三千世界の鴉なんて殺さなくても、我々は朝を迎えられる

片喰 一歌

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Interlude

Interlude<XXXIV>

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「うん♡ わたしも君とずっと一緒にいたい……♡ ……のは同じだけど、いまは隣同士じゃないよね?」

 テーブルを挟んで対面する彼に問いかけた。

 考えあぐねて必死に捻り出したのが、こんな揚げ足取りめいた言葉だなんて。
 
 前半部分で終わらせておけばよかったものを、余計なひと言を付け足してしまって、せっかくのいい雰囲気が台無しだ。

「そうだね?」

 彼は一瞬だけ目を丸くしたけれど、すぐに穏やかな微笑を湛えた。いつもどおりの大人な対応だけれど、見えないところで好感度が徐々に下がっていてもおかしくはない。

(あぁ~……! もう、ばかばか!! せっかく『かわいい♡』って思ってもらえるチャンスだったのに!!)

「…………でもさ、こーんないい雰囲気のときに、そんな屁理屈言うかなぁ♡」

 スキンシップをしているときと同じくらい甘い声が鼓膜を震わせた。

「!」

 刹那、飛び上がった心臓が肋骨を突き破って飛び出してしまいそうなほどの緊張が駆け抜ける。

「うん。自分でもそう思う……。ごめんなさい……」
 
「いやいや♡ 謝ってほしいなんて思ってないよ♡♡ きみのそういうつんつんしちゃうところもかわいくて好きなんだってば♡♡ ……さっきのは、ほら。俺の言葉のチョイスも悪かったし。ね?♡」

「ううん! 君は全然悪くなくて……!」
 
「……そうだなぁ♡ 違ってたらごめんだけど、俺のお姫様は、なにかがあるんじゃない?♡♡ たとえば、そうだなぁ……♡ とか?♡♡」

 わたしの否定に被せるように言った彼は、顔の前で手を合わせ、そのまま軽く組んだ。
 
 そんなことを言われたら、が確信を帯びてしまうのは自明で――――。
 
「えぇっ!? の移動…………!? それって…………♡♡」

 組まれた指の一本に、自然と目が行ってしまう。まだそこは空席だ。いつかその指に、お揃いの指輪を嵌める日が来たらいいのに――――。

「そんな驚くこと?♡♡ でしょ♡♡」 

  首を傾げた彼の流し目に、心の奥底まで暴かれてしまいそう。
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