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DESTINY CHAIN
DESTINY CHAIN<CIV>
「ううん、しない。……わたしにはできない。わたしのことすごく大事にしてくれる君を、傷付けたりなんてできないよ。……したくないよ……」
涎を垂らしてしまう前に口を閉じた。代わりに零れたのは、本音と涙だった。
出そうで出ないくしゃみと格闘している最中のようなむず痒さが鼻を襲い、良好だった視界も阻まれ、そのうえ言葉まで堰き止めようとするように喉が締まったけれど、頼りなく揺れる声で素直な気持ちを届けた。
「そっか。俺のこと、大事にしてくれてありがとう♡ したくないことはしなくていいし、『これはちょっと嫌かも……』って思うことがあったら、いまみたいにすぐ教えてね」
彼はふわっと微笑んで、頬に伝った熱い水を舌で掬った。逃げられないように、手は肩に添えられていた。
なるほど、先ほどの発言は本心から出てきたものであったらしい。
本人にそれを証明するつもりがあったかどうかは……いまひとつわからないけれど。
「『ちょっと嫌』で断っていいの?」
「当たり前でしょ。全然ちょっとじゃないのに『ちょっとくらいならいいかな』で我慢しちゃうような優しいきみだから、そういうふうに言ったんだよ。きみの気持ちと俺の気持ちが真逆のほう向いてたら、そのときは絶対にきみの気持ちを優先させてね。俺はそれが一番嬉しいんだから」
「…………うん、ありがとう♡」
わたしにはもったいないと思ってしまうほど優しい言葉を掛けられ、自然と口付けていた。
――――けれど、本当は、そのわずか数秒すら惜しんで、あることを問いたくて仕方なかった。
「……したいことはしていい……?♡」
「もちろん♡ 制限なんてしないさ♡ 次はお待ちかねのきみの番だもんね♡♡ きみが俺にしたいと思ってたこと、気が済むまでしてくれていいよ?♡♡ 俺のカラダ、貸してあげるから♡♡ されて嫌なことも困ることもないから、好きにしちゃって♡♡ 妄想の俺とおんなじリアクションしてあげられる保証はないけど♡ ……貸してあげるもなにも、はじめからきみのものなんだけどね♡ 俺の全部は死ぬまできみのもの♡♡ ……だから、今日に限らず、いつでも好きにしてくれていいからね……♡♡」
期待に上擦った声で問いかけたら、ノータイムで全肯定された。
深い笑みを湛えた唇は、一筆書きをしたように流麗な曲線を描いていた。
(…………本当は『死ぬまで』じゃ嫌だけど、彼は死んだあとのことなんてきっと、最初から勘定に入れてないんだろうなぁ。わたしは死んでからも君のこと独り占めしていたいし、君にもわたしのこと死んだあとも独り占めしててほしいのに…………)
本来、諸手を挙げて喜ぶべき場面なのに、欲張りなわたしには不足もいいところの条件を提示され、ぎゅっと唇を結んだ。
皺のない唇の柔らかい感触は、すでに残されてはいなかった。
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