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アフター・アフター・レイン・トーク
アフター・アフター・レイン・トーク<CLXXX>
しおりを挟む「隠しちゃうの?♡」
目敏い彼がにまにましながら胸元を指した。
「見てなかったから、隠してもいいでしょ……?♡」
「見てないってわかってるなら、隠すことないと思うんだけどなぁ♡♡ 隠されてると思うと、見たくなってきちゃうし…………♡♡ きみが俺の寝顔を見たいって言ってくれてるのと同じだと思うよ?♡ まだ見たことのないものを見たいと思うのは普通でしょ?♡♡ それが好きな人のカラダだったり、表情だったりするなら、なおさらさ?♡」
「……そうかも」
少しずつ胸の前からずらした手を、なんとなく彼とのあいだにできていたスペースに置いてみた。
「…………なーんて言ったけど、このままお昼寝するのもアリな気がしてきたよ♡ 大好きな彼女と明るいうちからお昼寝っていうのも贅沢な時間の使い方だと思うし♡♡ 俺より先に寝ないように気を付けてれば、きみも俺の寝顔見られるもんね?♡」
と言って、彼は瞼を下ろした。わたしの手には目もくれず。
(…………もう寝ちゃうの? 確かにお昼寝にはちょうどいいくらいの時間なのかもしれないけど、お昼寝なんてするタイプじゃないよね? 寝顔は見たいけど、このまま寝ちゃったら、お別れの時間までずっと起きられないかも…………。昨日なんて特に今日が楽しみなのと、メイク研究してて、普段のお休みのときより寝られなかったから、きっと一回寝ちゃったら何時間も寝ちゃうよ……。彼とおんなじベッドで眠れるのもすごく幸せだろうし、疲れも取れると思うけど、並んで寝るのはえっちしてからでもいいし…………)
しばらく待ってみたけれど、彼が目を開ける気配はない。
(もしかして、本当に眠いのかな? ……疲れちゃってるのかも。いつも忙しいもんね……。昨日はなにしてたんだろう? フレンチトーストの仕込み以外にも、いろんなことしてたんだろうなぁ……。眠いなら寝かせてあげたいし、疲れてるなら休ませてあげたほうがいいのはわかってるけど、せっかくふたりでいるんだから…………ふたりっきりの時間なんだから、こういうときじゃないとできないことしたいなぁ。これってワガママかな……。だけど、彼もそのつもりで時間作ってくれてると思うし、伝えるだけ伝えてみるのは別にいいよね? 眠かったり疲れてたりするなら、わたしも一緒にお昼寝させてもらえばいいだけだし…………)
色々思考を巡らせながら、瞼を閉じた彼をじーっと見つめる。
意志の強そうな意外にもはっきりした眉に毛先がふんわりカールした睫毛、閉じていても眼球自体の大きさがわかる目。
笑うと高くなる頬骨、すっとした鼻筋。目立たない人中に、皺の見当たらない艶やかな唇。同い年の男の子とは思えないほどに肌理の細かい白い肌。すべてのパーツが愛おしい。
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