yours-夢の罪過-

片喰 一歌

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第二の試練

第二の試練<22>


「まあ、紗世ちゃんに食べてもらうって前提なら、下手なものは作れないね。結果的に毎食凝ったもの出すことになる……とかはありそう♡♡ 料理してるとこ見てくれてるなら、なおさら張り切っちゃうかも♡」

 腕まくりでもしてみせようかと思った(男の腕の筋フェチの女の子って多いでしょ?)けど、どちらの袖を捲るにしても彼女を振り払うことになる。

 ――ので、右腕で軽くガッツポーズと力こぶを作る中間くらいのポーズをした。

「キッチン入られるの嫌じゃないの? ……お料理好きな人って、キッチンに人入れるの嫌がるイメージだったんだけど。鏑木くんは違うんだね……?」

 彼女は最大限言葉を選びながらも、正面から疑問をぶつけてきた。

(…………料理したのか、俺以外の奴と? ……いやいや、今のあれだろ。昔の謎CMに引っ張られすぎだろ。ミーム汚染ヤバすぎだよ、俺の脳内。陰キャ乙すぎる。日陰者でどうもすみませんね。……って誰に向かって言ってんだか。まあ、ヤバいのは拗らせた中身と独り言が鳴り止まない体質だけじゃないけどな。恋人と一緒に料理するくらい、ありふれたイベントだろ。なんにも特別なことじゃないよ。……俺みたいな恋愛初心者には特別ですけどね? そんな日常イベントにすら嫉妬するとか、見苦しいにも程があるぞ? そんなことより、彼女に食べてほしい料理を考えるほうがよっぽど建設的だよ。……なんだろうなあ。鉄鍋振ってるとこ見せたらおめめハートにして『かっこいい♡♡』って言ってくれたりしないかなあ。いやいや、俺の私利私欲だって、それは。中華は特に四川とか自信あるけど、紗世ちゃんの食べたいもの食べさせてあげれなきゃ本末転倒いみないじゃん)

 上目遣いの瞳も不安に揺らいでいる。――自分の質問の仕方に不備がなかったか気にしてるのか、キッチン立入禁止令が敷かれたり入室制限を設けられたりするのを恐れてるせいかな。

「嫌だったら、最初から見ててほしいなんて言わないって♡♡ うちのキッチンは、俺の他に一人ギャラリーが入った程度で動線変更しなきゃならなくなるほど狭くもないし♡♡ 刃物とか火とかに近付きすぎないように気を付けてくれてれば、好きに見ててもらって構わないよ。…………ああ、試食もお願いしよっかな?」

「鏑木くん?♡♡ 私、ちっちゃい子くらい注意力ないと思われてない……?♡ 包丁と火の扱いくらいならどうってことないし、簡単な作業なら手伝えるから使ってくれていいのに♡」

 彼女は目と眉の間を狭くして、頬をぷくっと膨らませた。

 網の上で膨らんだお餅みたいなその頬に吸い付いて、涎でべたべたにしたら、君はどんな反応を見せてくれるんだろう。
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