三千世界の鴉なんて殺さなくても、我々は朝を迎えられる

片喰 一歌

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アフター・アフター・レイン・トーク

アフター・アフター・レイン・トーク<XXI>

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「そうだなぁ……。したいけど、なにもんだよな。だけど♡ ……あ、そうだ♡♡ だったら、ああすればいいのか♡ 今日の俺、すごく冴えてるかも♡♡」

 肩をとんとん叩かれ、家の奥へ誘われた。
 
「君はいつも冴えてると思うけど……なにか思いついた?♡」

 先に歩き出した彼に並んで問いかける。勝手知ったる彼の家。廊下の先にあるのは、彼の私室の次にお邪魔する機会の多いキッチンだ。

「うん♡ きみにとってもすっごく楽しいことなんじゃないかと思うよ♡」

「楽しいこと?♡ いまからなにするの?♡」 

 こうしていると、彼氏彼女というより仲のいい兄と妹みたいだ。子ども扱いされているようでもやもやすることもないではないが、これはこれで居心地がよくて気に入っていたりする。

(親に甘えられなかった分も彼に甘えちゃってるのかなぁ。彼だって、わたしと同じで甘えたくても甘えられなかった人なのに……。もっと頼りがいのある人になれたら、甘えてきてもらえるかな?)

「…………俺さ、昨日いいもの買ったばっかりで♡♡ それ使って仲直りしない?♡ の食べ物♡♡」

 時として父や兄のような包容力を発揮する彼は、わたしの考えを読んでしまったかのように甘い提案をしてきた。

「仲直りなら、もう済んでない?」

「あぁ、確かに済んでるかも♡ じゃあ、俺たちがもっともっと仲良くなるためのゲームって名目ことにしよう♡♡ それならいい?♡」

「いまより仲良くなっちゃうの?♡」

「確かに俺たちはすでにめちゃくちゃ仲いいけど、俺はきみともっと仲良くなりたいと思ってるよ?♡♡」

 真意をはかりかねて盗み見た横顔はたいそう無邪気で、彼が朗らかに笑える世界を守りたいと思った。

「そうだね。わたしももっと君と仲良くなりたい♡ ……でも、って?」
 
♡♡ きみも好きなやつね♡ ルーズリーフ切らしてたのに、休み時間に購買行くの忘れちゃって。帰ってきて気付いてそこのコンビニ行ったら、限定の見つけちゃってさ♡♡ こんなのもう買うしかないと思わない?♡ 仕舞っておくと忘れちゃうと思って出しておいたんだ♡♡」

 彼はダイニングテーブルの上の薄い直方体の箱をわたしに差し出した。
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