三千世界の鴉なんて殺さなくても、我々は朝を迎えられる

片喰 一歌

文字の大きさ
487 / 489
DESTINY CHAIN

DESTINY CHAIN<XXXIX>

しおりを挟む

「……そう……。甘いものは前から好きだったけど、キスは別に好きじゃなくて…………。でも、君とのキスは大好きで……。喉が渇いたら、お水が欲しくなるみたいに、少しでも『好き』とか『寂しい』って思うと、したくなっちゃうの……」

 唇の乾燥、延いては罅割れを招く彼の困った癖を注意するべきかとも思ったのだけれど、彼がそれをする理由の一部が依然明らかになっていない段階で注意してしまうのは、ひどく安易かつ無粋に思えた。

「…………ひとつ聞きたいんだけど、きみが俺を『好き』だと思ってない瞬間って……ある?♡♡」

「ないよ。寝てるときはわからないけど、起きてるときはずっと好き…………。君みたいに、ちゃんと伝えられてはないけど、いつも好きって思ってる……。ごめんね、なかなか言えなくて。不安……だよね」

「……ありがとう♡♡ ……そうだなぁ。不安というより……。実を言うと、すこーし不満だなと思うことはなくもなかったりするんだけど…………。でも、『好き』って言葉の重さとか、『好き』って一回伝えるのに必要なエネルギーが人によって違ってるってこと、ちゃんとわかってるから。それを考えると、無理強いはしたくないなって思うし。……それに、俺がカジュアルに好き好き言うタイプだから、忘れそうになるのも仕方ないかもしれないけど、『好き』って伝える手段は、別に言葉だけじゃないんだよ?♡♡」

「…………確……かに?」
 
「ほんとに納得してくれてる?♡ 俺たちが持ってるのは、口や声帯……だけじゃないよ?♡♡ 唇だって腕だってあるし、目の動きだって、伝わるものは伝わるの♡ 俺はすぐにきみのことぎゅーってしたり、ちゅーしたりしちゃうけど、たぶん……きみのこと見てるだけでもバレバレだと思うんだよね♡♡ 『好き』って気持ち、全然隠せてないでしょ?♡ 隠してるつもりもないけどさ♡ ……とにかく、きみには伝えてる自覚はないかもしれないけど、俺にはしっかりばっちり伝わってきてるから、不安に思わなくて大丈夫ってこと♡」

 優しく語りかけられ、長い指の先のほうを咥え込む蜜壺が収縮した。
 
「…………えぇと、このあたりで話戻そうか? ……整理するね。きみは、寂しくなったり好きだって思ったりすると、俺とキスしたくなる。でも、俺のことを『好き』だと思ってないときはないって話だった。……ってことはさ、きみも俺と一緒で、ずーっとキスしてたいと思ってくれてるってことだよね♡♡」

「そういうことになっちゃう…………というか、そう……だよ……?♡♡」

「じゃあ、やっぱりおんなじだ♡♡ もうわかっちゃったと思うけど、俺の唇舐める癖も、きみが甘いお菓子が欲しくなる理由とおんなじ。『口寂しいから』♡♡」

 細めた目が唇をロックオンしているのがわかり、期待を込めてわずかに隙間を開けた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

処理中です...