三千世界の鴉なんて殺さなくても、我々は朝を迎えられる

片喰 一歌

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DESTINY CHAIN

DESTINY CHAIN<LXXXVI>


「お…………『おじさま』と『おじさん』って、だいぶ意味違うんじゃないかと思うけど…………」

 中途半端なところで止まっている手を使って前を隠すこともできただろうけれど、わたしはあまり同時になにかしようと思い立つタイプではない。先に動いたのは口だった。

(あぁ……。かわいくないこと言っちゃった……。しかも、印象の違いみたいなふわっとしたことで物申すなんて、照れ隠しにしてもちょっと…………!)

「…………ぷっ。あっははははは! 確かにね?♡ 『おじさま』はシルクハットとか燕尾服が似合うスタイリッシュなロマンスグレーで、『おじさん』だと……そうだなぁ。近所に住んでて競馬新聞片手に歩いてたり、すれ違うとビールや煙草の臭いがしたりするような中年男性って感じかな。親しみやすいし、悪い人ではないんだろうけど、ちょっと昭和の価値観抜け切ってなくて……恰幅がいい感じの。……うん。一文字違うだけなのに、全然違うね。きみの言ってたのは『おじさん』なんだから、勝手に『おじさま』にランクアップさせちゃいけなかったよね。図々しかった」

(言いたいことは合ってるけど、そこまで反省しなくてもいいのに。……彼らしいといえば、彼らしいけど♡ 真面目なんだよね、いつも)

「ふふふ♡ きみって、意外とはっきり意思表示できるタイプなんだね♡♡」

 パッとしない中年男性の解像度の高さと素直な謝罪に和んでいたら、彼も柔らかな笑みをこぼした。

「おとなしいほうがよかった?」

「まさか! 思ったよりおとなしくなくて、ほっとしてる。俺は、なんでも言うこと聞いてくれるお人形さんと付き合いたいわけじゃなくて、きみっていう1人の女の子と恋愛したいと思ってるから」

 隠すものを失った胸を一瞥し、彼の視線はわたしの目元に帰ってきた。

「! ……ずるいよ。さっきまでおじさんみたいだったのに、すぐ王子様に戻っちゃって……♡♡ 心臓保たないから、ほどほどにしてほしい……♡」

「……じゃあ、心臓保たないついでに……俺にしか見せないきみ、もう一回見せて?♡♡」

「え……っ♡」

 わたしが戸惑っているあいだに、彼はあれよあれよというまに脚を広げ、熱気のこもった場所に顔を埋めた。
 

******


「う……ぁああ……っ♡♡ ……はぁ、はぁ、はぁ……♡♡」

 すでにほぐされて蕩けたそこにもたらされる快感は1回目を優に上回っていて、声を抑えるなんて到底できなかった。
 
「…………息上がっちゃってる♡ かわいいけど、今日はここまでが限界かな。ゆっくり焦らずに……はきみとしてはあんまりみたいだけど、今日の一歩はなかなか大きかったと思うし、納得してもらえるんじゃないかな?」

 長い舌を根本から使って疲労も溜まっているだろうに、彼は淀みなく喋った。

「え……?」

 ――――のはいいのだけれど、ティッシュをまとめて取りながら掛けられた言葉は、わたしの理解が正しければ甘い時間の終わりを告げていた。
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