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第二章 ウィルとアルと山頂に棲む竜
魔族の血族
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嵐が去った静けさ。俺は覆いかぶさるように抱き締めていたウィルに「大丈夫か」と声を掛けてゆっくりと立たせた。不安からか、ウィルは俺の身体にしがみついたままだ。安心させようとその細い肩を抱き寄せる。
そこへヨロヨロとこちらへ近づきながら手を上げるロガと、ハイタッチした。俺たちを守ってくれたジークは咳き込みながら「酷い有様だ。早く帰って水浴びしたいよ、まったく」と他人事のように愚痴を零していた。
ところで、この男は何処から湧いて出てきたのか。
上空より飛来したヴィルゴが地上に降り立った。まだ傷は完全ではないものの、元気そうだ。
あともう一匹、アルの姿が見当たらない。さっきの爆風で吹っ飛んでしまったのか、辺りを見回しても見当たらない。
「おい、アルがいねえぞ!」
「え? アルならいるじゃないか」
「は? どこに?!」
「ほらそこ……に……!」
遮るものの無い天が蒼い空を覗かせる。心地よい冷たい風が身体の脇を通り過ぎていく。
瓦礫が崩れる音がして、俺とウィルは背後を振り返った。
「な、なぜ。貴様ごときにこのアタシが……貴様、その姿は――まさかエルフ族か!?」
大魔法を喰らい、余裕の消えたメルキドは頭から血を、俺らと変わらない赤い血を流しながら顔を歪めて、なにやら喚いている。先ほどの華麗な少女の姿は何処へやら。たとえ子供であろうと、女の豹変する姿は恐ろしい。
「古(いにしえ)のエルフが何故生きているっ?! 魔族の血縁であるエルフ族は数千年前に自ら滅びたはずっ……!」
「へぇ~、詳しいね……私は昔から、結構欲張りなエルフでね。死ぬのが嫌だったから、姿を変えて生き残ったんだ。まあ、他にも理由はあるんだけど。それはそう、プライベートだから、出会ったばかりのお嬢さんには教えてあげられないなぁ」
そのとき服の裾を引っ張られ、隣に視線をやると、ウィルがさらに腕を引っ張って耳を貸せとばかりに距離が縮まる。ドキッ、と心臓が大きく震えて、脈拍数が上昇したのがわかった。
それからコソ、っとウィルが俺の耳元で耳打ちして打ち明ける。
ジークという男の正体を。
アルが何処に居るのかを。
一瞬、ウィルのその仕草が可愛いと思ってしまったことは、ここだけの秘密だ。
「……? っ――はぁ?!」
ウィルはジークを指差してウンウン、と頷いた。
――ちょっと待て!
いくらなんでもあのアルマジロの姿からこれは――詐欺だろ!?
斜め後ろにいるロガに、言葉の代わりにジェスチャーで言わんとすることを伝えたが、肩をワザとらしく挙げて苦笑するだけだった。
こいつ知ってたな。
俯いているからその表情は伺いしれない。アルの口調はいつもと変わらないように思えたが、どこか棘があるようにも感じた。
棘のある喋り方は俺に対してはいつものことだが。
俺の気のせいだろうか。
メルギスは負傷した身体を押さえて後ろへ後退した。流れた血の一滴が大地に赤黒い斑点を残す。
「口惜しいが、今回はココまでか。ウィリアム、覚えておけ。アタシたちは必ず、お前の中の禁術書を手に入れてみせる!」
呼吸を乱しながら、捨て台詞を口にして、メルキドはその姿を虚空へと消した。
そこへヨロヨロとこちらへ近づきながら手を上げるロガと、ハイタッチした。俺たちを守ってくれたジークは咳き込みながら「酷い有様だ。早く帰って水浴びしたいよ、まったく」と他人事のように愚痴を零していた。
ところで、この男は何処から湧いて出てきたのか。
上空より飛来したヴィルゴが地上に降り立った。まだ傷は完全ではないものの、元気そうだ。
あともう一匹、アルの姿が見当たらない。さっきの爆風で吹っ飛んでしまったのか、辺りを見回しても見当たらない。
「おい、アルがいねえぞ!」
「え? アルならいるじゃないか」
「は? どこに?!」
「ほらそこ……に……!」
遮るものの無い天が蒼い空を覗かせる。心地よい冷たい風が身体の脇を通り過ぎていく。
瓦礫が崩れる音がして、俺とウィルは背後を振り返った。
「な、なぜ。貴様ごときにこのアタシが……貴様、その姿は――まさかエルフ族か!?」
大魔法を喰らい、余裕の消えたメルキドは頭から血を、俺らと変わらない赤い血を流しながら顔を歪めて、なにやら喚いている。先ほどの華麗な少女の姿は何処へやら。たとえ子供であろうと、女の豹変する姿は恐ろしい。
「古(いにしえ)のエルフが何故生きているっ?! 魔族の血縁であるエルフ族は数千年前に自ら滅びたはずっ……!」
「へぇ~、詳しいね……私は昔から、結構欲張りなエルフでね。死ぬのが嫌だったから、姿を変えて生き残ったんだ。まあ、他にも理由はあるんだけど。それはそう、プライベートだから、出会ったばかりのお嬢さんには教えてあげられないなぁ」
そのとき服の裾を引っ張られ、隣に視線をやると、ウィルがさらに腕を引っ張って耳を貸せとばかりに距離が縮まる。ドキッ、と心臓が大きく震えて、脈拍数が上昇したのがわかった。
それからコソ、っとウィルが俺の耳元で耳打ちして打ち明ける。
ジークという男の正体を。
アルが何処に居るのかを。
一瞬、ウィルのその仕草が可愛いと思ってしまったことは、ここだけの秘密だ。
「……? っ――はぁ?!」
ウィルはジークを指差してウンウン、と頷いた。
――ちょっと待て!
いくらなんでもあのアルマジロの姿からこれは――詐欺だろ!?
斜め後ろにいるロガに、言葉の代わりにジェスチャーで言わんとすることを伝えたが、肩をワザとらしく挙げて苦笑するだけだった。
こいつ知ってたな。
俯いているからその表情は伺いしれない。アルの口調はいつもと変わらないように思えたが、どこか棘があるようにも感じた。
棘のある喋り方は俺に対してはいつものことだが。
俺の気のせいだろうか。
メルギスは負傷した身体を押さえて後ろへ後退した。流れた血の一滴が大地に赤黒い斑点を残す。
「口惜しいが、今回はココまでか。ウィリアム、覚えておけ。アタシたちは必ず、お前の中の禁術書を手に入れてみせる!」
呼吸を乱しながら、捨て台詞を口にして、メルキドはその姿を虚空へと消した。
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