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HONEYDEW RAIN
HONEYDEW RAIN<XXXIX>
しおりを挟む「お肌によくないのはわたしも知ってるよ? でも、洗ってる感じしないとほんとに綺麗になってるのかなって心配になっちゃうし、痒いし……」
わたしは結構あかすりやピーリングといった古い角質を取り除くタイプの美容法が好きで、逆に化粧水だ美容液だを塗る加算方式のケアは疎かになりがち……というよりもサボりがちだった。
彼に話したことはまだなかったような気もするが、いまの言い方でなんとなく伝わったのではないかと思うし、下手に言い訳して火に油を注ぎたくもない。そう考えて、正直に話してみたものの――――。
「痒いのは乾燥してるからじゃないの? きみ、毎日ちゃんと保湿してる?」
触れられなければいいなと思っていたのに耳に痛い指摘がなされ、鏡のなかの自分がぎくっとした。わたしは前からこんなに顔に出やすい性質だっただろうか。
「………………顔はしてる」
ちゃんとしていると答えかけてその答えを引っ込めたのは、あっさり見破られてしまうのが目に見えていたから。
「はいはい、OK。いまので大体わかった。身体はしてないってことだね?」
答えるまでに間が空いてしまったことや歯切れの悪さなどから露見してしまったのだろう。淡々と詰めてくる彼が若干怖い。
「冬はちゃんとしてるもん。ボディミルク塗って」
「うん。だからさ、『それを一年通してやろうね』って俺は言ってるんだよ。肌質とかの関係もあるし、使うものは季節で変えたほうがいいと思うけど、とりあえずは前シーズンの残りとか使えばいいから。ね? いまどんなの使ったらいいかわからないって言うなら、今度一緒に見に行くしさ」
親切心からの申し出だという可能性も十分ありえるけれど、彼はちゃっかりデートの約束をまたひとつ増やしてきた。
「これからは気を付けたい……」
笑いを堪えるのに必死で細部にまで意識が向かなかった。
「『気を付け“たい”』?」
彼は言葉尻を捉えてわざとらしく復唱してきた。いちいち細かいし少しめんどくさいと思ってしまうけれど、『好き』の前に欠点はあまりに無力だ。
「『気を付け“る”!』…………けど、君はそもそもどうしてボディタオル使わなくなったの? お…………元から使わない派だった?」
『お母さんが使わない人だった?』と尋ねる寸前で軌道修正したけれど、勘付かせてしまったかもしれない。
「いや、何年か前までは使ってたよ。君と同じような理由で。でも、買い替えのタイミングでなかなかよさそうなのに出会えなくて、手で洗ってみたら意外といけてさ。あとで調べたら、ボディタオルが肌によくないってことと肌の痒みが気になる原因に行き着いた……って感じ」
「なるほど……。『慣れるまで洗った感じしない』とかはなかった?」
「俺はわりと平気だったけど、そのへんは個人差ありそうだね。きみも試してみて、気にならなそうなら手洗いにシフトしたら?」
あまり譲歩感のない譲歩だ。彼はどうにかしてわたしを味方に引き入れようとしているらしい。
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