうって。毎年、桜の木の下で、って」
言葉にした瞬間、急に胸の奥が締めつけられるような感覚に襲われた。あれは確かに未来への約束なのに、なぜか遠く離れていくような不安がついてくる。それでも、尚吾はその不安に名前をつけることができなかった。
「そう」
陽子はただそれだけ言って、もう一度、背中を撫でた。
「じゃあ、その桜、ちゃんと覚えておかないとね。大人になっても、迷わないように」
尚吾は「うん」と返事をし、黙って台所を離れた。部屋に戻る途中、窓から差し込む午後の日差しに、一瞬だけ桜の枝が揺れる幻を見た気がした。
一方その頃、千草家の玄関では、瑠璃が革靴を脱いで、音を立てぬよう廊下を進んでいた。
「ただいま……」
控えめな声に、リビングから顔を出したのは、スーツ姿のままの父・敬一だった。眼鏡を額に上げたまま、新聞を読みかけていたらしく、やや眠たげな目で娘を見た。
「おう、おかえり。卒業、おめでとう」
「……ありがとう」
瑠璃は鞄を下ろし、父の前に立った。少しだけ背筋を伸ばすような姿勢になるのは、昔からの癖だ。敬一は、ふと娘の顔を見て、ひとつだけ眉を上げた。
「泣いたのか?」
「え?」
「ああ、いや、目がちょっと赤いように見えたから」
瑠璃は首を横に振って、かすかに笑った。
「泣いてないよ。でも……ちょっと、言葉にできない感じ」
「ふむ。そういうときが、一番大事なんだよ」
敬一の言葉に、瑠璃は一瞬、驚いたような顔をした。
「言葉にできないってことは、まだ答えが見つかってないってことだからな。急いで答えを出すなよ。おまえは昔から、考えすぎると変なとこで頑固になる」
「……そんな言い方」
小さく抗議しながらも、瑠璃の頬が赤くなる。敬一はそれに気づいたふうもなく、腕を組み直した。
「で、あいつとは話したのか?……桐原くん」
瑠璃は少しだけ視線を伏せ、頷いた。
「うん。桜の木の下で、約束したの。毎年、三月十一日に、また会おうって」
その言葉に、敬一は口元を緩め、ぽんと新聞を畳んだ。
「……それなら、ちゃんと送ってきたんだな」
「え?」
「今日のことさ。お前を送り届けたって意味だよ。子ども扱いするつもりはないけどな、こういう日くらいは、男の子にちゃんと背負ってもらうべきだと思ってた」
照れくさそうに目を逸らす父の横顔を見て、瑠璃は思わず笑った。きっとこの父なりに、ふたりの関係を見守ってくれていたのだろう。
「うん、送ってくれたよ。ちゃんと」
それは、今日一日の出来事だけでなく、三年間の思い出すべてを言い表すような言葉だった。
*
夜、尚吾は机に向かい、卒業証書を見つめていた。紙の中に、三年間が静かに折りたたまれている。学年、氏名、校長の署名――それらがあまりにも形式的であることに、少しだけ不満を覚える。
「未来のことなんて、書かれてないんだな」
誰にともなく呟いて、尚吾はそっと証書を閉じた。そしてふと、引き出しの奥から出てきたメモ帳に気づく。そこにひとこと、文字を綴った。
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