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Interlude
Interlude<LXV>
しおりを挟む「本当に遠慮してるわけじゃないみたいだね♡ よかったよかった♡♡」
(いつ見てもかわいい色……♡)
色を乗せるまでもなくほんのりピンクに発色している唇は、こうして見ているだけでは貪るようなキスをするふうにはまったく思えない。
「……『冗談じゃなくて、本当に襲おうとしてるよ』って言ったら、君は困る?」
女の子よりもかわいいからといって油断すると痛い目を見るとわかっているのに、無謀にもわたしは彼を乱してみたいと思ってしまった。
大きな瞳が快楽に歪んで潤むところが、閉じることのできなくなった唇から吐息と時折小さな声が漏れ出てしまうところが見てみたい。
願わくば、彼になにかされたわたしを見て興奮したというのではなく、わたしが彼に対して取ったなにがしかのアクションを通して、いまわたしが感じているような欲しくて欲しくてたまらない気持ちになってほしい。
「まさか♡♡ 俺はきみにされることだったら、なんでも喜んで受け入れるよ?♡♡」
「!」
彼はわたしの唇をなぞった親指で、自分の唇をなぞった。『同じように』と称してしまうのは少々躊躇われるような、先ほどよりもスローな仕草だった。
(間接キス…………♡♡ キスは何回もしてるけど、普通にキスするより恥ずかしいような……! そういえば、朝に体育館の裏で『軽いのからそうじゃないのまでたくさんしようね♡♡』って約束してくれてなかったっけ? ……しないのかな。わたしはしたいんだけどな、君といろんなキス……♡♡)
親指が去ったあとも、唇から視線を離せない。
「…………どうしたの?♡ 俺に見惚れちゃった?♡♡ 好きなだけ見ていいよ?♡♡ きみだけは永年拝観料無料だから♡」
物欲しそうな目が向けられていることにいち早く気付いた彼は、片目を瞑った。お手本のように美しいウインクだった。
「拝観料って! でも、確かに君って文化財感あるかも……?」
お茶目なひと言のおかげで、えっちな気分はどこかに消えた。
いちいち見つめるまでもない。彼はひと目見ただけで視線を奪われてしまうような完璧な美貌の持ち主だ。眺めることで料金が発生しても、普通に受け入れてしまいそう。
そんな彼をこれほどまでに間近に感じているにもかかわらず対価を要求されることがないなんて、なんて贅沢な立場なんだろう。
「いやいや! 冗談……というか語感のよさにつられて口を衝いちゃっただけなんだけど♡♡ 俺よりきみのほうがよっぽど国を挙げて守らないといけない存在でしょ♡♡」
くすくす笑う彼が口元を覆ったとき、目についたのは、きちんと揃えられた指の先――――。常に短く丸く整えられている爪だった。
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