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アフター・アフター・レイン・トーク
アフター・アフター・レイン・トーク<XXXII>
しおりを挟む(甘いのはわかるけど、逆に言うと甘いこと以外わからない……♡)
助けを求めてシャツを軽く引っ張ったら、腕の力が緩んで、彼の舌も引き上げていった。
「はぁ…………♡♡」
かわいらしい音を立てて唇が離れるとき、自分のものとは思えない甘いため息が漏れてしまった。
(なんか変な声出ちゃった……!)
酸素が十分に行き渡っていないのか頭がぼーっとする。ポッキーゲーム中は勝負に集中していたせいで、つい先ほどまではキスに夢中になっていたがために、呼吸が疎かになっていたみたいだ。
(彼は全然平気そうなのに、わたしだけはぁはぁ言ってて恥ずかしいな。……いましたみたいなキスの続き、せがんじゃってるみたい……♡ したいのは確かだけど、別にいますぐしたいわけじゃないのに。というか、キスでこんなにどきどきしちゃってるうちはしたくてもできないかも……!)
「ごめんね? きみがかわいすぎて、夢中になっちゃった♡♡ ほんとはもっと早く解放してあげるつもりだったんだけど……。息整えてるだけなのに、なんでこんなにかわいいんだろう♡♡」
彼は両頬を包み、おでこに頭をぐりぐり押し付けてくる。
(かわいいのは君のほうだと思うけどなぁ)
そこそこ身長差があるせいで、上を向かされていると首や顎がなかなかに疲れるけれど、彼にも相当な負担が掛かっているはずだ。
それなのに、そんなことは微塵も感じさせずに幸せそうにしている彼が愛おしい。見た目より大きい背中にそろりと腕を回した。
「…………いまのってどっちが勝ったかわかる?♡♡」
呼吸が落ち着いてきたところで、彼が尋ねてきた。
「ごめん、わからないかも……。というか、どっちも最後まで口離さなかった場合の勝ち負けの条件って設定してから始めたっけ……?」
少し考えて、先ほどから思っていたことを口にする。
「話し合いはしてたけど……決めないで始めちゃったかもしれないね? あれだけ勝ち負け気にしてたのに、なにやってるんだって感じだけど…………楽しかったから、あれはあれでいいんじゃないかな?♡ 『もっと仲良くなる』って目標は達成できたと思うし♡♡ 肝心のお味もあんまりわからなかったけど、あとで普通に食べればいいし♡」
彼は屈託なくからから笑った。
「…………あの、変なこと言ってたらごめんね? 勝ち負けの条件設定してないのに始めちゃったのって、たぶんふたりとも頭のなかで同じルール想定してたからじゃないかと思ったんだけど……。違う……かな?」
「ううん、きっとそうだと思う♡♡ 俺はなんとなく『どっちも最後まで食べ切れた場合は、多く食べたほうが勝ち』かなぁって考えてたよ。きみもきっと同じように考えてたから、開始直後から猛スピードで食べ進めてたんだよね?♡♡」
「そうそう」
「以心伝心だね♡♡ 条件確認できたからもう一回聞くけど、きみはさっきのゲーム、どっちが勝ったと思う?♡」
ゲームセットの瞬間まで記憶を巻き戻した。わたしが思うに、先ほどのポッキーゲームの勝者は――――。
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