493 / 551
恋人遊戯
恋人遊戯<270>
しおりを挟む「……そうだったね♡ 千尋くんは、告白の返事聞く前から、冷蔵庫も冷凍庫も私の好きなものだらけにしちゃう人だったね?♡♡ そこまで出来る人……ていうか、してくれる人? 少なくとも、今までの私の人生では他にいなかったよ」
揺らぐ瞳を隠すように目を閉じた彼女の脳内にも、きっと俺と同じ光景が――――いや、彼女が見たのは冷凍庫だったから、アイスをはじめ冷凍スイーツで溢れかえった冷凍庫内部の様子が再現されているんだろう。
(『そこ、先週までは肉と魚と買った日にあらかじめ切り分けた野菜やキノコなんかでいっぱいだったんだ』って言ったら、素直に信じて『ありがとう』ってはにかんでくれるんだろうな。……本当のことだけど)
今、我が家の冷凍庫のアイスコーナーの一角には不自然なスペースがある。そこに入っていたのは、先週シェアした桃のアイスだ。
恋のいいところだけをぎゅっと凝縮したみたいな甘い甘いそのアイスは本当に美味しかったし、彼女も気に入ってくれたみたいだったけど、付き合いが長くなっていけば、楽しいことばかりではなくなってくる。――でも、そんなのは最初から承知済みだ。今更狼狽えることではない。
「いや、別に俺はそんな…………。OK貰えなくても、お酒とかアイスなら日持ちするから、箱詰めして宅配便で送り付ければいいし、プリンとかの期限シビア系は食べて行ってもらうか、自分で食べたり、同じ階の甘党の友達のとこ持ってったりすればいいし、ぎゅうぎゅうに詰め込んでも捨てることにはならないだろうなって思えたから、行動に移せただけというか。……こんなの普通だろ。特に感激されるようなことじゃないよ」
「そこまで考えて、強行しちゃえる時点で、全然普通じゃないのに♡♡ ……本当に優しい人って、『優しい』って言われてものすごく不思議そうにしたり、信じられないみたいな顔するよね」
柔らかい、本当に柔らかい笑みに合わせて、彼女の髪が揺れている。
「…………その『優しい人』の中に俺も入ってる?」
「うん♡ ていうか、ほとんど名指し♡♡」
(俺、そんなにいい奴じゃないんだけどなあ…………。というか、昏睡レイプをハメ撮りして残してる時点で真っ先除外すべきだと思うんだけど、逆に言えば、そこまでしてても信じていいと思えるエビデンスを俺は示せてるって考えてもいいのかな)
「でも、意地悪なときもいっぱいあるし、千尋くんの性格を『優しい』って言い切るのは違和感があるの。『行動と発言の裏に揺るがない愛がある』というか……。やっぱりその愛も、男が女に向ける打算まじりの愛って感じじゃないの。真ん中にあるのは恋愛感情なんだとしても、その周りにあるのは人間的な愛(?)みたいな……? 恋人以外の人に向ける愛、あるでしょ? 付き合ってからもちゃんとそれ感じるの。今までは、付き合った途端に全部が『女としての好き』になっちゃう人ばっかりだったから……」
恋多き半生を振り返る彼女は、きっと目を伏せたまま、上下の唇の間を少し開けてため息の通り道を作っているんだろう。
ろくろを回す代わりなのかなんなのか知らないが、左の手が肉棒を上下に扱き始めたのは想定外だったけど。
0
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
不埒な社長と熱い一夜を過ごしたら、溺愛沼に堕とされました
加地アヤメ
恋愛
カフェの新規開発を担当する三十歳の真白。仕事は充実しているし、今更恋愛をするのもいろいろと面倒くさい。気付けばすっかり、おひとり様生活を満喫していた。そんなある日、仕事相手のイケメン社長・八子と脳が溶けるような濃密な一夜を経験してしまう。色恋に長けていそうな極上のモテ男とのあり得ない事態に、きっとワンナイトの遊びだろうとサクッと脳内消去するはずが……真摯な告白と容赦ないアプローチで大人の恋に強制参加!? 「俺が本気だってこと、まだ分からない?」不埒で一途なイケメン社長と、恋愛脳退化中の残念OLの蕩けるまじラブ!
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
隠れ御曹司の手加減なしの独占溺愛
冬野まゆ
恋愛
老舗ホテルのブライダル部門で、チーフとして働く二十七歳の香奈恵。ある日、仕事でピンチに陥った彼女は、一日だけ恋人のフリをするという条件で、有能な年上の部下・雅之に助けてもらう。ところが約束の日、香奈恵の前に現れたのは普段の冴えない彼とは似ても似つかない、甘く色気のある極上イケメン! 突如本性を露わにした彼は、なんと自分の両親の前で香奈恵にプロポーズした挙句、あれよあれよと結婚前提の恋人になってしまい――!? 「誰よりも大事にするから、俺と結婚してくれ」恋に不慣れな不器用OLと身分を隠したハイスペック御曹司の、問答無用な下克上ラブ!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる