16 / 18
第四章「夢の淵を越えて」
第四話:現世の解呪
しおりを挟む
その夜の空は、不思議なほど澄んでいた。
星明かりが雲間から地上を照らし、紫陽花庵の庭先に浮かぶ花々が、かすかに輝いて見える。だがその美しさは、どこか張りつめた静けさを孕んでいた。
新右衛門は、庵の裏手にある紫陽花の大株の前に立っていた。
夜の闇の中でも、その紫陽花だけは異様なまでに色鮮やかで、まるで夢の中で見たあの異界の景色が、現実へと滲み出してきたかのようだった。
傍らでは、道明が袈裟の袖をたくし上げ、地面に術式の印を描いている。
その線は円を描き、さらに複数の呪文文字が、白い粉で慎重に描きこまれていく。
「ここにありますよ」
おせんが、根元を指差した。
霊体である彼女には見えるのだ。紫陽花の根の奥に、呪詛の核が埋められていることが。
「念のこもった髪、そして艶書に使われた霊符……その全てが、この土の中に潜んでいます」
新右衛門は、黙って鍬を取り上げると、紫陽花の根元に刃を入れた。
花を傷つけぬように、慎重に、しかし確かな力で土を掘り返していく。
土の中から現れたのは、漆塗りの小箱だった。
封じの札が貼られ、長い年月にもかかわらず、その札はなお霊気を帯びていた。
新右衛門が手を止めると、道明がうなずいた。
「では、始めます」
道明は懐から、浄火の具――油紙に包まれた霊炭と、浄符を取り出した。
炭を清めた台に置き、符を組み合わせて念を込める。
「古の命により、心根の執着、ここにて断ち切らん」
呪文が低く唱えられ、火打石の音が夜空に響いた。
瞬間、ぱちりと火が走り、霊炭が青白い炎を上げて燃えはじめた。
その火は、現世の火とは異なる。風に揺れず、煙を上げず、ただ静かに周囲の霊気を飲み込んでゆく。
新右衛門が、小箱をそっと開ける。
中には、細く束ねられた女の髪と、艶書に使われたと思しき古びた和紙が数枚――その一枚一枚には、朱で書かれた恋文が、呪詛のように残っていた。
「おせん……おまえにも、これが見えるか」
新右衛門の問いに、おせんは頷いた。
「ええ。哀しいほどに、残っている。弥一郎の想いが……でも、それだけじゃないわ。読んだ者たちの、惑わされた心も、ここに沁み込んでいる」
新右衛門は、その髪と文を一枚一枚、浄火の中に落とした。
炎がぱちりと弾けるたび、微かに女の声とも男の嘆きともつかぬ音が、風に混じって消えていく。
夢の中で弥一郎の霊を斬った。確かに、あの時、新右衛門の「影斬り刀」は執着の本体を裂き、彼を夢の世界から追い払ったはずだった。
だが、道明はこう語っている――
「霊というものは、魂そのものとは限りません。ときに怨念だけが、現世に『痕』を残すのです。今回のように、誰かに強い執着を抱き、死してなお断ち切れぬ想いが物に宿った場合……その念だけが“呪詛”として根を張ることがある」
つまり、夢の中で新右衛門が斬ったのは、弥一郎の“魂の影”。だが、現世に縛られたその“呪い”の根は、紫陽花の下にいまだ留まり、そこに封じた女の髪と符を核に、執念の残響だけが生きていた。
「……ならば、現世の呪いも、ここで断ち切るしかあるまい」
新右衛門は再び、結界の中心へと視線を向けた。燃やすべきものは、ただの髪ではない。それは怨念の器であり、夢と現の橋渡しとなった、呪詛そのものだった。
そして最後に、道明が結界の符を庭に四方に埋め、浄符を中央に重ねて封じた。
「これにて……この地に巣食っていた怨念、封じ終えました」
新右衛門は、しばし無言で紫陽花の株を見つめていた。
まるでそれが、長き夢の終わりを告げる証であるかのように。
紫陽花庵の庭に広がる夜気は、どこか重たく湿っていた。月は雲に隠れ、灯りとてない中で、道明が指先に灯した護符の火だけが、淡く地表を照らしている。
紫陽花の根元に掘られた穴は、深さ一尺ほど。新右衛門は静かにそこを見下ろしていた。穴の底には、念が篭もった女の黒髪と、弥一郎の名を書き記した古い符が並べて置かれている。
おせんが静かにうなずいた。「……この髪、間違いなく弥一郎が生前に残したもの。彼が執着を刻んだ対象との“縁”よ。ここで断ち切らなければ、また誰かを夢に誘いこむ」
道明が膝をつき、懐から取り出した新たな符を取り出す。白地に朱墨で描かれた封印の文。彼がこれを髪の上に重ねた瞬間、周囲の空気がひときわ冷たく震えた。
「……霊が、気づいたな」新右衛門が低く呟いた。
辺りの紫陽花が一斉にざわりと揺れる。風は吹いていない。だが何かが、見えぬ力が、この庵に集い始めている。
「いまじゃ。封じるぞ」
道明が火打石を打ち鳴らす。鋭い音と共に、火が霊符の端に燃え移る。炎は淡く青く揺れ、すぐに強い火勢となって髪と符を包みこんだ。
「まて……やめろ……!」
女とも男ともつかぬ、低くざらついた声が庭の奥から響いた。幻聴ではない。新右衛門の背に、冷たい汗がつうっと流れ落ちる。弥一郎の声だった。
おせんが新右衛門の背後に立つ。
焚かれた符の炎が、はじけるように爆ぜた瞬間、周囲の紫陽花が一斉に色を変え始めた。淡い青、桃、紫。それがやがて、どす黒い墨色に染まっていく。
「呪いが……露出してきた」
道明の声は低く、それでも揺るぎなかった。彼は懐からさらに五枚の護符を取り出し、紫陽花の根を囲むように地面に突き立てる。結界だ。五方の霊符が火を噴き、同時に朱の光の帯が地を這って繋がれた。
「させるか……その女は、わしの、わしのものじゃ……!」
弥一郎の声がおせんに絡みつきながら、紫陽花の奥から響く。だが、その姿はもはや弥一郎ではなかった。夢の中で見た、あの執着と怨念に満ちた霊の姿――歪んだ顔、蛇のような舌、そして爛れた目が、夜の闇に浮かび上がった。
「新右衛門……斬って……!」
おせんの声に、彼は頷く。鞘から抜き放たれた刀身が月の光を受けるはずもなく、それでも、その刃は、今や「影斬り刀」として霊を斬るための力を宿している。
新右衛門は一歩、足を進めた。結界の内から、霊は這い出ようとしている。長い腕を伸ばし、呻きながら、おせんに手を伸ばそうとする。
「……貴様の執着で、どれだけの女が死んだと思っている」
新右衛門の声は低く、それでいて剣のように鋭かった。
「わしが斬るのは、魂ごとじゃ……生者の未練も、死者の執念も、同じように斬り裂く……!」
そして振り下ろした。
刀身は確かに霊の腕を切った。だがそこには血もなく、ただ影が破れるようにして、霊の腕がもぎ取られていく。
「うおおおおおぉぉぉ……!」
苦悶の叫びと共に、弥一郎の霊は結界の光に焼かれながら崩れ落ちていった。紫陽花が再び風に揺れ、その花弁の色が、静かに元の青に戻っていく。
道明が残る霊符に火を点け、最後の結界を封じた。
「……これで、終わった」
新右衛門は刀を静かに鞘に収めた。
おせんがそっと近づいてきて、彼の袖に触れる。
「ありがとう、新右衛門」
彼は、ただ一つ頷いた。それで、充分だった。
紫陽花庵の庭に、ようやく本物の静けさが戻っていた。
星明かりが雲間から地上を照らし、紫陽花庵の庭先に浮かぶ花々が、かすかに輝いて見える。だがその美しさは、どこか張りつめた静けさを孕んでいた。
新右衛門は、庵の裏手にある紫陽花の大株の前に立っていた。
夜の闇の中でも、その紫陽花だけは異様なまでに色鮮やかで、まるで夢の中で見たあの異界の景色が、現実へと滲み出してきたかのようだった。
傍らでは、道明が袈裟の袖をたくし上げ、地面に術式の印を描いている。
その線は円を描き、さらに複数の呪文文字が、白い粉で慎重に描きこまれていく。
「ここにありますよ」
おせんが、根元を指差した。
霊体である彼女には見えるのだ。紫陽花の根の奥に、呪詛の核が埋められていることが。
「念のこもった髪、そして艶書に使われた霊符……その全てが、この土の中に潜んでいます」
新右衛門は、黙って鍬を取り上げると、紫陽花の根元に刃を入れた。
花を傷つけぬように、慎重に、しかし確かな力で土を掘り返していく。
土の中から現れたのは、漆塗りの小箱だった。
封じの札が貼られ、長い年月にもかかわらず、その札はなお霊気を帯びていた。
新右衛門が手を止めると、道明がうなずいた。
「では、始めます」
道明は懐から、浄火の具――油紙に包まれた霊炭と、浄符を取り出した。
炭を清めた台に置き、符を組み合わせて念を込める。
「古の命により、心根の執着、ここにて断ち切らん」
呪文が低く唱えられ、火打石の音が夜空に響いた。
瞬間、ぱちりと火が走り、霊炭が青白い炎を上げて燃えはじめた。
その火は、現世の火とは異なる。風に揺れず、煙を上げず、ただ静かに周囲の霊気を飲み込んでゆく。
新右衛門が、小箱をそっと開ける。
中には、細く束ねられた女の髪と、艶書に使われたと思しき古びた和紙が数枚――その一枚一枚には、朱で書かれた恋文が、呪詛のように残っていた。
「おせん……おまえにも、これが見えるか」
新右衛門の問いに、おせんは頷いた。
「ええ。哀しいほどに、残っている。弥一郎の想いが……でも、それだけじゃないわ。読んだ者たちの、惑わされた心も、ここに沁み込んでいる」
新右衛門は、その髪と文を一枚一枚、浄火の中に落とした。
炎がぱちりと弾けるたび、微かに女の声とも男の嘆きともつかぬ音が、風に混じって消えていく。
夢の中で弥一郎の霊を斬った。確かに、あの時、新右衛門の「影斬り刀」は執着の本体を裂き、彼を夢の世界から追い払ったはずだった。
だが、道明はこう語っている――
「霊というものは、魂そのものとは限りません。ときに怨念だけが、現世に『痕』を残すのです。今回のように、誰かに強い執着を抱き、死してなお断ち切れぬ想いが物に宿った場合……その念だけが“呪詛”として根を張ることがある」
つまり、夢の中で新右衛門が斬ったのは、弥一郎の“魂の影”。だが、現世に縛られたその“呪い”の根は、紫陽花の下にいまだ留まり、そこに封じた女の髪と符を核に、執念の残響だけが生きていた。
「……ならば、現世の呪いも、ここで断ち切るしかあるまい」
新右衛門は再び、結界の中心へと視線を向けた。燃やすべきものは、ただの髪ではない。それは怨念の器であり、夢と現の橋渡しとなった、呪詛そのものだった。
そして最後に、道明が結界の符を庭に四方に埋め、浄符を中央に重ねて封じた。
「これにて……この地に巣食っていた怨念、封じ終えました」
新右衛門は、しばし無言で紫陽花の株を見つめていた。
まるでそれが、長き夢の終わりを告げる証であるかのように。
紫陽花庵の庭に広がる夜気は、どこか重たく湿っていた。月は雲に隠れ、灯りとてない中で、道明が指先に灯した護符の火だけが、淡く地表を照らしている。
紫陽花の根元に掘られた穴は、深さ一尺ほど。新右衛門は静かにそこを見下ろしていた。穴の底には、念が篭もった女の黒髪と、弥一郎の名を書き記した古い符が並べて置かれている。
おせんが静かにうなずいた。「……この髪、間違いなく弥一郎が生前に残したもの。彼が執着を刻んだ対象との“縁”よ。ここで断ち切らなければ、また誰かを夢に誘いこむ」
道明が膝をつき、懐から取り出した新たな符を取り出す。白地に朱墨で描かれた封印の文。彼がこれを髪の上に重ねた瞬間、周囲の空気がひときわ冷たく震えた。
「……霊が、気づいたな」新右衛門が低く呟いた。
辺りの紫陽花が一斉にざわりと揺れる。風は吹いていない。だが何かが、見えぬ力が、この庵に集い始めている。
「いまじゃ。封じるぞ」
道明が火打石を打ち鳴らす。鋭い音と共に、火が霊符の端に燃え移る。炎は淡く青く揺れ、すぐに強い火勢となって髪と符を包みこんだ。
「まて……やめろ……!」
女とも男ともつかぬ、低くざらついた声が庭の奥から響いた。幻聴ではない。新右衛門の背に、冷たい汗がつうっと流れ落ちる。弥一郎の声だった。
おせんが新右衛門の背後に立つ。
焚かれた符の炎が、はじけるように爆ぜた瞬間、周囲の紫陽花が一斉に色を変え始めた。淡い青、桃、紫。それがやがて、どす黒い墨色に染まっていく。
「呪いが……露出してきた」
道明の声は低く、それでも揺るぎなかった。彼は懐からさらに五枚の護符を取り出し、紫陽花の根を囲むように地面に突き立てる。結界だ。五方の霊符が火を噴き、同時に朱の光の帯が地を這って繋がれた。
「させるか……その女は、わしの、わしのものじゃ……!」
弥一郎の声がおせんに絡みつきながら、紫陽花の奥から響く。だが、その姿はもはや弥一郎ではなかった。夢の中で見た、あの執着と怨念に満ちた霊の姿――歪んだ顔、蛇のような舌、そして爛れた目が、夜の闇に浮かび上がった。
「新右衛門……斬って……!」
おせんの声に、彼は頷く。鞘から抜き放たれた刀身が月の光を受けるはずもなく、それでも、その刃は、今や「影斬り刀」として霊を斬るための力を宿している。
新右衛門は一歩、足を進めた。結界の内から、霊は這い出ようとしている。長い腕を伸ばし、呻きながら、おせんに手を伸ばそうとする。
「……貴様の執着で、どれだけの女が死んだと思っている」
新右衛門の声は低く、それでいて剣のように鋭かった。
「わしが斬るのは、魂ごとじゃ……生者の未練も、死者の執念も、同じように斬り裂く……!」
そして振り下ろした。
刀身は確かに霊の腕を切った。だがそこには血もなく、ただ影が破れるようにして、霊の腕がもぎ取られていく。
「うおおおおおぉぉぉ……!」
苦悶の叫びと共に、弥一郎の霊は結界の光に焼かれながら崩れ落ちていった。紫陽花が再び風に揺れ、その花弁の色が、静かに元の青に戻っていく。
道明が残る霊符に火を点け、最後の結界を封じた。
「……これで、終わった」
新右衛門は刀を静かに鞘に収めた。
おせんがそっと近づいてきて、彼の袖に触れる。
「ありがとう、新右衛門」
彼は、ただ一つ頷いた。それで、充分だった。
紫陽花庵の庭に、ようやく本物の静けさが戻っていた。
0
あなたにおすすめの小説
花嫁
一ノ瀬亮太郎
歴史・時代
征之進は小さい頃から市松人形が欲しかった。しかし大身旗本の嫡男が女の子のように人形遊びをするなど許されるはずもない。他人からも自分からもそんな気持を隠すように征之進は武芸に励み、今では道場の師範代を務めるまでになっていた。そんな征之進に結婚話が持ち込まれる。
無用庵隠居清左衛門
蔵屋
歴史・時代
前老中田沼意次から引き継いで老中となった松平定信は、厳しい倹約令として|寛政の改革《かんせいのかいかく》を実施した。
第8代将軍徳川吉宗によって実施された|享保の改革《きょうほうのかいかく》、|天保の改革《てんぽうのかいかく》と合わせて幕政改革の三大改革という。
松平定信は厳しい倹約令を実施したのだった。江戸幕府は町人たちを中心とした貨幣経済の発達に伴い|逼迫《ひっぱく》した幕府の財政で苦しんでいた。
幕府の財政再建を目的とした改革を実施する事は江戸幕府にとって緊急の課題であった。
この時期、各地方の諸藩に於いても藩政改革が行われていたのであった。
そんな中、徳川家直参旗本であった緒方清左衛門は、己の出世の事しか考えない同僚に嫌気がさしていた。
清左衛門は無欲の徳川家直参旗本であった。
俸禄も入らず、出世欲もなく、ただひたすら、女房の千歳と娘の弥生と、三人仲睦まじく暮らす平穏な日々であればよかったのである。
清左衛門は『あらゆる欲を捨て去り、何もこだわらぬ無の境地になって千歳と弥生の幸せだけを願い、最後は無欲で死にたい』と思っていたのだ。
ある日、清左衛門に理不尽な言いがかりが同僚立花右近からあったのだ。
清左衛門は右近の言いがかりを相手にせず、
無視したのであった。
そして、松平定信に対して、隠居願いを提出したのであった。
「おぬし、本当にそれで良いのだな」
「拙者、一向に構いません」
「分かった。好きにするがよい」
こうして、清左衛門は隠居生活に入ったのである。
裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する
克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。
独裁者・武田信玄
いずもカリーシ
歴史・時代
国を、民を守るために、武田信玄は独裁者を目指す。
独裁国家が民主国家を数で上回っている現代だからこそ、この歴史物語はどこかに通じるものがあるかもしれません。
【第壱章 独裁者への階段】 純粋に国を、民を憂う思いが、粛清の嵐を巻き起こす
【第弐章 川中島合戦】 甲斐の虎と越後の龍、激突す
【第参章 戦争の黒幕】 京の都が、二人の英雄を不倶戴天の敵と成す
【第四章 織田信長の愛娘】 清廉潔白な人々が、武器商人への憎悪を燃やす
【最終章 西上作戦】 武田家を滅ぼす策略に抗うべく、信長と家康打倒を決断す
この小説は『大罪人の娘』を補完するものでもあります。
(前編が執筆終了していますが、後編の執筆に向けて修正中です))
魔王の残影 ~信長の孫 織田秀信物語~
古道 庵
歴史・時代
「母を、自由を、そして名前すらも奪われた。それでも俺は――」
天正十年、第六天魔王・織田信長は本能寺と共に炎の中へと消えた――
信長とその嫡男・信忠がこの世を去り、残されたのはまだ三歳の童、三法師。
清須会議の場で、豊臣秀吉によって織田家の後継とされ、後に名を「秀信」と改められる。
母と引き裂かれ、笑顔の裏に冷たい眼を光らせる秀吉に怯えながらも、少年は岐阜城主として時代の奔流に投げ込まれていく。
自身の存在に疑問を抱き、葛藤に苦悶する日々。
友と呼べる存在との出会い。
己だけが見える、祖父・信長の亡霊。
名すらも奪われた絶望。
そして太閤秀吉の死去。
日ノ本が二つに割れる戦国の世の終焉。天下分け目の関ヶ原。
織田秀信は二十一歳という若さで、歴史の節目の大舞台に立つ。
関ヶ原の戦いの前日譚とも言える「岐阜城の戦い」
福島正則、池田照政(輝政)、井伊直政、本田忠勝、細川忠興、山内一豊、藤堂高虎、京極高知、黒田長政……名だたる猛将・名将の大軍勢を前に、織田秀信はたったの一国一城のみで相対する。
「魔王」の血を受け継ぐ青年は何を望み、何を得るのか。
血に、時代に、翻弄され続けた織田秀信の、静かなる戦いの物語。
※史実をベースにしておりますが、この物語は創作です。
※時代考証については正確ではないので齟齬が生じている部分も含みます。また、口調についても現代に寄せておりますのでご了承ください。
【完結】『江戸めぐり ご馳走道中 ~お香と文吉の東海道味巡り~』
月影 朔
歴史・時代
読めばお腹が減る!食と人情の東海道味巡り、開幕!
自由を求め家を飛び出した、食い道楽で腕っぷし自慢の元武家娘・お香。
料理の知識は確かだが、とある事件で自信を失った気弱な元料理人・文吉。
正反対の二人が偶然出会い、共に旅を始めたのは、天下の街道・東海道!
行く先々の宿場町で二人が出会うのは、その土地ならではの絶品ご当地料理や豊かな食材、そして様々な悩みを抱えた人々。
料理を巡る親子喧嘩、失われた秘伝の味、食材に隠された秘密、旅人たちの些細な揉め事まで――
お香の持ち前の豪快な行動力と、文吉の豊富な食の知識、そして二人の「料理」の力が、人々の閉ざされた心を開き、事件を解決へと導いていきます。時にはお香の隠された剣の腕が炸裂することも…!?
読めば目の前に湯気立つ料理が見えるよう!
香りまで伝わるような鮮やかな料理描写、笑いと涙あふれる人情ドラマ、そして個性豊かなお香と文吉のやり取りに、ページをめくる手が止まらない!
旅の目的は美味しいものを食べること? それとも過去を乗り越えること?
二人の絆はどのように深まっていくのか。そして、それぞれが抱える過去の謎も、旅と共に少しずつ明らかになっていきます。
笑って泣けて、お腹が空く――新たな食時代劇ロードムービー、ここに開幕!
さあ、お香と文吉と一緒に、舌と腹で東海道五十三次を旅しましょう!
アブナイお殿様-月野家江戸屋敷騒動顛末-(R15版)
三矢由巳
歴史・時代
時は江戸、老中水野忠邦が失脚した頃のこと。
佳穂(かほ)は江戸の望月藩月野家上屋敷の奥方様に仕える中臈。
幼い頃に会った千代という少女に憧れ、奥での一生奉公を望んでいた。
ところが、若殿様が急死し事態は一変、分家から養子に入った慶温(よしはる)こと又四郎に侍ることに。
又四郎はずっと前にも会ったことがあると言うが、佳穂には心当たりがない。
海外の事情や英吉利語を教える又四郎に翻弄されるも、惹かれていく佳穂。
一方、二人の周辺では次々に不可解な事件が起きる。
事件の真相を追うのは又四郎や屋敷の人々、そしてスタンダードプードルのシロ。
果たして、佳穂は又四郎と結ばれるのか。
シロの鼻が真実を追い詰める!
別サイトで発表した作品のR15版です。
対米戦、準備せよ!
湖灯
歴史・時代
大本営から特命を受けてサイパン島に視察に訪れた柏原総一郎大尉は、絶体絶命の危機に過去に移動する。
そして21世紀からタイムリーㇷ゚して過去の世界にやって来た、柳生義正と結城薫出会う。
3人は協力して悲惨な負け方をした太平洋戦争に勝つために様々な施策を試みる。
小説家になろうで、先行配信中!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる