三千世界の鴉なんて殺さなくても、我々は朝を迎えられる

片喰 一歌

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DESTINY CHAIN

DESTINY CHAIN<VIII>

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「気にしてくれてるの……?♡♡ 夢のことも…………昔のことも、もうとっくに終わったことなのに……♡♡ 忘れられたわけじゃないし、これからも完全に記憶から消えるってことはないかもしれないけど……わたしなら平気だよ。君がいてくれてるし。本当にありがとうね」
 
 ――――そう。
 
 過去の出来事が、もし本当に深刻なトラウマになっていたのなら、わたしは男性に手や肩に触れられることさえ拒絶しているはずだ。
 
 たとえ、それが大好きで大切な彼であっても。

 だが、わたしは彼の手を払い除けたことなど一度たりともない。

(それどころか、自分から…………♡♡)
 
「そう言えるきみは強いね。本当にすごいよ。……でも、起きたことは変えられないし、なにかがきっかけでまたよみがえることもある。……きっかけなんてなくても、何度も何度も思い出して、そのたびに苦しんだりもする。嫌な記憶とかトラウマって、そういうものだよ」

 脚を閉じられないように手を添えた彼が、真剣な眼差しを向けてくる。

「きっかけ…………。……そうだね。この前の嫌な夢だって、なにか発端になることがあったわけじゃなかったし……」
 
「そう。なにが引き金になったのかわからない状態で、毎日のように昔あったことを夢で見てた……ってことは、心のどこかにはまだ残ってるってことなんじゃないかな。解決してるように見えても、本当は一生付き合っていかないといけない問題だったりするし。でも、そのために俺がいる。きみは独りじゃない。絶対、独りになんてさせない」

 言葉にも瞳にも偽りは見当たらない。それでも、卒業後のことを考えると、心が黒い雲に覆われていくようだった。

(卒業したら、遠くに行っちゃうのに? ……なんて言うのは卑怯だよね。わたしは彼のせいで独りになるんじゃない。自分から独りになろうとしてるんだから。……数年なんて、あっという間だよ。帰ってきたら、ずっと一緒って約束してくれてるもん。そのくらい、独りで頑張らないと)

「…………無理に思い出させたり、刺激するようなことするつもりはないけど、きみの過去も全部他人事じゃないから。……俺のことだから。だから、きみが本当の意味で『平気』って言えるようになるまで、一緒に戦っていきたいし、そのあともずっと一緒にいたい。…………で、『ずっと一緒に』って言ったけど、俺は大好きな女の子と一緒にいたら、手は出さないでいるのは難しいというか、やっぱり抱きたいと思っちゃうから、俺とをするのも好きになってほしくて頑張ってる♡♡」

 彼の視線はわたしの顔をまっすぐ射抜いているようでいて、時折割れ目のほうに向いていた。
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