yours-夢の罪過-

第一の試練

第一の試練＜32＞

（なんて答えればいいんだ…………？　茶化すのはNGだし、エロい方向に持ってくのも論外だろ。……というか、無理だな。出来ない出来ない。俺自身が俺に対してそれを許容出来ない。俺の考えを、紗世ちゃんが少しでも楽になれるように話すのが得策か……？）
　
　固まった髪の束をほぐすように、指を通していく。

「まあ、それを期待されてるのは確かだろうけど、応えてやる義理なんてないだろ。どこにも。……紗世ちゃんは、周りの人に歓迎されるかされないかで彼氏選んできた？」

「そんなことない……けど……」

　結論を先に告げると、彼女はこわごわと顔を上げて首を振った。そこはかとなく迷いを残した仕草が悲しい。

「…………全員、本気で好きだったんだろ。彼氏とは別枠の奴も含めて」

「好きだった……」

「うん、それでいいんだよ。自分の基準でいいんだって。…………紗世ちゃんは、俺を選んだことを後悔してる？」

「してないよ。全然してない。……後悔してるとしたら、もっと早く選んでたらよかったってことだけ……」

「それ聞けたら俺は十分。……というか、十分早いよ。俺たち、まだ十分若いじゃん♡♡ 人生100年時代だぜ？♡ 全然遅くないって♡♡」

「………………。エッチなことも出来るし？♡♡」

「それもあるし、無茶がきくでしょ♡♡ たぶん、紗世ちゃんが俺に振り向いてくれるのがあと20年あととかだったら、朝からお出掛けして1日中遊び尽くすのを2日連続とか、まあ難しかったと思うんだよね。……このへんも個人差あるだろうし、俺たちなら20年後も同じ感じなんじゃないかって気もするけど」

　答えが返ってくるまでに間があったのが引っ掛かるが、言葉を選んでいただけだろう。

「そうだね♡ ……私、千尋くんとずっとこうしてたいなあ……♡♡」

　彼女は首の後ろをさわさわしながら、身体を寄せてきた。すでにこれ以上密着出来ないだろうと思うほど密着していたにもかかわらず。
　
「俺も♡♡ ……だったら、問題なんてないよね。紗世ちゃんの理想と俺の理想、完全に一致してるもん。その通りに生きたらいいんだよ、これからも。今の俺たちみたいに、快楽と愛情表現だけのために抱き合って――――。そういう事が出来なくなっても、ずっと2人で面白おかしく生きてく人生、最高じゃない？　……そういうのじゃん。幸せって。この国ではもう、覚えてる人のが少ないと思うけど――――、無駄って最高の贅沢だしさ？♡♡ 若さだってなんだって、好きなように使ったらいいんだよ。俺ら以外の奴らの言いなりになってやる必要ないじゃん。紗世ちゃんの人生は紗世ちゃんのもので、俺の人生は俺のものなんだし。…………ほら、俺の無駄撃ちに付き合って？♡♡」

　離れがたい気持ちを押して、綺麗にくびれた腰を抱えた。