三千世界の鴉なんて殺さなくても、我々は朝を迎えられる

片喰 一歌

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アフター・アフター・レイン・トーク

アフター・アフター・レイン・トーク<CXXVIII>

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「……っ♡♡ 了解♡ 脱がしちゃうね……♡♡」

 彼は大きな手で顔を覆ったのち、おろしたてのワンピースを器用に脱がせていく。視界は遮られ、真っ暗なトンネルに突入した。

(いま、もしかして照れてた…………?♡)
 
 彼の手はわたしよりひと回り以上大きく、手を繋いでもらうとすっぽり包み込まれてしまうので、彼の手は大きいものと思い込んで決めつけてきたけれど、頭身も高いひとだ。
 
 身長だって低くはないけれど、特別高いかと言われるとそこまでではない。本当はとりたてて大きい手の持ち主ではないのかもしれない……なんて考えていたら、目の前が突然眩しくなって、ぎゅっと目を瞑った。

「任務完了♡♡ …………ワンピースも相当大人っぽいと思ってたけど、下着はもっとだね♡ ……というか、薄々そうかなとは思ってたけど、結構着痩せするタイプ……♡♡ …………ねぇ、きみ?♡ こんなにがっつり見ておいてあれなんだけどさ……♡ 隠すところはそこで大丈夫?♡♡ 脱いでるところ見られるの恥ずかしいってことは、身体見られるのがすでに恥ずかしいってことだと思ってたんだけど」

 左の口端を吊り上げた彼は、ピースサインのように人差し指と中指で目元を指した。

「え…………? きゃああっ♡♡ ……見た……よね?」
 
 そこでようやくわたしは手で庇を作っていて、自分の身体はノーガードになっていることに気が付いた。

 両腕をクロスさせて座り込んだけれど、きっともうなにもかも間に合っていない。

(見られちゃった……! というか、見せちゃった……!! いいんだけど! この下着は彼に見てもらうために買ったんだし、保湿頑張ってたのだって彼に見られても恥ずかしくないためと、彼が触ったときに気持ちいいと思ってもらえるようにだし…………。わたし、彼のためって思ったら結構なんでも頑張れちゃうのかな……♡)

「うん、見ちゃった♡ 選んできてくれた下着の柄、ワンピースとお揃いみたいでかわいいね♡♡ リボンとレースがいっぱいついてて甘めだけど、色が落ち着いてるから大人な雰囲気♡♡ スタイルのよさもわかっちゃった♡♡ すっごく似合ってるよ♡♡」

 彼は悲鳴を上げられたことに驚いていたようで、しばらく大きな目をぱちくりさせていたけれど、ふっと笑んだあと、いつものようにたくさんたくさん甘い言葉を掛けてくれた。
 
 肩の近くで浮遊する手からは、許可なく素肌に触れてもいいものかという迷いが見て取れる。この前お風呂に入ったときもそうだった。わたしにはもったいないくらい思いやりに溢れたひと。――――もったいないからといって、釣り合っているとは思えないからといって、渡すつもりはないけれど。

「下着はかわいいけど……窓華ちゃんのスタイル見たら……」

 腕をクロスさせたまま手を握り込む。
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