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Have a spooktacular night!
Have a spooktacular night!【9】
しおりを挟む「……それと、いくら知っていたとはいえ、馴れ馴れしく呼んですまなかった」
スーも決まり悪そうに謝ってきたけど、お互い様なんだから気にしなくていいのに。
「いや、それは別にいいんだけどさ。そっか、そういう事ね……」
「怖がらせてしまった事も合わせてお詫び致します。申し訳ございませんでした」
「ううん。拾ってくれて助かったし、全然気にしないで。変な人の手に渡ってなくてよかった」
「パック、落とし物はすぐ持ち主の元に届けてあげないとダメだよ? うふふふ……」
「…………ええ、本当にそのとおりです。その落とし物が故意でもそうでなくても、ね」
パックは今度こそなにも乗っていない手をすっと差し出してきた。
「よろしく」
「はい、よろしくお願いします。期間限定の恋人として考えても短すぎますが……。もしご所望でしたら、延長をお申し付けくださいね。何百年でも喜んでお受けしますよ」
白の手袋に包まれた手を取るなり飛び出してきたハロウィンらしい冗談に、直前にチルとパックがした不穏な発言なんて忘れて思いっきり吹き出してしまった。
「何百年て! どんだけ長生きするつもり?」
「本日の仮装テーマは『死後も迷える魂を導く神父』なので、道案内はお任せください」
いま考えた設定なのか前から考えていたものかはわからない。でも、パックが私を怖がらせた事に気を揉んでいて、彼なりに和ませようとしてくれた事はわかった。慇懃無礼だけどいい人じゃん。
「なにそのやけに凝った設定。神父面倒見よすぎ!」
個別ストでその理由が明らかになるやつ。
「なかなか良い設定だと思いませんか?」
「……そこの二人。良い雰囲気になるのは自由だが、僕たちもいるからな」
「そうそう。ぼくたちの事も忘れないでね?」
双子の言葉にはっとする。二人だけの世界に入っていたつもりはないけど、パックと話し込んでたのは事実だ。普段、一対一で話してばっかりで大人数でのお喋りに慣れてない弊害がこんなところに!
どうせグループLINEでも特定の人にしか返事しないタイプなんだろうって? 残念だがそもそもグループLINEに招待されないんだよ。はいはい、ぼっちぼっち。
わかる、わかるよマレフィセントの気持ち……。でも、いくらおこだったからって『招待されてない祝いの席に、いらないって前もって言われてる贈り物持って駆けつける』のはダメでしょ。
「もちろん忘れてなんていませんよ」
パックは笑みを絶やさずに答えたけど。違う、そこじゃない。薄々思ってたけど、この人ズレてるっていうかマイペース?
「いや、そこは『良い雰囲気』を先に否定しといてよ」
「これは失礼いたしました。私としては良い雰囲気だと思っていたもので」
「息ぴったりじゃないか」
「お笑い芸人みたいだねぇ。芸歴も長そう。うふふ」
またまた冷やかしてくる双子。いやいや、君たちのツーカーっぷりには負けますって。
「例えが具体的!」
「カリンがツッコミで私がボケですね。コンビ名はどうします?」
いまの返しで確信が持てた。マイペースっていうか『悪ノリが過ぎる』んだ、パックは。一見ストッパーっぽいのに、とんだブービートラップだよ。
「いや、組まないよ? てかいつまで続くの、この話題!?」
「お望みでしたら、何千年でも」
としたり顔のパック。こうなったら意地でも付き合ってやろうじゃん。
「出た、ゴーストジョーク! しかも延びとるがな!」
「カリンちゃん、ナイスツッコミ!」
口調と発言からはわかりにくいかもだけど、今度はどんなボケをかましてくるんだろうって私もだんだん楽しくなってきた。
応援ありがとうございます!
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