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第一の試練
第一の試練<10>
しおりを挟む「『優しくしよう』とか『カラダ目当てって思われたらやだから、セーブしとこう』とか考えてたのが間違いだったな…………。俺って、いっつもそうなんだよ。考えすぎたり気を遣いすぎて空回るの。肝心なところで。ここまで来るのに――初恋叶えるだけなのに、えらく時間掛かったのだってそう。笑えるよなあ、本当にさあ…………」
フォローを誘うための自虐なんてダサいだけなのに、言葉が、感情が溢れて止まらない。
普段から言いたいことを我慢してると、こうやって爆発するんだな。同じことを繰り返さない自信はないけど、ひとつ賢くなったのは確かだ。
「……『初恋は叶わない』って聞くし、時間掛かっても叶えてるだけですごいと思うけど……」
「励ましてくれてありがとう♡♡ 紗世ちゃんって、ほんっっとにお人好しだよね♡♡ 天使のときと悪魔のときの落差ヤバすぎなとこも好きだよ~♡ …………あ。悪魔っていっても性格悪いとかじゃなくて、タロットの悪魔ね?♡♡ 伝わる?♡」
危機的状況だというのに寄り添ったコメントをする彼女がおかしくて、邪悪な笑みが止まらない。――悪魔はどう考えても俺のほうだろ。表情から所業から。
「『性格悪い』ってより『性欲強い』って感じ……?」
「返し上手いな♡♡ …………というか、知ってるし、わかってもいるんだ?♡♡ ……そういう事だよ♡♡ 紗世は性欲強すぎて一人の男じゃ足りなかったから、色んな奴と同時に付き合ってたんだもんな? そんなコが便宜上は俺一筋になってくれたんだったら、俺が一人で紗世のこと満足させてあげれなきゃダメだよな…………。それが出来なきゃ、彼氏失格だよな?」
「私、千尋くんとなら、外で遊んでるときもお酒飲んでるときも楽しいよ? ……千尋くんとのエッチは気持ちいいし好きだけど、なくても意外と大丈夫なんじゃないかって思うくらいには、千尋くんと一緒にいるだけで満たされるよ? ……満足出来てるよ? 千尋くんが足りないなら、今日も足りるまで付き合おうと思ってるけど……。でも、絶対なんか勘違いしてるから、先に私の話聞いて?」
「話なら、シながらでも出来るだろ?♡♡ ちゃんと聞いてるからさ、俺は好きにしていいよな?♡♡ 昨日、紗世ちゃんが何回もおねだりしてきたけど、ひとつだけ聞けなかったこと――も叶えてあげれるし♡♡」
「したかったけど、してないこと? …………そんなのあった?」
会話の最中も俺の下から這い出そうともぞもぞしていた彼女が、ぴたりと動きを止めた。
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