三千世界の鴉なんて殺さなくても、我々は朝を迎えられる

片喰 一歌

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アフター・アフター・レイン・トーク

アフター・アフター・レイン・トーク<CXLVIII>

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「…………座っても、たぶんすぐに身体の力抜けて、迷惑かけちゃうと思うから……♡♡」

 さりげなく胸元を隠しつつ、彼のいるほうに身体を向けて仰向けになった。

「そっか♡♡」

 彼はわたしが身体の向きを変え始めたのを察してすぐに手を引いてくれたけれど――――。

「………………」

「…………仰向けになったよ。これでいいんだよね?」

 指定した向きになっても彼からの言葉がないので、横を向いて尋ねてみた。

「……ひとついいかな?♡ そのおててはずっとそこに置いておくつもり?♡♡」

 すると、彼は谷間を隠すために胸の上で組んだ手を指し、質問で返してきた。

 一見にこやかでさわやかないつもの彼だけれど、声には皮膚がぴりぴりするような怒気がこもっているような気がした。

「…………だめ? ここはもうチェック済みだから隠しててもいいかなぁと思ったんだけど…………」

「確かにチェックは済んでるし、かわいいかわいいきみがそうしてると、林檎を喉に詰まらせた白雪姫がガラスの棺で寝かされてるところみたいでかわいいけど、そうされちゃうときみのかわいいおっぱいが見えないし触れないから、おててはできれば身体の横に置いてくれたら嬉しいなぁ……♡♡」

 しゃがんでソファの余白に二本の腕を重ねて置いた彼は、そこに顎を載せて軽く首を傾けた。

「…………ここばっかり触って、他のところのチェックすっぽかしたりしない?」

 かわいいを連呼するくせに誰よりもかわいいの化身である彼の繰り出す上目遣いの攻撃に勝てるはずはない。

「したいけど、しないよ♡♡ いつまでも触ってたくなる気持ちよさだけど、他のところだって触らせてほしいし…………じゃなくて、チェックしないといけないし♡ ここに戻ってくるのはいちばん最後って約束する♡♡」

「…………わかった。早く終わらせてね?♡」

 無駄な肉もごわごわちくちくする髭もない頬を指の先でひと撫でしたら、キスの代わりに唇を人差し指でなぞられた。

「了解♡ 俺も早くこれ脱いじゃいたいし、丁寧に素早く終われるように頑張るよ♡」

 前をはだけた彼が中腰になり、私の脚の前面に両手を滑らせていくのを目だけで追いかけた。

(脚ちゃんと揃えてなかった。濡れてるのはばれちゃってるかもしれないけど、だからって見られてもいいってふうには考えられない……。というか、いまの時点で見られちゃうのは恥ずかしすぎる……!)

「もぞもぞしてる♡ 擽ったかったかな?♡♡ ごめんね?♡」
 
 鼠蹊部のすぐ下からスタートした彼の手が膝を通過したあたりで、わずかに空いた脚のあいだから下着の中心部に作ってしまったであろうシミが見えてしまうのを恐れて両脚をぎゅっと近付けたら、彼が大きな目を細めた。その視線は股間に注がれていた。
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