21 / 25
第二十話「繭の中で」
しおりを挟む
その朝、蓮は一言も発しなかった。
起きて、着替えて、食卓に座った――それだけ。茶碗も箸も取らない。呼びかけても返事はない。無表情のまま、ただ自分の前にいるエキドナを見つめていた。
「蓮……おなか、すいてない?」
声に出すと、わずかに視線が動いた。だがその目は、美沙を通り過ぎていった。目の前にいる“母親”を視認していない。いや、それどころか、もう“視る”という行為そのものが内向しているようだった。
しろは、そんな蓮の膝の上で、まるで“寄生体”のように身体を沈めていた。耳も動かさず、呼吸の音もほとんど立てない。白く、球状に、黙して沈黙の殻にこもっている。
食卓には蒸気の立たない味噌汁と、冷めたご飯だけが並んでいた。
美沙は手を伸ばし、蓮の肩に触れようとした。けれど、その指先がほんの数センチ手前で、どうしても止まってしまう。
触れたら、何かが壊れるような気がした。
いや、**もう何かが“壊れてしまっている”**のかもしれない。
午前九時。燈子が車で迎えに来た。事前に連絡はなかったが、その表情に一切の無駄はなかった。
向かう先は、再開発指定地域の一角――かつて「桜山小児医療センター」が存在していた場所だった。
現在はすでに解体され、フェンスで囲まれた空き地となっている。だが燈子によれば、そこが“構造的中心”だという。
「都市構造の中で、祈りの動線がどこへ流れ込んでいるかを調べたの。子供たちの夢、記憶の揺らぎ、エキドナの行動……全部が、この一点を指してた」
道中、車内はほとんど会話がなかった。
エンジン音とタイヤの軋みだけが、時間の通過を知らせている。
燈子は視線をフロントガラスに向けたまま言った。
信号待ちの間、美沙はバックミラー越しに蓮の顔を見た。
肌の色は青くもなく、熱もなかった。けれど、まるでどこか別の“空間”に呼ばれ続けているかのような、内なる引力が彼の身体全体を包んでいる。
胸の内に、じわじわと焦燥が広がっていく。
言葉も、声も、表情も、何ひとつ“届かない”という恐怖。
そしてその中に、このまま蓮を失ってしまうかもしれないという、具体的な実感。
やがて、車はフェンスに囲まれた空き地の前にたどり着いた。
かつてそこが病院だった面影は一切残されていない。防音壁のように高く組まれた金属フェンスが、都市の断面のように空間を遮断していた。
だが、その内側だけが“閉じている”ようだった。光の届き方が鈍く、視界がわずかに曇って見える。
美沙は一歩、柵に近づいた。
地面は剥き出しの土と、半ば枯れた雑草に覆われている。中央には、白く四角い建物の基礎部分だけが残っていた。だが、目を凝らせば、そこに“残留しているもの”がある。
――あれは……。
気づけば、フェンスのこちら側に子供たちがいた。
五人、いや六人。みな、無言で立っている。年齢も服装もばらばら。だが奇妙な共通点があった。“誰ひとりとして、こちらを見ていない”のだ。
全員の視線は、フェンスの内側。まるでその空き地の“中心”に何かがあるかのように。音も立てず、身動き一つしない。呼吸の気配すら薄い。まるで、もともと人間ではない“像”がそこに置かれているかのようだった。
「……あの子たち、何してるの?」
思わず声に出すと、燈子はすでに後部座席のドアを開け、双眼鏡を取り出していた。
「ただの“立ち止まり”じゃないわ。……見て」
燈子が指さした先に、白い球体がいた。
エキドナ。子供の足元に、それぞれ一体ずつ、静かに寄り添っている。ぬいぐるみのように丸まって動かない。
「共鳴してる……?」
美沙の声は、言葉というよりも吐息に近かった。
フェンス越しにいる子供たちと、その足元のペットたちが、わずかに震えた。
微細な“ずれ”を持って順番に伝播していく。
「これは――“反射”よ」
燈子の声が静かに重なる。
「無意識でもなく、命令でもない。都市構造の“反射行動”……。ある種の“物理的な返礼”として、彼らは今、あそこに立ってるのよ」
“彼ら”という言葉に、美沙の胸がざらついた。
子供たちは、意志でここに来たわけではないのか? では、なぜ立っている? どこから歩いてきた? 親は? 学校は? そのどれにも答えはなかった。だが、彼らがそこに“到達してしまった”という事実だけが、都市の全体構造と交差し始めていた。
「蓮も……」
思わず、美沙は呟いた。
――もし、蓮があの子たちと同じように“呼ばれた”ら?
――もし、あの中に紛れていたら?
想像するだけで、喉の奥が焼けるようだった。けれど、その不安を口にすることすら、今は“呼び水”になりそうで、美沙は言葉を呑み込んだ。
「美沙」
横にいた燈子が、低く言った。
「視線を、合わせないで。……彼らの眼を、覗き込んじゃだめ」
その声に、思わず美沙は目を伏せた。
静かに、風が吹いた。
音もなく、空き地の土がわずかに舞う。
それはまるで、呼吸を始めた胎内のようだった。
フェンスの向こうには、ただの空き地が広がっているはずだった。だがその地面には、かつて存在していた建物の輪郭が、まるで“記憶の化石”のように刻まれていた。コンクリの断片、雑草の隙間に覗く配管、そして地表を斑に染める土壌の変色。そのすべてが、何かを祀るための“痕跡”に見えた。
「やっぱり……ここよ」
燈子がつぶやくように言い、美沙は息を呑んだ。
フェンスの外には、すでに二十人以上の子供たちが並んでいた。その一人ひとりが、白く丸いエキドナを抱えている。言葉もなく、視線を動かすこともなく、ただ“中心”を見ている。中心――それは、美沙たちの立つ地点から見ても、空き地の中央にあたる、灰色に崩れかけた小さな石の円だった。
「何か……あるの?」と美沙。
燈子はうなずいた。「記録によれば、この地には戦前から“子供の神”を祀る祠があった。センター建設時、それは移設されたことになっている。でも――私は、動かされていないと思う」
空気がひどく乾いていた。秋の風ではなく、記憶を剥がすような無機質な風。枯葉のひとつもないはずの地面を、どこからともなく吹きつけるその気配に、美沙はぞっと背中を冷やした。
「これは、信仰なの?」
「信仰というより――共鳴」
そのとき、柵の向こうの子供たちが、いっせいにエキドナを地面に置いた。
まったく同じ動きで。
「……!」
呼吸が詰まりそうになる。子供たちはそのまま、小さく手を合わせるような仕草を見せた。だがそれは祈りではなかった。“操作”だった。まるで、何かの装置を起動するように、同じ角度で、同じタイミングで。
そして地面が、わずかに震えた。
「地下に……何かがある……?」
美沙の声が震えた。
「そうよ。たぶん“器”が、ここに」
美沙は思わず足を踏み出しかけて、止まった。
フェンスの向こう、子供たちは身じろぎもせず、ただ地面の“中心”を見つめていた。置かれたエキドナたちもまた、静かにそこを囲んでいる。誰一人声を発せず、目を合わせず――だが全員が、同じ視線を注いでいた。
視線の先にあるのは、雑草の切れ目に覗く小さな石の円。そこだけ、地面がわずかに沈み、黒く影を落としていた。
「……ここが、核」
燈子の声が低く震えた。
「意識が収束する、“中心構造”。都市が組み上げてきた祈りと記憶の……繭よ」
“繭”――その言葉が、美沙の全身にしみわたった。
母性をなぞり、祈りを模倣し、集められた子供たちの眼差しと、都市が持つ無数の動線が――この空き地に収束している。街のあちこちで見えた“奇跡”と“暴走”の源。それらは偶然でも狂気でもなく、“必然の呼び声”だった。
誰かが開ければ、中から何かが羽化する。
だがそれは――希望ではない。
終末の使者だった。
母性という名の殻に包まれ、静かに成長を続けている“それ”が、今まさに目を覚ましかけている。
「……まだ、間に合うの?」
思わず美沙が口にすると、燈子は目を細めた。
「まだ、手を触れなければ――」
そのときだった。
置かれていたエキドナのひとつが、わずかに身体を動かした。
ほんの数ミリ、地面の中央に向かって、じり……と転がる。
それに呼応するように、他の個体たちも動き始めた。全員が円を描くように、ゆっくりと、滑るように、中心へと寄っていく。
それはもはや“ペット”ではなかった。
意識体の触手であり、同調の媒体であり、都市が生み出した“感応する手”だった。
風が吹いた。空は白く濁り、光は斜めに差し込む。
まるで、どこか別の世界が、この空間を透かしているように思えた。
――蓮は車に残っている。
今はまだ、“繭”の外にいる。
だがこのままでは、彼もまた――
繭に触れ、包まれ、“母”へと還ってしまうかもしれない。
美沙は拳を強く握った。
子供たちは今も、微動だにせず立ち尽くしている。
風にそよぐ髪の隙間から、その顔を一人ひとり確かめたが、どの目も、もはや“自分の目”ではなかった。
――誰かが、そこから覗いている。
“母”ではない。けれど“母性”の顔をした、何かが。
その視線が、フェンスの向こうから美沙へ向かっていた。
起きて、着替えて、食卓に座った――それだけ。茶碗も箸も取らない。呼びかけても返事はない。無表情のまま、ただ自分の前にいるエキドナを見つめていた。
「蓮……おなか、すいてない?」
声に出すと、わずかに視線が動いた。だがその目は、美沙を通り過ぎていった。目の前にいる“母親”を視認していない。いや、それどころか、もう“視る”という行為そのものが内向しているようだった。
しろは、そんな蓮の膝の上で、まるで“寄生体”のように身体を沈めていた。耳も動かさず、呼吸の音もほとんど立てない。白く、球状に、黙して沈黙の殻にこもっている。
食卓には蒸気の立たない味噌汁と、冷めたご飯だけが並んでいた。
美沙は手を伸ばし、蓮の肩に触れようとした。けれど、その指先がほんの数センチ手前で、どうしても止まってしまう。
触れたら、何かが壊れるような気がした。
いや、**もう何かが“壊れてしまっている”**のかもしれない。
午前九時。燈子が車で迎えに来た。事前に連絡はなかったが、その表情に一切の無駄はなかった。
向かう先は、再開発指定地域の一角――かつて「桜山小児医療センター」が存在していた場所だった。
現在はすでに解体され、フェンスで囲まれた空き地となっている。だが燈子によれば、そこが“構造的中心”だという。
「都市構造の中で、祈りの動線がどこへ流れ込んでいるかを調べたの。子供たちの夢、記憶の揺らぎ、エキドナの行動……全部が、この一点を指してた」
道中、車内はほとんど会話がなかった。
エンジン音とタイヤの軋みだけが、時間の通過を知らせている。
燈子は視線をフロントガラスに向けたまま言った。
信号待ちの間、美沙はバックミラー越しに蓮の顔を見た。
肌の色は青くもなく、熱もなかった。けれど、まるでどこか別の“空間”に呼ばれ続けているかのような、内なる引力が彼の身体全体を包んでいる。
胸の内に、じわじわと焦燥が広がっていく。
言葉も、声も、表情も、何ひとつ“届かない”という恐怖。
そしてその中に、このまま蓮を失ってしまうかもしれないという、具体的な実感。
やがて、車はフェンスに囲まれた空き地の前にたどり着いた。
かつてそこが病院だった面影は一切残されていない。防音壁のように高く組まれた金属フェンスが、都市の断面のように空間を遮断していた。
だが、その内側だけが“閉じている”ようだった。光の届き方が鈍く、視界がわずかに曇って見える。
美沙は一歩、柵に近づいた。
地面は剥き出しの土と、半ば枯れた雑草に覆われている。中央には、白く四角い建物の基礎部分だけが残っていた。だが、目を凝らせば、そこに“残留しているもの”がある。
――あれは……。
気づけば、フェンスのこちら側に子供たちがいた。
五人、いや六人。みな、無言で立っている。年齢も服装もばらばら。だが奇妙な共通点があった。“誰ひとりとして、こちらを見ていない”のだ。
全員の視線は、フェンスの内側。まるでその空き地の“中心”に何かがあるかのように。音も立てず、身動き一つしない。呼吸の気配すら薄い。まるで、もともと人間ではない“像”がそこに置かれているかのようだった。
「……あの子たち、何してるの?」
思わず声に出すと、燈子はすでに後部座席のドアを開け、双眼鏡を取り出していた。
「ただの“立ち止まり”じゃないわ。……見て」
燈子が指さした先に、白い球体がいた。
エキドナ。子供の足元に、それぞれ一体ずつ、静かに寄り添っている。ぬいぐるみのように丸まって動かない。
「共鳴してる……?」
美沙の声は、言葉というよりも吐息に近かった。
フェンス越しにいる子供たちと、その足元のペットたちが、わずかに震えた。
微細な“ずれ”を持って順番に伝播していく。
「これは――“反射”よ」
燈子の声が静かに重なる。
「無意識でもなく、命令でもない。都市構造の“反射行動”……。ある種の“物理的な返礼”として、彼らは今、あそこに立ってるのよ」
“彼ら”という言葉に、美沙の胸がざらついた。
子供たちは、意志でここに来たわけではないのか? では、なぜ立っている? どこから歩いてきた? 親は? 学校は? そのどれにも答えはなかった。だが、彼らがそこに“到達してしまった”という事実だけが、都市の全体構造と交差し始めていた。
「蓮も……」
思わず、美沙は呟いた。
――もし、蓮があの子たちと同じように“呼ばれた”ら?
――もし、あの中に紛れていたら?
想像するだけで、喉の奥が焼けるようだった。けれど、その不安を口にすることすら、今は“呼び水”になりそうで、美沙は言葉を呑み込んだ。
「美沙」
横にいた燈子が、低く言った。
「視線を、合わせないで。……彼らの眼を、覗き込んじゃだめ」
その声に、思わず美沙は目を伏せた。
静かに、風が吹いた。
音もなく、空き地の土がわずかに舞う。
それはまるで、呼吸を始めた胎内のようだった。
フェンスの向こうには、ただの空き地が広がっているはずだった。だがその地面には、かつて存在していた建物の輪郭が、まるで“記憶の化石”のように刻まれていた。コンクリの断片、雑草の隙間に覗く配管、そして地表を斑に染める土壌の変色。そのすべてが、何かを祀るための“痕跡”に見えた。
「やっぱり……ここよ」
燈子がつぶやくように言い、美沙は息を呑んだ。
フェンスの外には、すでに二十人以上の子供たちが並んでいた。その一人ひとりが、白く丸いエキドナを抱えている。言葉もなく、視線を動かすこともなく、ただ“中心”を見ている。中心――それは、美沙たちの立つ地点から見ても、空き地の中央にあたる、灰色に崩れかけた小さな石の円だった。
「何か……あるの?」と美沙。
燈子はうなずいた。「記録によれば、この地には戦前から“子供の神”を祀る祠があった。センター建設時、それは移設されたことになっている。でも――私は、動かされていないと思う」
空気がひどく乾いていた。秋の風ではなく、記憶を剥がすような無機質な風。枯葉のひとつもないはずの地面を、どこからともなく吹きつけるその気配に、美沙はぞっと背中を冷やした。
「これは、信仰なの?」
「信仰というより――共鳴」
そのとき、柵の向こうの子供たちが、いっせいにエキドナを地面に置いた。
まったく同じ動きで。
「……!」
呼吸が詰まりそうになる。子供たちはそのまま、小さく手を合わせるような仕草を見せた。だがそれは祈りではなかった。“操作”だった。まるで、何かの装置を起動するように、同じ角度で、同じタイミングで。
そして地面が、わずかに震えた。
「地下に……何かがある……?」
美沙の声が震えた。
「そうよ。たぶん“器”が、ここに」
美沙は思わず足を踏み出しかけて、止まった。
フェンスの向こう、子供たちは身じろぎもせず、ただ地面の“中心”を見つめていた。置かれたエキドナたちもまた、静かにそこを囲んでいる。誰一人声を発せず、目を合わせず――だが全員が、同じ視線を注いでいた。
視線の先にあるのは、雑草の切れ目に覗く小さな石の円。そこだけ、地面がわずかに沈み、黒く影を落としていた。
「……ここが、核」
燈子の声が低く震えた。
「意識が収束する、“中心構造”。都市が組み上げてきた祈りと記憶の……繭よ」
“繭”――その言葉が、美沙の全身にしみわたった。
母性をなぞり、祈りを模倣し、集められた子供たちの眼差しと、都市が持つ無数の動線が――この空き地に収束している。街のあちこちで見えた“奇跡”と“暴走”の源。それらは偶然でも狂気でもなく、“必然の呼び声”だった。
誰かが開ければ、中から何かが羽化する。
だがそれは――希望ではない。
終末の使者だった。
母性という名の殻に包まれ、静かに成長を続けている“それ”が、今まさに目を覚ましかけている。
「……まだ、間に合うの?」
思わず美沙が口にすると、燈子は目を細めた。
「まだ、手を触れなければ――」
そのときだった。
置かれていたエキドナのひとつが、わずかに身体を動かした。
ほんの数ミリ、地面の中央に向かって、じり……と転がる。
それに呼応するように、他の個体たちも動き始めた。全員が円を描くように、ゆっくりと、滑るように、中心へと寄っていく。
それはもはや“ペット”ではなかった。
意識体の触手であり、同調の媒体であり、都市が生み出した“感応する手”だった。
風が吹いた。空は白く濁り、光は斜めに差し込む。
まるで、どこか別の世界が、この空間を透かしているように思えた。
――蓮は車に残っている。
今はまだ、“繭”の外にいる。
だがこのままでは、彼もまた――
繭に触れ、包まれ、“母”へと還ってしまうかもしれない。
美沙は拳を強く握った。
子供たちは今も、微動だにせず立ち尽くしている。
風にそよぐ髪の隙間から、その顔を一人ひとり確かめたが、どの目も、もはや“自分の目”ではなかった。
――誰かが、そこから覗いている。
“母”ではない。けれど“母性”の顔をした、何かが。
その視線が、フェンスの向こうから美沙へ向かっていた。
0
あなたにおすすめの小説
七竈 ~ふたたび、春~
菱沼あゆ
ホラー
変遷していく呪いに終わりのときは来るのだろうか――?
突然、英嗣の母親に、蔵を整理するから来いと呼び出されたり、相変わらず騒がしい毎日を送っていた七月だが。
ある日、若き市長の要請で、呪いの七竃が切り倒されることになる。
七竃が消えれば、呪いは消えるのか?
何故、急に七竃が切られることになったのか。
市長の意図を探ろうとする七月たちだが――。
学園ホラー&ミステリー
唯一魂の侵蝕
白猫斎
ホラー
大学三年、夏。退屈を埋めるための些細な悪ふざけ。
閉鎖された「幽霊マンション」へ足を踏み入れた五人を待っていたのは、光さえも物質として削り取る漆黒の闇だった。
闇を抜け、日常へ帰還したはずの瀬良結希を待っていたのは、決定的な違和感。
事故で失った十五歳の妹、結奈。遺影の中で静止していたはずの彼女が、そこでは「生きた質量」として、温かな吐息を漏らしていた。
喜びに沸く周囲。だが結希だけは気づく。この世界に魂は一つしかない。
私たちがここへ来たのなら、元からいた「私」はどこへ消えたのか。
五感に突き刺さるようなリアリズムで描かれる、実存を賭けた「上書き」の記録。
※生成AI(Gemini)をプロット検討、文章校正などの補助に使用しています。
紅葉-くれは-
菊池まりな
ホラー
山間の小さな町で行われる秋祭り。
提灯の灯りが揺れる夜、少女・くれはは謎めいた声に導かれるように姿を消した。
必死に探す母・春香は、その瞬間に悟る。
──これは二十年前にも起きた「忌まわしい出来事」と同じ始まりだ。
町に伝わる古い言い伝え。
“赤い森に呼ばれた者は戻らない”
だが、外から赴任してきた刑事・祐真は、その話をただの迷信と切り捨てる。
少女の失踪を追ううちに、彼は次第に目を逸らせぬ現実に直面していく。
森に蠢くもの。木々に浮かぶ人の顔。
血のように濡れた葉が降りしきる中で、人々はひとり、またひとりと消えていく──。
過去と現在が交錯し、町の秘密が暴かれるとき、
くれはの名を呼ぶ声の正体が明らかになる。
罪悪と愛情
暦海
恋愛
地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。
だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる