yours-夢の罪過-

片喰 一歌

文字の大きさ
543 / 551
第一の試練

第一の試練<41>

しおりを挟む

「そこ、そんなに気になる?♡ ……というか、気にする?♡♡」

 おそらく無意識であろう動きのサポートをするのは簡単だったが、もどかしそうな彼女を見ていたかったなんていう利己的な理由で、あと少しだけしたいようにさせておくことにした。

「…………変かなあ、やっぱり」

「いや、少し意外に思っただけだよ。変ではないけど、そういうの気にするのって圧倒的に男のほうが多い気がするから、多少変わってはいるのかもね?」

「しつこい……よね。ご――――」

「謝ろうとした?♡ 自分が間違ってたと思ったときに速攻で謝れるのはすごいことだけど、俺が答える前に謝るとか、そういうのはなしで行こう?♡ 紗世ちゃんが想像してる俺の気持ちと、本当の俺の気持ち。おんなじとは限らないじゃん」

「そ……っか……。そうだよね。謝らなきゃいけないって確定してないときに謝っちゃうのは、思い込みだし、押し付け…………だよね」

「わかってくれたならいいんだ。そんなに落ち込まないで? 俺は別に、前に同じ質問されてようがされてなかろうが構わないよ?♡♡ 何回同じこと訊かれても、ちゃんとその都度答えるし」

「…………ほんと? 『何回も同じ質問するなよ』って言わない…………?」

「言わないよ。質問って、『あなたに興味があります♡♡』って意思表示みたいなもんだろ。興味持ってくれて嬉しいよ、俺の性体験の詳細♡♡」

「教えてくれないの?♡」

「今から言うからせっつくなって♡」

 待ちきれず誘惑に勤しむ細い腰を抱え、生まれつき後ろに倒れ気味な耳に手を添えた。

「え…………っ?♡♡」

 容易く向きを変えた薄い耳は、頑固なようでいて素直な彼女の性格を反映しているようだと思った。

「中出しどころか、生挿れから未経験♡♡ 普通に考えて、相手の人生狂わせる可能性あること、そんな簡単に出来ないだろ。俺が特別真面目なんじゃないよ。みんなが異常なの。気軽にしすぎ、軽く考えすぎなんだって。……言っとくけど、この件に関してだけは、紗世ちゃんのしてきたことマジで理解出来ないし、フォローしたいとも思えないからね。相手が常に一人だけなら、まだ理解出来たかもしれないけど、そうじゃなかったわけだし。……女の子の気持ちは女の子にしかわかんないだろうし、紗世ちゃんの気持ちは紗世ちゃんにしかわかんないから、そこは否定しないけど…………。行動にまで移す必要があったかどうかは、今からでもよく考えてほしいなと思ってるよ。――――というか、それ以前の問題じゃないの? 『そういうのよくないよ』って注意してきた男は? 誰もいなかったわけ?」

「いないと思う。みんな喜んでたよ?」

「……喜んでもらえたら、それでいいのかよ?」

「うん♡ 私も好きでしてることだし、自分が好きでしてることで相手にも喜んでもらえたら、嬉しいよね?♡」

「それはそうだろうけど」

「千尋くんにも『中に出していいよ♡♡』って言ってきた女の子、いたんじゃないの?」

(…………紗世ちゃんとか紗世ちゃんとか、あとは紗世ちゃんとかね…………)

 美容系アカウントの女の子たちの間で大流行していた『真実を映す鏡』とやらを突き付けてやりたい気持ちを堪えるためには、特大のため息をつく必要があった。

(俺が伝えたいこと、なんにも届いてなくないか? 『頑固なようで素直』じゃなくて、『素直そうで頑固』だったとは……)

 前日のセットの名残を残した前髪は、人体から出てくるにしてはそこそこの強風を受けてもほとんど動かなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

不埒な社長と熱い一夜を過ごしたら、溺愛沼に堕とされました

加地アヤメ
恋愛
カフェの新規開発を担当する三十歳の真白。仕事は充実しているし、今更恋愛をするのもいろいろと面倒くさい。気付けばすっかり、おひとり様生活を満喫していた。そんなある日、仕事相手のイケメン社長・八子と脳が溶けるような濃密な一夜を経験してしまう。色恋に長けていそうな極上のモテ男とのあり得ない事態に、きっとワンナイトの遊びだろうとサクッと脳内消去するはずが……真摯な告白と容赦ないアプローチで大人の恋に強制参加!? 「俺が本気だってこと、まだ分からない?」不埒で一途なイケメン社長と、恋愛脳退化中の残念OLの蕩けるまじラブ!

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

隠れ御曹司の手加減なしの独占溺愛

冬野まゆ
恋愛
老舗ホテルのブライダル部門で、チーフとして働く二十七歳の香奈恵。ある日、仕事でピンチに陥った彼女は、一日だけ恋人のフリをするという条件で、有能な年上の部下・雅之に助けてもらう。ところが約束の日、香奈恵の前に現れたのは普段の冴えない彼とは似ても似つかない、甘く色気のある極上イケメン! 突如本性を露わにした彼は、なんと自分の両親の前で香奈恵にプロポーズした挙句、あれよあれよと結婚前提の恋人になってしまい――!? 「誰よりも大事にするから、俺と結婚してくれ」恋に不慣れな不器用OLと身分を隠したハイスペック御曹司の、問答無用な下克上ラブ!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

ハイスペック上司からのドSな溺愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペック上司からのドSな溺愛

処理中です...