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アフター・アフター・レイン・トーク
アフター・アフター・レイン・トーク<XXXVIII>
しおりを挟む「自分でも口閉じてるときと開けたときで全然印象変わるなって思うもん。きみのかわいいお口なんて、俺ならひと口でぱくっといけちゃうんだからね♡ ぼーっとしてたら食べちゃうよ?♡♡」
彼は、右よりも左の口端をわずかに高く吊り上げた。
(考えてることバレちゃってない……!?♡)
隠し立ては無用だし、口を覆っていてはいつまでもゲームを開始することができない。のろのろと手をどけた。
「あ、えぇっと…………♡♡ そう……だね?♡」
「その返事、ちょっと怪しいなぁ♡ きみ、俺の言ったことほんとにちゃんとわかってる?♡♡」
ずいっと近付けられた顔は、やっぱり少し意地悪だ。
「わかってるよ。いまのは……えっと、その……そう! 『今度は絶対負けないからね!』みたいな気合いの入った宣戦布告でしょ?」
「んー……。俺はちょっと違う意味で言ってたんだけど、宣戦布告でもあったしいっか♡ きみが相手でも勝ちを譲るつもりないのは本当だしね。逆にハンデになってようがひっくり返す気満々だから、こっちのことなんて気にしないで、さっきみたいに全力できてよ♡♡ 今度はスタートダッシュで遅れたりしないから、本気と本気でぶつかり合おう?♡」
「……わかった。そうする!」
澄んだ瞳の奥に見え隠れする闘志の炎はわたしにも移ってしまったようで、拳を握って力強く答えた。
「うん♡ でも、力んじゃっても全力出せないと思うから、適度にリラックスしてね?♡♡ …………あ、ベッドでの予行演習だと思ってもらったらいいかな?♡」
しかし、その様子を見た彼のひと言でその炎は一瞬にして消されてしまった。頬に感じる熱さは闘志の燃え殻ではなく、わたしの身体の奥からいまなお生まれている熱だ。
「!♡♡」
「ん?♡ どうしたの、まん丸おめめで固まっちゃって♡♡」
理由なんてひとつしかないと知っていて尋ねる彼は、やっぱり少しだけ意地悪だ。
「しょ…………、勝負の前に動揺させるのは、スポーツマンシップに反するんじゃないかな……!」
「ごめんね?♡ でも、俺は別にスポーツマンってほどスポーツ漬けの日々は送ってないし、ポッキーゲームも別にスポーツじゃないよ?♡ それに、いまのは……ベッドの上でも全力できみをかわいがるつもりだから、いまのうちに心の準備しておいてもらおうと思って予告しただけ♡♡ 動揺させようとしたわけじゃないよ?♡ 本当に♡」
このあとの展開を予想させながら屁理屈をこねるなんて、いつもながら器用だ。
「……じゃあ、早く終わらせて、もっとすごいことしよ……?♡」
囁くと、彼の耳がほんのり染まった。
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