三千世界の鴉なんて殺さなくても、我々は朝を迎えられる

片喰 一歌

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アフター・アフター・レイン・トーク

アフター・アフター・レイン・トーク<Ⅹ>

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(…………ん? もしかして、いまのって『』……ってこと!?♡ 『するにしても一日の締め括りに』って、たぶんそういうことだよね?♡ ……考えすぎ?) 

 ぶわっと頬が熱くなって、両手で口元を隠した。

「きみのお顔を見ただけで、きみがなにを考えてるのか俺にも完璧にわかればいいのになぁ。言いにくいこともわかってあげたいし、言葉にはしてないかわいい本音だっていっぱい聞こえそうだし♡♡ でも、もしわかっちゃったとしても、全部きみの声で言われたがってただろうから、あんまり意味ないのかな?♡」

 彼はわたしの目元ではなく口元に視線を落としている。手そのものではなく、隠された口の形を想像しているのだろう。あるいは、転び出る些細なひと言を期待しているのかもしれない。
 
 与えるだけ与えて、お返しを要求することが極端に少ない彼が精一杯おねだりしてくれているようだと思った。

「君はなんでも聞けたら嬉しい?」

 しかし、先ほどの発言の意味を尋ねることはおろか、臆病でずるいわたしは『君が大好きでいつもいっぱいいっぱいだ』ということの端っこも伝えられない。

「うーん? ……『』の定義にもよるかなぁ。でも、きみが本当に思ってることだったら、なに言われても受け止めたいって考えてるよ。耳に痛いこととか『こういうとこは嫌』みたいなダメ出しでもね。あんまり強い言葉使われちゃうと心がつらくなってきちゃうかもしれないけど、きみはきついことなんて言わないだろうから、そういう心配はしなくてもよさそうだよね」

(買い被りじゃないかなぁ。……でも、確かに彼を悲しませるようなことは言いたくない……かも。現実はその逆で、必要最低限のことくらいしか伝えられてなくて、彼のこと悲しませてる気がするけど。とりあえずは今日一日、できるだけたくさん自分の気持ち伝えるのを目標に過ごしてみようかな?)
 
「きみとのお話が楽しくて話し込んじゃったけど、きみも俺に遠慮しないでぶつかる準備してくれてるみたいだし、ちょうどいいかな……♡ 今度こそ教えてくれる?♡ 玄関開けてすぐ、俺のことじーっと見つめてきたのはどうして?♡♡ 好き好きビーム発射してた?♡♡ いまの俺みたいに♡」

 小さな目標が固まったところで、彼から再度質問がなされた。

 その言葉どおり、愛おしいと思う気持ちがこもった視線はもちろんのこと、もはや隠し味とはいえないくらいふんだんにメープルシロップを入れたお手製のミルクティーより甘い声が、内側からわたしを満たしていった。
 
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