127 / 127
We hope your Halloween is a ”Treat”!
We hope your Halloween is a ”Treat”!【47】
しおりを挟む「あれこれ申し上げましたが、私たちはそういった生前の未練を抱えた方々よりも劣った存在です。ここにいる四名は、死骸から発生したなにかですから」
表情を引き締めて続きを話すパックは、意気揚々とボケを連発していたあのパックと同一人物とはとても思えない。
「本来であれば、私たちは与えられた生を謳歌すべきではないのかもしれません。ただただ復讐のためだけに命を――この命を正規の命と見做せるか否かについても疑問は残りますが――燃やすべきなのかもしれません。そうでなくては、皆の代表として示しがつきませんからね」
彼が語る言葉に胸がズキズキ痛むのは、同族の行動が彼らを生み出してしまったことに対する罪悪感をおぼえているせいだろうか。
それとも、時折見せる人外めいた価値観や類稀なる美しさを除けば、彼らが普通の人間のようにしか見えないからだろうか。一緒に過ごした時間がそのまま情に変換されてしまっているせいだろうか。
「……ああ、すみません。関係のないことまでお話ししてしまいました」
――――パックが私のほうを見て一瞬だけはっとしたことになんて気付かなければよかったのに。きっと彼は私の反応を見て、まだ続けるはずだった話をやめてしまった。
「パックってさ、人間より人間っぽいこと言うね?」
「おや? そうでしょうか? ……喜べばいいのか怒ればいいのかわからないご感想ですね」
パックは白い手袋を付けた手を口元に持って行った。
いままで会った人の中で最も上品に笑う彼のその仕草を、私はあと何回見ることができるのだろう。彼はその手の下で、口角を下げたり歯を食い縛ったりはしていないだろうか。
「あ……そっか! そうだよね!? なんかすごく嫌な思いさせたかも……。ごめん…………!」
「いえ。私が人間たち…………ああ、大丈夫。貴女の事ではありません。……に近しいというのは、私自身も痛感しております。短い間でもともにあった記憶は、そう簡単に消えるものではないようで」
それはいずれ――――あと数時間後に迫った別れを見据えての言葉なのではないかと思ったけど、残念ながら私たちはそこまで突っ込んだことを聞く間柄ではない。コンビはコンビでも、数時間後に自動的に解散することが決定付けられている未来のない相方だ。
「…………話を戻しましょうか。どれだけ飾り立てようと、冥界は冥界です。そして、冥界というのは言わずもがな。行き場のない死者たちのための場所です。安息の地など存在しません。どこへ行っても死者の念が充満しています。彼らにとっては、酸素のようなものかもしれませんね。彼らというか我々もでしょうか。念の濃い場所では、我々も調子がいいですから」
「言われてみればそうかも! 嫌~な雰囲気の場所に限って元気に動き回れちゃうんだよね~。普段は結構忘れてるけど、そういうときに『そういえば、命なんてないのに生き物の真似してるんだったな』って思い出すよ。……でもさ、自分以外の念で強化されるとか、なんかかっこいいよね♪」
「生存戦略のための進化と考えてもかっこいいな」
「命もないのに、生きてる人たちと出会えるのもラッキーだよねぇ。うふふふ」
私自身は復讐の対象から外れるということもあってか、四人はとても和やかに会話している。自身の成り立ちや在り方をありのまま受け止めている彼らのほうが生者の私より生き生きしているように見えて、私のほうが概念的にはよほど死者に近いのかもしれないと思った。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
🥕おしどり夫婦として12年間の結婚生活を過ごしてきたが一波乱あり、妻は夫を誰かに譲りたくなるのだった。
設楽理沙
ライト文芸
☘ 累計ポイント/ 180万pt 超えました。ありがとうございます。
―― 備忘録 ――
第8回ライト文芸大賞では大賞2位ではじまり2位で終了。 最高 57,392 pt
〃 24h/pt-1位ではじまり2位で終了。 最高 89,034 pt
◇ ◇ ◇ ◇
紳士的でいつだって私や私の両親にやさしくしてくれる
素敵な旦那さま・・だと思ってきたのに。
隠された夫の一面を知った日から、眞奈の苦悩が
始まる。
苦しくて、悲しくてもののすごく惨めで・・
消えてしまいたいと思う眞奈は小さな子供のように
大きな声で泣いた。
泣きながらも、よろけながらも、気がつけば
大地をしっかりと踏みしめていた。
そう、立ち止まってなんていられない。
☆-★-☆-★+☆-★-☆-★+☆-★-☆-★
2025.4.19☑~
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ヤクザに医官はおりません
ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした
会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。
シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。
無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。
反社会組織の集まりか!
ヤ◯ザに見初められたら逃げられない?
勘違いから始まる異文化交流のお話です。
※もちろんフィクションです。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる